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落零〈rakurei〉~おちこぼれ達の退魔伝~  作者: 河内三比呂
第一章 初めての任務編
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報告と

 透き通る朝日の中、失意のままトクタイへと戻った五奇(いつき)達Eチームの面々は、齋藤に渡すための報告書をまとめることになった。


 もっとも、空飛(あきひ)は気を失った上黒曜の人格になっていたし、鬼神(おにがみ)等依(とうい)は遅れて合流したため、報告書の大半は五奇が書くはめになったのだが。


「それにしても、まさか黒曜になると人格が変わるだけじゃなくて、記憶までなくなるなんてね……」


 五奇が苦笑しながら呟くと、空飛が心の底から申し訳なさそうな表情で頭を下げる。


「誠に申し訳ございません! 五奇さんには本当に、なんとお詫び申し上げたらよろしいのか……!」


「あぁ、いいよいいよ。気にしないで! それより、身体の方はもう大丈夫?」


 五奇が訊けば、空飛が元気さをアピールするかのように声を張り上げた。


「はい! おかげさまで!」


 そんな空飛の様子を見て、五奇は内心で黒曜と接した時のことを思い返す。


(完全に空飛君じゃなかったな……。鬼神さんが"力"の暴走なら、空飛君は"精神"の暴走って感じ?) 


「それで、その……『爆炎の妖魔』との戦闘中に現れたという、謎の人物とはいったい何者なのでございましょう?」


 空飛が話題を変えて尋ねれば、等依が答える。


「少なくとも味方ってわっけーじゃ、なさそ~っスよ?」


「いずれにせよ、只者じゃねぇことは確かだろうぜ? チッ!」


 そう言って舌打ちをする鬼神に、誰もなにも言えず、報告書をしあげることにした。

 しばらくして報告書をあげた四人は、仮眠をとることにした。というのも、齋藤から「任務完了までが仕事だ」と言われてしまったため、体力を回復させるためだ。


 ****


 仮眠室で寝転がりながら、等依は早々に眠ってしまった五奇と空飛を横目で見て、一人ぼやく。


「まぁ、現実的に考えて……オレちゃんの限界っスよね……」


 その声はどこまでも無機質で、冷めていた。


(このままだと任務完了は難しそうっスねー。まぁ、オレちゃんになにができるもねーっスけど)


 ため息を吐くと、等依も眠ることにした。


 ****


 寝静まった仮眠室のベッドの中、空飛が突如うめき声をあげる。


「うぅ……」


 ――暗くて不気味な静寂の中。

 ――鮮血を浴びる()()と転がる()()

 ――血濡れの両手を天へ掲げ、(わら)う。

 

「うわぁああああああ!?」


 叫び声をあげて飛び上がれば、五奇と等依が驚いたように起き上がり、空飛に声をかける。


「ど、どうしたの?」


「んん~? なしたんスか?」


 二人に心配され、空飛の意識がクリアになってきた。彼は浅く呼吸を繰り返し、落ち着いたところで、返事をする。


「な、なんでもございません……申し訳ございません」


 そう力なく答えると、再び横になる空飛に、五奇と等依は顔を見合わせ、心配そうに彼を見つめた。


「どうしたんでしょうね……?」


「さぁ? まぁ人には色々あるっスからねー」


 そう短く会話をした後、眠気と疲労に勝てず二人も再び眠ることにした。

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[一言] 新しい人物...いったい何者なんだ?仮に放浪ライダーと呼ぶことにしよう... ターゲットは逃走、こちらがすぐに致命傷を受けることも無さそうだし、潜伏タイプでは無いことから、発見、戦闘とその継…
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