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入隊試験

五奇(いつき)の意識がはっきりしてきて、辺りを見渡せば、木々が生い茂る森の中だった。暗闇の中、鳥の羽ばたく音がどこからともなく聞こえてくる。ライトを取り出して照らせば、小動物が逃げたのがわかった。


「ここは? いや、そうか。ここが試験会場か!」


 ようやく状況を理解した五奇(いつき)参弥(さんび)輪音(りんね)を構え、警戒しながら森の中を進みだした。

 しばらくして、輪音(りんね)()に付いている鈴が二回鳴った。この鈴は、妖魔(ようま)を探知できるのだ。


「二回ってことは、二体だな!」


 この輪音(りんね)の鈴は、鳴った回数が探知(たんち)した妖魔(ようま)の数なのだ。

 五奇(いつき)はまず物理特化の参弥(さんび)を構え直し、戦闘体勢に入る。

 前方から一気に二体の、角の生えた人型の妖魔(ようま)が飛び上がって襲ってくるのが見えた。


参弥(さんび)セット! いけ!」


 トリガーを押し、ブレード部分を射出(しゃしゅつ)する。ブレードは()(えが)き、二体の妖魔(ようま)身体(からだ)を斬りつけた。


「ぐぁあああ!?」


「いてぇじゃねぇか! クソガキぃぃ!」


 妖魔(ようま)身体(からだ)は基本的に頑丈だが、祓力(ふつりょく)を乗せた(やいば)でなら、かなりのダメージを与えることができる。実際、二体の片方の左足ともう片方の右腕は綺麗に斬れていた。今度は輪音(りんね)を二体の妖魔(ようま)に向けた。


「"封呪紋(ふうじゅもん)"解放! (きん)術式(じゅつしき)! 壱銘(いめい)斬葬(ざんそう)!」


 五奇(いつき)が唱えれば、輪音(りんね)の刀身が(にび)色から白に変わり、祓力(ふつりょく)を込めた光の(たま)が勢いよく放たれた。二体は()けるヒマもなく、消し炭となった。

 妖魔(ようま)を倒したことを確認すると、五奇(いつき)は深く息を()く。


「実戦でも通じた! 本当にすごいんだな……退魔術式(たいまじゅつしき)って」


 二つの武器を見つめながら、修行の時にルッツから教わった事を思い返す。


 ****


退魔術式(たいまじゅつしき)、ですか?』


 黒樹(くろき)市内のルッツが所有している修練場(しゅうれんじょう)で、首を(かし)げながら()五奇(いつき)に、ルッツが(うなず)きながら答えた。


『そう、退魔術式(たいまじゅつしき)。正式名称はもうちょっと長いんだけどね? とりあえず、そういう術があるって覚えてくれるといいかな?』


『は、はぁ』


 いまいち理解出来ていない五奇(いつき)の様子に、ルッツが()く。


五奇(いつき)君。五行思想(ごぎょうしそう)ってわかるかな?』


五行思想(ごぎょうしそう)?』


 五奇(いつき)()き返せば、ルッツが優しく解説してくれた。


『木・火・土・金・水の元素から万物は成り立ち、それらは互いに影響を与え合い、そして循環(じゅんかん)するという考え方のことさ。ま、とにかくそういうものだと思っておくれよ。で、僕達が使うのはその考え方を元に構築した術式(じゅつしき)でね? それぞれに(めい)という技の形態があるのさ』


『な、なるほど?』


 いまだわかっていない五奇(いつき)に対し、微笑みながらルッツが言う。


『君と相性がいいのは(きん)だから、その技を教えるとしよう』


 ****


 そうして、五奇(いつき)(きん)術式(じゅつしき)を三年間身体(からだ)に叩き込んだ。その技術が試験とはいえ、しっかりと身についていることが嬉しかった。


「よし、進もう。……正直、審査基準がわからないけど」


 ルッツからは「とりあえず死ななきゃ大丈夫」と言われ、試験前の説明にも「用意された妖魔(ようま)を倒し生き残ること」としか書かれていなかった。


(雑にもほどがあるけど……まぁ行くしかないか)


 試験を突破し、退魔師(たいまし)になることが最優先だ。そう自分に言い聞かせながら夜の森の中を更に進んで行った。

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