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知るということ

「目が覚めたようだな、鬼神乙女(おにがみおとめ)? 貴様は案の定暴走し、チームメイトに多大な迷惑をかけたのだぞ! はっきり言おう! あのままであれば、死人が出ていたとな!」


「……どういう、意味だ……?」


 鬼神が訊けば、齋藤が冷たく言い放つ。


「貴様の鬼、百戦獄鬼(ひゃくせんごくき)の暴走により、蒼主院等依(そうじゅいんとうい)の鬼と夜明空飛(よあけあきひ)の命が危うかったのだ!」


 齋藤にそう指摘されて、鬼神の表情が強張るのが五奇(いつき)達にもわかった。しばらく沈黙した後、ゆっくりと鬼神が口を開く。


「……どうすりゃ……いい?」


 その声はいつになく弱々しいもので、五奇はなんと声をかけていいのかわからない。


(いや……そもそも、俺が声をかけたところで、何か変わるのか? ……嫌われているのに?)


 そんな思いが頭をよぎれば、等依が口調とは裏腹な冷静な声で鬼神に訊く。


「鬼神ちゃんさー。ひょっとして、百戦獄鬼の制御が出来ない理由、知ってたーりするん?」


 鬼神は怒鳴るでもなく、静かに首を横に振った。相当堪えているらしい。そんな彼女の様子を見て、五奇は思わず声を発していた。


「……知らないなら、知ればいいんじゃないかな?」


 口を突いて出た言葉は、予想以上に周囲に響いたらしい。皆が目を丸くし、五奇に視線を向ける。


(えっ? あ、思わず言っちゃったけど……どうしよう?)


 自分で言っておきながら困惑してしまう五奇に対し、鬼神が顔を伏せながら訊き返す。


「知るっつったって、どうしろってんだよ……? 実家の連中すらお手上げだったんだぞ?」


 そう答える彼女に対し、今度は空飛が手をあげた。


「あの……思ったのでございますが、トクタイの資料室などで調べてみるというのはいかがでしょうか?」


 彼の提案に等依が同意する。


「なっる~! いーんじゃね? オレちゃん、大賛成!」


 明るく言う彼に感謝しつつ、五奇も深く頷いた。その様子を見て鬼神が複雑そうな顔をするが、どうやら受け入れることにしたらしくゆっくりと立ち上がった。


「……この借りは必ず返すからな!」


 いつもの調子を幾分か取り戻した彼女に、三人は穏やかな表情を浮かべ、齋藤の運転でトクタイ本部へと戻ることにした。


 ****


「そっれでー? どっから調べるんスかー?」


 四人は、資料室で何をどう調べるのかをEチーム専用の部屋でひとまず話し合うことにした。


「つーか、チャラ男。てめぇは”鬼憑き”について、ガチでなんも知らねぇーのかよ?」


 鬼神にそう訊かれた等依が、顎に右手を置いて答える。


「う~ん? 蒼主院となっが~い付き合いのある家系なのと、”生まれつき半身としての鬼を宿している一族”ってこっとーしか知らないっスねー」


 あっさりと言う等依に、五奇、空飛、鬼神の三人が各々に叫ぶ。


「結構知ってるじゃないですか!?」


「等依さん、それは知らないとは言わないと思われます。はい」


「てめぇ……しらばっくれてんならしばくぞ!?」


 そんな三人の反応に、等依が困惑したように返す。


「えぇー……うっそ~ん? オレちゃん、おちこぼれなんスけどー?」


 彼の様子に、今度は三人が困惑する番だった。しばらくの沈黙の後、五奇が咳払いをし、促した。


「と、とりあえず……資料室に向かいましょうか?」


「そうでございますね、はい」


「チャラ男……ほかにもしらばっくれてたりしたら、殺すからな?」


「えー……」


 そんなやりとりをしながら、四人は資料室へと向かった。

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