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百戦獄鬼

「では、俺から行きます!!」


 五奇(いつき)はそう叫ぶと、参弥(さんび)のブレード部分を射出し、百戦獄鬼(ひゃくせんごくき)と妖魔との間に割り込んだ。

 それを合図に等依(とうい)空飛(あきひ)も動き出す。一瞬の隙をついて、等依が火雀(かがら)氷鶫(ひとう)をそれぞれ百戦獄鬼と妖魔に対峙させると、空飛がボロボロの妖魔目掛けて、二振りの短刀を交差させて技を放った。


「行かせていただきます! 黒曜抜刀術こくようばっとうじゅつ! 双十字斬(そうじゅうじざん)!」


 空飛の斬撃で、妖魔は消滅し、残ったのは気絶した鬼神(おにがみ)を含めた四人と二体の鬼、そして、百戦獄鬼だけとなった。


「んー? ミッションはコンプリートっしょ? のっこーるは~?」


 等依の言葉でみんなで百戦獄鬼の方を見れば、突然、火雀と氷鶫に襲いかかって来た。


「やっば!? 火雀(かがら)氷鶫(ひとう)! カムバッ~ク!」


 等依の指示で二対の鬼は姿を消した。すると、攻撃体勢に入っていた百戦獄鬼は、振り上げた拳のやり場を求めて、空飛に狙いを定めたようで、彼に向かって拳を振り下ろした。


「あひゃあ!? ちょ、ちょっと待って下さいませ!? 僕は、その、半妖でございましてですね!?」


 百戦獄鬼に向かってそう弁明する空飛だが、当然通じるわけもなく。完全に獲物として認識したらしい、逃げ回る彼を執拗に追い回している。

 その様子を見た五奇は百戦獄鬼の前に立ちはだかった。


「やめるんだ! 百戦獄鬼! 敵はもういないし、鬼神さんも無事だ! だから、鎮まってくれ!」


 五奇が囮になっている間に、等依が折り紙で作った簡易式神達を百戦獄鬼の周囲に放つ。すると、獲物をそちらに切り替えたらしく、次々と式神達を握りつぶし始めた。

 その様子は、まるで幼子が玩具を壊して遊んでいるかのようで。


(ゾッとする……)


 思いながら五奇は視線で「逃げろ」と空飛に合図を送る。その意図を察した等依が、まだ理解出来ていない空飛を引きずるように腕を掴んで、百戦獄鬼の近くから引き離して行った。


 それを確認してから、五奇は未だ式神達を相手にしている百戦獄鬼の近くに気絶している鬼神を抱えて連れいき、


「鬼神さんのもとへ帰るんだ……」


 五奇が声をかけたと同時に、等依が放った式神達が一斉に折り紙へと戻り、宙を舞った。

 そのタイミングで、百戦獄鬼が鬼神の身体へと戻って行くのが五奇にもわかった。全てがおさまったことで、五奇は一息吐くと、未だ起きる気配のない鬼神をおぶって歩き出した。


 ****


「ふむ。戦闘訓練と言ったはずだが、予想通り暴走したか」


 気絶した鬼神含めた四人が齋藤のもとへと戻ると、開口一番そう言われてしまった。五奇、等依、空飛は思わず顔を見合わせる。


「えっと……。齋藤教官? それってつまり……こうなることを想定していたと?」


 五奇が代表しておそるおそる訊けば、齋藤があっさりと答えた。


「そうだが? 貴様らこそ、何故こうならんなどと思っていた?」


 逆に言われてしまえば、三人は何も言えなくなってしまう。すると、そこで鬼神が気が付いたらしい。


「うう~ん」


 小さく唸った彼女を、五奇は慌てて地面に降ろし、身体を支えた。ゆっくりと目を開けた鬼神は、状況がわからないのか、寝ぼけたような声でこう言った。


「ここは……?」


 その声はいつもとは違いとても幼く聞こえた。

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