報告と
透き通る朝日の中、失意のままトクタイへと戻った五奇達Eチームの面々は、齋藤に渡すための報告書をまとめることになった。
もっとも、空飛は気を失った上黒曜の人格になっていたし、鬼神と等依は遅れて合流したため、報告書の大半は五奇が書くはめになったのだが。
「それにしても、まさか黒曜になると人格が変わるだけじゃなくて、記憶までなくなるなんてね……」
五奇が苦笑しながら呟くと、空飛が心の底から申し訳なさそうな表情で頭を下げる。
「誠に申し訳ございません! 五奇さんには本当に、なんとお詫び申し上げたらよろしいのか……!」
「あぁ、いいよいいよ。気にしないで! それより、身体の方はもう大丈夫?」
五奇が訊けば、空飛が元気さをアピールするかのように声を張り上げた。
「はい! おかげさまで!」
そんな空飛の様子を見て、五奇は内心で黒曜と接した時のことを思い返す。
(完全に空飛君じゃなかったな……。鬼神さんが"力"の暴走なら、空飛君は"精神"の暴走って感じ?)
「それで、その……『爆炎の妖魔』との戦闘中に現れたという、謎の人物とはいったい何者なのでございましょう?」
空飛が話題を変えて尋ねれば、等依が答える。
「少なくとも味方ってわっけーじゃ、なさそ~っスよ?」
「いずれにせよ、只者じゃねぇことは確かだろうぜ? チッ!」
そう言って舌打ちをする鬼神に、誰もなにも言えず、報告書をしあげることにした。
しばらくして報告書をあげた四人は、仮眠をとることにした。というのも、齋藤から「任務完了までが仕事だ」と言われてしまったため、体力を回復させるためだ。
****
仮眠室で寝転がりながら、等依は早々に眠ってしまった五奇と空飛を横目で見て、一人ぼやく。
「まぁ、現実的に考えて……オレちゃんの限界っスよね……」
その声はどこまでも無機質で、冷めていた。
(このままだと任務完了は難しそうっスねー。まぁ、オレちゃんになにができるもねーっスけど)
ため息を吐くと、等依も眠ることにした。
****
寝静まった仮眠室のベッドの中、空飛が突如うめき声をあげる。
「うぅ……」
――暗くて不気味な静寂の中。
――鮮血を浴びる自分と転がる死体。
――血濡れの両手を天へ掲げ、嗤う。
「うわぁああああああ!?」
叫び声をあげて飛び上がれば、五奇と等依が驚いたように起き上がり、空飛に声をかける。
「ど、どうしたの?」
「んん~? なしたんスか?」
二人に心配され、空飛の意識がクリアになってきた。彼は浅く呼吸を繰り返し、落ち着いたところで、返事をする。
「な、なんでもございません……申し訳ございません」
そう力なく答えると、再び横になる空飛に、五奇と等依は顔を見合わせ、心配そうに彼を見つめた。
「どうしたんでしょうね……?」
「さぁ? まぁ人には色々あるっスからねー」
そう短く会話をした後、眠気と疲労に勝てず二人も再び眠ることにした。




