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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第一章 初めての任務編
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落ちた二人と

「おい、おい! 大丈夫かよ! なぁ……おいってば!」


 誰かの泣きそうな声で、五奇(いつき)は目を覚ました。


「うっ……ここは?」


「……洞窟の底だ……。落ちた穴は瓦礫がやばくて近寄れねぇ……。チャラ男が寄こしたコイツのおかげで、五体満足だけどな?」


 言われてようやく、五奇が鈍い頭で周囲を見渡せば氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)が二人を見守るように立っており、鬼神(おにがみ)は五奇を膝枕していた。


「ってえええええ!?」


 そのことに気づいて、慌てて起き上がろうとする五奇に、鬼神が大声をあげる。


「ばっ! 動くんじゃねぇよ! 怪我がなくても、その……いいから動くな!」


 震えた声で言う鬼神の様子に、五奇は首を傾げながら訊く。


「あの……? なんでその、辛そうなんだ?」


「俺様のせいだろうが!」


 彼女は目を真っ赤にさせながら、さらに声を張り上げた。


「こうなったのは俺様が油断したからだろうが! だから……だから……」


 とうとう顔を覆ってしまう彼女に、五奇は目を見開いて驚く。


(鬼神さん……そんな風に思うことないのに)


そう思い、五奇が口を開こうとした瞬間だった。氷鶫(ひとう)が防御体勢をとり、何者かからの攻撃を防いだ。


 驚く二人に、その人物が武器を揺らしながら近寄ってくる。そこにいたのは、


「なっ……お前は! 『爆炎の妖魔』の時に現れた男!?」


 あの青年だった。


 ****


 その頃。

 空いた穴を避けるようにしながら、等依(とうい)空飛(あきひ)は無知性妖魔を倒していた。

 先陣を切る空飛を、等依の操る火雀応鬼(かがらのおうき)を主軸にした簡易式神の連携でサポートをしていた。


「あの……五奇さんと鬼神さんは大丈夫でございましょうか? っと、あひゃあ!」


 無知性妖魔の不意打ちをなんとかかわしつつ、空飛が等依に訊けば、彼は不安げな声で答えた。


「んー? 大丈夫だと思いたいんスけどねー? なぁんか、いるみたいっスね……。にゃんで、空飛ちゃん、無知性ちゃん達、倒しつつ合流するっしょ?」


「いる? とはなんのことでございましょうか?」


 等依の式神、火雀応鬼と氷鶫轟鬼は二体で一つの存在だ。故に、()()()()()()()()()()()()のだ。


「とにかく! 二人と氷鶫がピンチっぽーなんで、行くっスよ!」


「ピンチ! それはよろしくないでございますね! 承知いたしました! 行きましょう!」


 ようやく納得してくれた空飛とともに、等依は二人と一体と合流できないかルートを急いで模索するのだった。


 ****


「お前達こそなんだ? 妖魔と戦う者でありながら、妖魔を庇うのか?」


 氷鶫を襲った青年にそう訊かれ、五奇も氷鶫のおかげでそこまでではないが、ダメージを負った身体を無理やり起こしながら答えた。


「妖魔だからってだけで、悪と決めつけるお前こそ! どうなんだよ!?」


 氷鶫を庇って立つ五奇の前で、青年は感情の読めない顔と敵意の視線を向けてくる。件の氷鶫は今、青年に吹き飛ばされて壁に激突、省エネモードである(つぐみ)の姿になっていた。


「妖魔は滅する。邪魔するならお前も滅する。死ね」


 そう言うと青年は、バタフライソードを構え直し、殺気を放つ。その圧に足がすくみそうになりながらも、五奇は負けじと言い返す。


「俺は死ぬつもりはない! 氷鶫もやらせない! 守ってみせるさ!」

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