初任務完了と
『爆炎の妖魔』をなんとか倒すことに成功した五奇達は、疲れを癒すべく、報告書をまとめる前に休憩することにした。
「……しんど……」
開口一番、そう言って待機室にあるソファーへ等依がダイブする。そんな彼に、鬼神が渋い顔で、
「おい……だらしねぇだろうが!」
そういうと、乱暴に近くの椅子に座ると腕を組んで、睨みつけた。
「んで? 今回はあのセンコーのでなんとかなったが、これからどうすんだよ? 何度も同じ手が通じるとは思えねぇぞ?」
「それを鬼神さんが言うのでございますか?」
空飛が言えば、鬼神の表情が一層険しくなる。
「あ……も、申し訳ございませんでした!」
余計な一言だったことに気づいた空飛が謝れば、鬼神はそっぽを向いてしまう。その様子に、五奇は苦笑いを浮かべながら、
「あははは……まぁでも、今後の事を考えるのは確かに大事だし、それに……乱入して来た彼のこともあるし……」
全員が沈黙する。結局、あの赤髪の青年は再び現れることなく、何者だったのかわからずじまいだ。
「……ナイス武器な彼、結局どーしたんスかね~?」
ソファーから上半身だけ起こした等依がそう訊けば、五奇が顎に手を置いて考えながら答える。
「んー? 『爆炎の妖魔』みたいに、強者を求めているわけでもなさそうでしたね……確かに、なんだったんだろう?」
「なもん、考えたってしゃあねーだろうが……」
拳を握りしめながら、力なく言う彼女に五奇が尋ねる。
「百戦獄鬼の制御のこと、だよね?」
「……そうだよ。わりぃか……!」
「いや、悪いとかの問題じゃないけど……」
それっきり、二人の会話が続かない。しばらくして、黙っていた空飛が手を上げて、
「あの……僕も黒曜の力を制御した方が良いかも……なんて思ったりしたのでございますが……」
一呼吸おいて、三人が見守る中こう告げた。
「実は僕も、どうやったら制御が可能なのか、わからないのでございます。はい」
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休憩を終え、四人が報告書を提出して帰宅できたのは、昼頃だった。休んだとはいえ、初めての実戦。精神的な疲れも残ったため、各々自室へと戻っていく。そんな中で、鬼神が五奇に向かって珍しく声をかけてきた。
「……おい」
「えっ? なに、かな?」
おそるおそる五奇が訊けば、彼女は顔を伏せたまま、静かな口調でこう告げた。
「ちょっとツラ貸せや……」
物騒な物言いとは裏腹な沈んだ声が五奇の耳にやけに残った。




