表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第一章 初めての任務編
45/113

もう一人の自分

「種族の違い……ですか?」


 五奇(いつき)がそう訊けば、等依(とうい)は深く頷いた。


「そそ。鬼神(おにがみ)ちゃんの鬼、百戦獄鬼(ひゃくせんごくき)は、鬼神ちゃんと精神で繋がっている……うーんと、詰まるとこ、本当にもう一人の鬼神ちゃんみたいな?」

 

 そこで言葉を切ると、等依が少し声のトーンを落として続ける。


「んで、オレちゃんの鬼、火雀応鬼(かがらのおうき)氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)は、対等な契約の元で繋がりを持った……そーね、イメージ的に精霊とかに近いんかな?」


「えっと、つまり……。鬼神さんの鬼は鏡に映った自分みたいなもの?」


 五奇がそう解釈すれば、等依は再び頷き、


「そーゆーこと。ってか、急にどーしたん?」


 怪訝そうに訊かれ、五奇は思わず視線を逸らす。まさか、鬼神に膝枕されたことを思い出したついで……とは言えるわけもなく、五奇はどう答えたものかと悩んだとき扉がノックされた。


「今入ってもよろしいでございましょうか……? あ、僕でございます。夜明空飛(よあけあきひ)でございます。はい」


 五奇と等依は顔を見合わせると、互いに深く追求せずに空飛に同時に声をかけた。

 室内に入って来た空飛の顔色は優れない。「本当にどうした?」と二人が心配した瞬間、空飛が珍しく声を張り上げた。


「僕! ドッペルゲンガーを見たかもしれないのでございます!!」


 その言葉に五奇と等依は困惑して、思わず固まってしまった。


「えっ……?」


「空飛ちゃーん? ゲームのし過ぎっしょ?」


 二人がそう言えば、空飛は大きく首を横に振り、


「違うのでございます! と、とにかく話を聞いて下さいませ!」


 そう懇願されてしまえば、二人は受け入れるしかない。仕方なく、空飛の話を聞くことにした。


 ****


 それは昨夜のこと。

 空飛が自室で眠っていた時、それは現れた。


『ねぇ……()? そろそろ……出会おうよ?』


 空飛が目を開けると、そこには白い髪の自分がいた――。


 ****


「ということなのでございます。はい」


 空飛の話が終わると、五奇と等依は困惑の色を濃くする。正直、話が飛躍しすぎていたからだ。


「あー……空飛君? 大げさなんじゃないかな?」


「そーっスよ。考えすぎっしょ~」


 二人に言われても、空飛は主張を変えない。


「いいえ! いいえ! あれは絶対、ドッペルゲンガーでございますよ! 僕は、し、死んでしまうのでございましょうか!?」


 とうとうそんなことまで言い出す空飛を、二人でなだめると等依が、


「そいじゃー、空飛ちゃん今夜はオレちゃんとこでお泊りしちゃう~なぁーんて?」


 そう冗談めかして訊けば、空飛が顔を明るくする。


「ありがとうございます! そうさせていただきたくぞんじます! はい!」


「マジか」という等依の小声が聞こえなかったのか、空飛はそうと決まればと等依の背中を押して行く。


「それでは五奇さん、お大事になさってくださいませ! 失礼いたします!」


 慌ただしく病室を後にした二人に向けて、五奇は手を振りながら、


(もう一人の自分、か。鬼神さんみたいな感じでもないんだろうし、考えすぎだよなぁ)


 深く考えるのをやめ、ベッドに横になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ