初めての任務
あれから一週間が経った。その間、特にいつもと変わらず日々が過ぎて行った。
(解決出来ていない問題も、そのままなんだよなぁ……)
たまごサンドを食べながら、五奇はそんなことを考えていた。今日はいつもより珍しく遅くに起きたためかリビングに等依と空飛、鬼神の姿はなく、各々自室にいるようだった。
久々の静かなリビングでのんびりくつろぐ。今日は更に珍しい事に集合が午後からなのだ。
(結局、鬼神さんの鬼の制御は出来ずじまいだしなぁ)
あの後も、彼女の鬼である百戦獄鬼の制御は上手く行かず、どう暴走させないかが課題になっているのだが。
(このままだと、チームとして成立しないし……。でもなぁ……)
頭を悩ませながら食べる食事ほど、美味しくないものもない。そう思い直した五奇は、無心で食事を摂ることにした。
「ふぅ。ごちそうさまでした」
食べ終わった五奇は時計を確認して、時間がまだあるため自室へと戻って行った。
****
その頃。
自室にて鬼神はベッドに寝転がっていた。その表情にはいつも五奇達に見せている強気さはなく、ただのか弱い一人の少女そのものだった。
「ちきしょう……」
そう彼女はぼやく。自分でも本当はわかっているのだ。心がとてつもなく弱いということに。
(あの時、俺様……乙女が百戦獄鬼を……百鬼を拒否したから? だから言うことを聞いてくれねぇのか……?)
心当たりはある。だが、勇気が出ない。そんな紋々とした思いを抱えながら、彼女はいつも一緒に寝ているぬいぐるみを抱きしめる。その目には涙が浮かんでいた。
****
「全員揃ったな? 時間通りだ、いいだろう! さて、今日の召集が午後だったのには理由がある! 貴様らには、初めての任務を実行してもらう!」
齋藤の言葉で、一気に緊張が走る。
「どうした? いつまで訓練で満足しているつもりだ? 貴様らはすでにトクタイの所属! 任務を果たさずして存在意義などないと知れ! では、概要を説明する!」
有無を言わさない迫力に、四人は静かに頷くしかない。齋藤が任務について話し始めた。
「今回貴様らに課せられた任務は二つ! 一つは、最近この近辺を騒がせている『爆炎の妖魔』についての調査! そして一つは『その妖魔の討伐』である!」
空飛が手を上げて訊く。
「あの教官! 『爆炎の妖魔』というのは一体何者なのでございましょうか?」
その言葉に、齋藤が勢いよく答える。
「良い質問だ、夜明空飛よ。今から渡す資料に目を通せ!」
そう言われ、資料が四人に手渡された。そこには『爆炎の妖魔』についての概要と被害報告が書かれていた。
資料によると、自身を『爆炎の妖魔』と名乗る黒人の男が黒樹市内に出現し、通り魔的に民間人を襲い、死者が出ているとのことだ。
その妖魔の特性は、現在確認されいているかぎりだと『夜間に活動』し、『被害者は全員焼けている』という。
「貴様ら、資料は読み終わったな? よし、ならばすぐにでも任務についてもらう! 行ってこい!」
待機室から四人は出て行く。いよいよ、実戦だ。




