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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第一章 初めての任務編
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それぞれの思い

 庭に出た五奇(いつき)鬼神(おにがみ)は、折り畳み式のイスを広げ、少し距離を取って座った。

 しばらくの沈黙の後、ようやく彼女は口を開いた。


「なぁ……」


「うん?」


「正直に言え。俺様は……足手まといか?」


 思ってもいなかった質問に、五奇は目を見開いて驚きながらも間髪入れずに答えた。


「そんなことないよ! 確かに百戦獄鬼(ひゃくせんごくき)を制御できてはいないけど、それは些細な問題だよ! 足手まといなんて、俺も……他の二人も思ってないさ!」


 そう言って五奇が微笑めば、鬼神は頬を少し染めて、一言呟いた。


「そうかよ……」


 しばらくの沈黙の後、鬼神は椅子を畳んで早々と室内へと戻って行ってしまった。五奇はそれを茫然と眺めながら、


「な、なんだったんだ?」


 ただ困惑するしかなかった。


 ****


 部屋に戻った鬼神は、扉を閉めるとその場に座り込んだ。


「はぁ~……」


(足手まといじゃない……か)


「お人好しかよ……」


 そう言って近くにあった、お気に入りのぬいぐるみである"くまさん"を抱っこする。それに顔をうずめると、


「ばーか」


 誰に聞かせるでもなく、呟いた。


 ****


 その頃。自室に戻っていた空飛(あきひ)は、部屋着である浴衣に着替えて布団に寝転がっていた。思い起こされるのは、『爆炎の妖魔』との最初の戦闘でのことだ。


(僕は黒曜の力を使った……。あの場所ではそうするしかないと思ったからだけど……)


 大妖魔"黒曜(こくよう)"。大昔に生きた高位妖魔の一体と()()()()()()


(なんで、黒曜として生きていた時代のことは覚えているのに、今の僕が黒曜の力を使うと、記憶を無くすんだろうか? それに、なんで……)


「なんで、()()()()()()()()()()()()()()()?」


 そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だが、それなのにも関わらず、()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()


 それがどうにも引っかかるのだが、空飛には名案が思い浮かばないのが現状だ。他の三人に相談してみようかとも思ったのだが、


「いやいや、鬼神さんのことでも手一杯なのに。僕なんかのことまでは、言えないよぉ」


 そうして布団の上で頭を抱えるしかなかった。


 ****


「ふぃ~。あ~あ~、眠いっスねー」


 自室で音楽雑誌を読んでいた等依(とうい)は、読む手を止める。そして、火雀応鬼(かがらのおうき)氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)の方を見る。

 今の彼らは普段の鬼の姿でも、ましてや()()()()()()()()()火雀(かがら)は赤い(すずめ)氷鶫(ひとう)は青い(つぐみ)の姿を取っていた。等依はその状態を省エネモードと呼んでいる。


 そんな彼らの身体を撫でると、等依はいつになく真剣な表情を浮かべ、呟いた。


「さてと……こっからどーなるっスかね? オレちゃん如きにできること、あっかな~?」


 こうして、四人の一時の休みは過ぎて行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 乙女ちゃん可愛いかよ...!内心は不安だったのですね。 嫌い嫌いとは言ってるけど、五奇君の事を一番信用しているのかな...分析力に長けているリーダーとして
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