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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第一章 初めての任務編
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お兄さん

「ん~着替えはこんな感じっスかね~?」


 五奇(いつき)の部屋で適当に着替えを用意した等依(とうい)は、詰め込んだ荷物を持って立ち上がろう――として、少しよろけてしまった。


「と~? ダメージきてんな……」


 一人そう言ったつもりが、聞こえていたらしい。省エネモードである(すずめ)の姿をした火雀応鬼(かがらのおうき)がすり寄ってきた。なお氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)は完全に休眠モードに入っている。


火雀(かがら)~。相方やられて辛いっスよねー」


 そう声をかければ、火雀は等依の肩に乗る。その姿に微笑むと、等依は気を取り直して荷物を持ち五奇の部屋を後にした。


 ****


 家から五奇が入院している病院までは距離がある上、荷物のことも考えて等依は車を出すことにした。車庫に行くと、そこである人物に等依は声をかけられた。


「やぁ、等依君?」


 ゆっくりと声をした方へ視線を向けると、等依はため息を吐きながら声の主に対して尋ねる。


「そーゆーお兄さんは、五奇ちゃんのおししょーさんっスね? いや、それとも……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 等依がルッツにわざとらしくそう訊けば、彼は柔和な笑みを崩さずに答える。


「そう睨むことはないだろうに。お兄さんなんて呼んでくれるんだったら、尚更じゃないのかい?」


「べっつにー? まさかアンタが五奇ちゃんの師匠とは思わなかったっス。それも、なんで"ルッツ"なんスか?」


「だって、音の響きがかっこいいだろう?」


 "ルッツ"の答えに等依は呆れた様子でしばらく閉口した後、ため息交じりに口を開いた。


「……はぁ、まーいっスけど。かんけーねぇし……?」


「そう言わないでおくれよ。君には君の道があると前にも言っただろう?」


「つーわれてもねぇ。()()()()()に言われても説得力皆無っしょ」


 そんなやり取りをしながらも等依は荷物をさっさと入れ、車を出す準備を整える。


「じゃ、まぁーそーゆーことで。お兄さん、いやルッツ先生まったねーん」


 わざとらしくそう言うと、等依は車を今度こそ出した。その様子を焦るでもなく、ただ見送るとルッツは、


「……あの日君に言ったことは本当さ、等依君。君には君の道がある。蒼主院(そうじゅいん)に縛られることなんてないんだよ……」


 そう届かぬ言葉を口にするのだった。


 ****


「さってとー五奇ちゃん、ヤッホー?」


「等依先輩! 待ってたんですよ!」


 病室に入るなり、五奇に声をかけられ等依は思わず目を丸くした。


「……にゃーに?」


 訊き返せば、五奇は等依に真剣な眼差しを向け、食い気味に訊く。


「等依先輩の鬼と鬼神さんの鬼、なんの違いがあるんですか!?」


 問われた等依は思わず頬をかくと、考えながら答える。


「んん~? 違いねぇ……そうっスね……。例えるなら、犬と猫くらいみたいな?」


 あまりピンと来ない例えに五奇は困惑し、それに気づいた等依は言葉を変える。


「えーっと、つまり、人間と共生するんは変わらないけど、種族が違うってことっスよ」

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