妖魔王
「おせぇーぞ」
資料室に入るなり鬼神にそう言われ、三人は苦笑する。その様子に、彼女はめんどくさそうな顔をしながら、
「おら、さっさと調べんだろ? 俺様は二階を探す。てめぇらは好きにしろや」
それだけ言ってさっさと行ってしまった。
(……一応、待ってはくれていたんだよな? っていうか、鬼神さんのことで調べに来ているのに……偉そうだなぁ……)
そう不満に思いながらも、五奇は等依と空飛に声をかける。
「では、俺達も探しましょうか?」
「そうっスね~。オレちゃんも二階をさっがそーっと!」
「でしたら、僕は一階を探させていただきますね。良い資料が見つかると良いのですが……」
そう答えると、二人も資料を求めて行く。出遅れた五奇は、一人呟く。
「俺も一階を探すかな……」
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「んー……良いのないなぁ……」
資料を漁ること一時間。なかなか成果が得られない中、五奇が思い起こしていたのは、鬼神のいとこ、柩のことだった。
(あの子、なにか知っていたのかな? それとも、ただ鬼神さんを心配していただけ……?)
考えながら探していると、ある資料が目に留まった。
「……『妖魔王について』? 妖魔王ってなんだ?」
鬼神との関係性はなさそうだが、興味を惹かれた五奇はその資料を手に取ってみる。分厚いファイルをめくってみると、
「……なになに? 『妖魔王とは全ての妖魔の頂点にして、最上位の存在』ねぇ……」
(そういえば、あの時の妖魔は……何者だったんだろうか?)
五奇はページを読みながら、あの日、五奇の人生を変えた妖魔のことを思い出す。
(わけのわからないヤツだったな。後、とても恐かった……)
あの時の恐怖が嫌でも蘇えって来る。五奇はそれを振り払うようにページをめくっていく。
『妖魔王は第代わりをしている可能性があり、また、その都度属性なども変わっていると考えられる。よって、歴代の妖魔王とのデータをここにまとめる』
そのデータを五奇は見てみたが、
「うわぁ……なんだこれ。全然わからないや……」
複雑そうなグラフやら図形やらが書き込まれていて、とてもじゃないが解読できそうになかった。だが、ある一文が五奇の目に入った。
(『妖魔とは、人の願望に起因するモノであると仮定している』か……)
今まで考えたこともなかった妖魔という存在について、考えてみたくなった。だが、「さすがにこれ以上は脱線する」と理解した五奇は、そのファイルを閉じ、本来の目的である”鬼憑き”について資料がないか再度探し始めた。
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(結局、俺が見た範囲では、良いの見つからなかったなぁ……)
二時間かけて探してみたものの、資料は見つけられず、五奇は他の三人と合流するため、資料室内にある共有テーブルのところまで向かった。
この資料室は壁一面に資料が並んでおり、中央に共有テーブルが配置されている。テーブルの方を見れば、鬼神と等依が既に座って待機していた。
空飛の姿がないことに気づくが、まずは合流をと思い、五奇は二人に近寄って行く。二人はとくに会話をしている風でもなかったので、五奇は苦笑するしかなかった。




