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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第一章 初めての任務編
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無知性妖魔

 洞窟内に一歩足を踏み入れただけで、冷たい空気と数多の妖魔達の気配を感じる。低級であることはわかるが、齋藤の言葉の通り、その数が把握しきれない。

 輪音(りんね)の鈴が鳴り響くため、五奇(いつき)に緊張感が走った。その様子を感じ取った鬼神(おにがみ)等依(とうい)も警戒心を上げた。……未だ楽しげな空飛(あきひ)を残して。


「……おい、てめぇはもうちっと緊張感を持てや!」


 たまりかねた鬼神が声を荒げると、空飛は、


「えっ? 緊張はしているのでございますが?」


「そういう意味じゃねぇんだよ!」


 とうとう怒り出す鬼神を、等依と五奇がなだめる。


「まーまー、空飛ちゃんはこれがデフォってーことで!」


「今は仲間割れしてる場合じゃないからさ! 鬼神さんの気持ちはわかるけど! とりあえず、いつでも攻撃できる体勢に入って! ね!」


 二人にたしなめられたため、鬼神は今にも掴みかかりそうだった両手をポケットにしまい、五奇の方へ視線をやりながら口を開く。


「ふん。おら、ノー天気バカは置いといてさっさと行くぞ!」


 それを受けて五奇も再度緊張感を持ち直し前を向くことにした。その際、後方から、


「あの、僕はなにかしたのでございましょうか?」


 という空飛の声が聞こえて来たのを無視して。


 ****


 洞窟内を進むこと数分で、洞窟の奥から次々と妖魔があふれて来た。その姿は、一様に身体が長く(めん)のようなものを被っていた。


「うーん? こっれーが、"無知性妖魔"っちゅーヤツっスね~」


 "無知性妖魔"。まだ解明されていない部分も多いが、妖魔の中でも低位で、本能のままに動物や……人を襲う存在のことだ。「巨大な"虫"みたいなもの」だと、以前ルッツに言われたことを五奇は思い出していた。


「こいつらを根絶やしにすりゃいいんだろ? やってやるよ!」


「僕も頑張らせていただきます。はい」


「そいじゃま~やるっスかー」


 口々に声をあげる三人に五奇も深く頷くと、先陣を切って無知性妖魔の内の数体に向かって行く。


参弥(さんび)セット、ゴー!」


 参弥のワイヤーブレードで一気に四体を斬り裂くと、続けて輪音で迫って来た一体を斬り捨てた。


「僕も行かせていただきます! はい!」


 五奇の戦闘に触発されたらしい、空飛がノリノリで舞うように翅剋(しかつ)羽刻(はこく)で妖魔達を斬り裂いて行く。その様子に、鬼神も高まったらしい、祓力(ふつりょく)を乗せた拳で近くに寄って来た妖魔を殴る。


「ハッ! 俺様だってやれんだよ! おっらぁ!!」


 得意げな彼女に、等依が口笛を一吹きする。


「お~みんなやるっスね~。オレちゃんは、どーすっかにゃー?」


 等依の主武器である式神、火雀応鬼(かがらのおうき)氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)はサポート向きだ。火雀(かがら)が戦闘力が高く前衛向きで氷鶫(ひとう)が防御力が高く後衛向きという違いはあるが、それだけだ。

 その時だった。五奇が真っ先になにかの"音"に気がついた。


「ん!? なんか、音が……足元から? ひび割れ!? あ! 鬼神さん! 危ない!」


 五奇が叫ぶが、鬼神は戦闘に夢中で気づいていない。


「くっそ! 鬼神さん!!」


 あわてて彼女のもとへ駆け寄るも、ひび割れはあっという間に広がり、足元が崩れ落ちて行く。


「なっ!?」


 ようやく鬼神が気づいた時には、五奇が彼女を抱きしめ、そのまま落下していた。


「五奇ちゃん、鬼神ちゃん!!」


 等依の声と、冷たいなにかに支えられている感覚に包まれながら、二人は深い底まで落ちた。

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