トラブル発生
「コイツ! でかくなりやがった!?」
鬼神が叫ぶと同時に、妖魔の巨大化に耐えられなくなった天井が崩壊していく。
「やっばーいっス! みんな、オレちゃんとこ集まって!」
言われるがままに等依の元へ集まると、火雀と氷鶫が守るように立ち、
「"結界発動"! みんなを守っれーっス!」
あっという間にドーム状の透明な結界が張られ、落ちてくる瓦礫から守ってくれた。五奇は不謹慎ながら、
(ホント、なんでこの人Eチームなんだろう?)
そう思っている間にも、建物は脆くも崩れ、辺りは瓦礫だらけとなった。肝心の妖魔はと言うと、とてつもなく巨体になっていた。
「な!? なんて大きさなのでございましょう!」
あまりの大きさに空飛が珍しく大声を上げたと同時に妖魔が彼を狙って、近くに落ちていた瓦礫を投げ付けた。
「あひゃあ! あ、あ、危ないでございますです!?」
慌てて避ける空飛を見ながら、五奇と火雀が左右から攻撃を加える。だが、いとも簡単に振り払われてしまった。
「クッソが! 訓練にしちゃあ、鬼畜すぎっぞ!?」
そう叫びながら、鬼神が飛び上がって妖魔の脇腹に蹴りを入れ、その痛みに更に怒った妖魔が鬼神の右足を掴み、彼女を思いきりぶん投げた。
「うぐっ!」
投げられた鬼神が吹っ飛んでいくのを見た等依が、慌てて氷鶫と火雀に指示を出した。
「氷鶫! 鬼神ちゃんを! 火雀! 五奇ちゃんと空飛ちゃんをバックアップっス!」
二体の鬼は頷き、それぞれ行動に移す。
「空飛君! 連携で行きましょう!」
「りょ、了解でございます! では!」
五奇と空飛は目を合わせ、呼吸を整えて、攻撃を仕掛ける。
「金の退魔術式! 弐銘、覇斬牙!」
「行かせていただきます! 黒曜抜刀術! 零閃華!」
それぞれが飛ぶ斬撃を放つと、妖魔に命中した。しかし、
「ぐあああああああああ!!」
再び咆哮を上げた妖魔は、地団駄を踏みだした。その振動で、三人は立っていられなくなり地面に膝をついた。
「五奇ちゃん! 空飛ちゃん! えとーえとー火雀! 攻撃連打っス!」
振動の影響を受けながらも、等依の指示を受けた火雀が向かい、妖魔が振り上げた拳を両手で受け止めた。膠着状態になる妖魔と火雀を見ながら、五奇は考える。
(どうする? 揺れは収まったし、動きも火雀が止めてくれてる! でも、攻撃が効いていない!)
その時、鬼神が吹き飛ばされた方角から、"なにか"が勢いよくやってきて、妖魔に強烈な打撃を与えた。
「なっ!?」
「何事でございましょうか!?」
「こっれーは! 鬼神ちゃんの"鬼"っスね? つーことは……暴走かぁ~!!」
驚く五奇と空飛とは裏腹に、冷静に言う等依のもとに、鬼神を抱えた氷鶫が現れた。
「鬼神ちゃ……気絶してるぅー」
"鬼"の主、鬼神は完全に気を失っているようで、ピクリとも動かない。その結果なのだろう、半透明な人型の"鬼"、百戦獄鬼は容赦なく妖魔を殴りまくっていた。その威力は凄まじく、先程の一撃でよろけた妖魔にどんどんダメージが入って行く。
その姿はまさに、"修羅"の如く。一ミリも入る隙の無さに、三人と二体の鬼達は茫然とするしかない。
「あれが鬼神さんの鬼でございますか……。なんとも恐ろしい、エネルギーの塊のようでございますね」
「このままじゃ、あの鬼に全部やられてしまう。それじゃ訓練にならないからなぁ……止めましょう!」
「りょーかいっス! 鬼神ちゃんのことは、おっまかせあ~れ!」
各々の役割を把握した三人は、動き出した。