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疑問と望み

「とりあえず、五奇(いつき)。てめぇそれ解除しろ」


 鬼神(おにがみ)に声をかけられ、五奇はようやく円盾(えんしゅん)を解除した。途端に疲れがどっと出て、思わず床に膝をつく。


「うっ……」


「五奇ちゃん!?」


 慌てて等依(とうい)が五奇の身体を支えた。


「ありがとうございます、等依先輩。俺のことよりも……空飛(あきひ)君が!」


 空飛もとい黒曜(こくよう)とサーシャに視線を移せば、二人はエントランスのガラス窓を破壊して、中庭で戦っていた。


「割って入ろうにも、ヒートアップしていて入れねぇ……」


 鬼神が悔しそうに言えば等依が静かに答える。


「いや……あれは仕方ないっスよ。互いに分割された魂が引かれ合ってるって感じじゃん? その間に入っていーもんなんスかね?」


 そもそも論に、五奇もなんと返していいのかわからない。三人はとりあえず、見守ることしかできなかった。そんな中、鬼神が小さく呟いた。


「てかよ、今思ったんだが……。退魔術式(たいまじゅつしき)の大元って陰陽道だよな?」


「んん? 鬼神ちゃん、話が飛んでてわっかーんねぇっス」


 等依に訊き返され、鬼神が再度ゆっくりと口を開いた。


「陰陽道って確かよぉ(いん)(よう)でバランス取るとかなんとかなかったか? ……それに当てはめるとよ、黒曜って男と女とか……その、要は陰と陽で魂分割したとかねーか? ならよ……黒曜は男だったのか女だったのか? そもそも性別あったのか? って思ったんだよ」


「……確かにー! 妖魔って性別あるタイプとないタイプいるっスわー」


 二人の言葉に五奇が困惑したように訊く。


「えっ? じゃあ、空飛君は男だけどつまり……?」


「……いずれにせよ、片割れだのなんなの言うってことは、そういう可能性もあるんじゃねーの? なら……」


 一端そこで言葉を切り、再度呟くように鬼神が続ける。


「あのサーシャとか言うヤツ、男と女どっちなんだろうな?」


 ****


「あはははは!」


(わし)の怒りを受けよ!」


 黒い(つた)同士が激しくぶつかり合う。その衝撃で中庭の草木は揺れ、突風が吹く。


「あれあれあれ? どうしたのかな、()? こんなの痛くもかゆくもないよ?」


「これが儂の本気と思うてか!」


 そう口では言うものの空飛であり、黒曜である彼は内心で焦っていた。


(おかしい! 全盛期の力には及ばぬ! なんだというのだ?)


 サーシャを憎らしげに睨みつけながら、彼はようやくある可能性に辿り着いた。


(そうか! "負の感情"と"力"があの小僧めにいっておるのか!)


 "正の感情"と"知識"が空飛に、"負の感情"と"力"がサーシャに。力が分割されたことで、制御も本来の力も出せない……そのことに思い至った"黒曜"は、必死で知識で対抗しようとする。


「どうしたのさ! さぁ、どんどん来なよ!」


 なおも攻撃の手を緩めないサーシャを見て、ある事を試すことにした。


「ん? 本当にどうしたのさ? 蔦を動かさなくなって……」


「小僧に問いたい。望みはなんだ?」


 そう訊かれたサーシャは、不思議そうな顔で答える。


「……どういう意味さ?」


 すると、"彼"はハッキリと告げる。


「言葉の通りだ。何が欲しい? 言ってみろ。可能な限り、叶えてやるぞ?」


 まるで宣言するかのように。

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