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円盾

 五奇(いつき)が入院している病院は、父もいる専門病院の別棟だ。こちらはトクタイ隊員達専属であり、七階建てだ。


「とりあえず……武器を!」


 現状だと階段の方が速い。五奇は、非常階段目指して走り出した。その間に、騒ぎを聞きつけたトクタイ隊員達とすれ違う。

 他の入院患者を避難させる隊員や、護衛に守る隊員、そして、少年と戦闘に入る隊員達。

 五奇は心強さを感じながら、非常階段にたどり着く。今いるのは三階で、五奇が目指しているのは地下一階だ。


(……やれることをやるだけだ!)


 ****


「へぇ、僕と遊んでくれるんだ?」


 少年は虚ろな目で、武器を構えたトクタイ隊員達と睨み合う。


「じゃあ、愉しませておくれよ?」


 ****


「はぁ……はぁ……」


 息を切らしながらなんとか地下一階にたどり着くと、武器保管庫へと向かう。IDを通せば、中に入れた。


(あれ? そういえば、ここの管理者はどこに?)


 そんな疑問が一瞬頭をよぎったが、今はそれどころではないと判断し保管されている自分の武器、参弥(さんび)輪音(りんね)を急いで取り出す。


 ここは、入院しているトクタイ隊員の武器を管理している専用の保管庫なのだ。


「よし、行く……いたたたっ」


 李殺道(りつーうぇい)にやられた傷が痛む。だが、構ってなどいられない。五奇は地下から出て、一階のエントランスまで来たところで思わず絶句した。


「えっ……?」


 そこには、血で染まった少年がソファに座っていた。


「はっ? え……? 隊員達はどうしたんだよ…?」


 思わず訊けば、少年は手に着いた血を舐めとりながら答える。


「あー、殺したよ? うざかったし……それに、キミより弱かったからさ?」


 あまりにもあっさりと、それも、命を奪ったことをなんとも思っていない言葉に五奇は激怒した。


「命をなんだと思っているんだ!? 赦せない!」


「へぇ……? じゃあさ、教えておくれよ? 命ってヤツの価値をさぁ!!」


 黒い(つた)を足元から出し、羽根衣(はねごろも)が翼のように広がる。その姿はまさに、巨大な(からす)のようだった。


「じゃあ行くよ? 常夜の宴(とこよのうたげ)。さぁ、踊り死になよ!」


 少年の全身から黒い蔦が、四方八方から飛んでくる。五奇はそれを参弥のワイヤーブレードと、輪音の銃部分で破壊しながら前進して行く。その様子を見た少年は更に愉しそうに口元を歪ませる。


「いいなぁ……。キミに最初に会いに来て正解だったよ。()もキミが死んだら認識してくれるだろうね……この僕をさぁ!」


 更に勢いを増す攻撃に、五奇は技を出す余裕がない。更には李殺道から受けた怪我が悪化してきた。


「ぐっ! くっそ!」


(俺はこんなところで、死んでいる場合じゃないんだ! なにか、なにかないのか!?)


 その瞬間、灰児(はいじ)の言葉が脳裏をよぎった。


『なぜ"土"ではなく"金"なんだ?』


 五奇は、ルッツに一度だけ見せてもらった技を繰り出した。その時は、ルッツから「覚えなくていい」と言われたのだがなにかの役に立つのではないかと思い、覚えていたのだ。


「"封呪文(ふうじゅもん)"()()()()! 土の退魔術式つちのたいまじゅつしき肆銘(しめい)円盾(えんしゅん)!」

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