突然の
(うっ……息が……。でもそこまで熱くない?)
炎の竜に飲み込まれた五奇と空飛だが、熱さこそ感じれどダメージはそこまで深刻ではなさそうだった。
(汀様の加護のおかげか!)
五奇は炎の中、未だ意識を失ったままの空飛を近くに寝かせる。悠長にしている時間などなかった。
参弥と輪音を構えると、五奇は技を放つ。
「壱銘、斬葬弐連式!」
二振りの銃剣から、青白い閃光が放たれ、周囲の炎を瞬く間にかき消した。
「ヒュー! やるなァ!」
眺めていたのだろう、妖魔の声が耳に入って来た。妖魔は二人に向かって、ゆっくりとにじり寄ってくる。
「いいねェ、いいねェいいねェ! 愉しいぜェオレはァ!」
「俺は全く楽しくない! お前、イカレてるよ!!」
「あァ、そうだァ! オレはイカレてんだよォ! さァ、続けようぜェ!」
まだまだ元気そうな『爆炎の妖魔』の様子に、五奇は焦りを隠せない。
(くっそ! どうしたらいいんだ!?)
その時だった。見覚えのないシルエットが五奇達と妖魔の間に、風のように割って入ってきた。
「おゥ?」
「今度はなんだ!?」
それは黒いスーツに身を包んだ、赤色の長髪を垂らした青年だった。彼は、妖魔を睨みつけるように立ちはだかると、
「お前が妖魔だな。死ね」
言うや否や、青年はどこからか独特な形状の二対の片刃剣を取り出し、妖魔に攻撃を仕掛けた。
「ヒュー! バタフライソードかァ! いい趣味してるなァ!」
妖魔は彼の斬撃をギリギリでかわしながら、不敵に笑う。一人と一体は、川の方へと向かいながら攻撃をしあっていた。突然の乱入者により、五奇は動揺していた。
「えっ? トクタイじゃない……よな? 何者なんだ?」
とりあえず気を失っている空飛を引きずり、安全そうな場所まで連れて行く。
(このままじゃ、任務にならない! どうしたらいいんだ?)
頭を抱えていると、町の方向から見覚えのある二体の鬼が五奇達のそばに上空から降りてきた。
「等依先輩! 鬼神さん!」
五奇が二人に声をかける。
「どもっス! んでー、えーどーゆう状況?」
「おい、なんっで半妖は寝てんだよ? つーか、マジでどうなってんだ!?」
二人と合流できたことに安堵しながら、五奇は状況を説明する。しばらくして、状況を理解した鬼神が口を開いた。
「……とりあえず、アイツら引き離すってのはどうだ?」
「そうしたいけど、一人は人間っぽいし、勢いが凄すぎてどうしたらいいのか……」
五奇がそう答えれば、黙っていた等依が、拳を握りしめながらも冷静な口調で、
「……しょうがないっスよ……。こうするしか、ない」
動きだそうとする五奇と鬼神を制止した。




