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訓練開始

五奇(いつき)ちゃーん? 輪音(りんね)の探知の方、どーなんスか~?」


 等依(とうい)に訊かれ、五奇は輪音の方を見る。輪音の鈴の音は、持ち主である五奇にしか聴こえないのだ。


「鈴は鳴ってないです! でも、振動はしていますからこっちの方角かと!」


 五奇がさし示したのは、敷地内の南方にある古びた病院のような建物だった。


「にゃるほどー! とりま、こーっちでいーってことっスね!」


「とりまってなんだよ! ちゃんとやれや!!」


 二人のやりとりに鬼神(おにがみ)が突っ込みを入れれば、三人は苦笑いを浮かべるしかなかった。


 ****


「……ここ、でございましょうか?」


 空飛(あきひ)の言葉に五奇は頷くと、


「うん、輪音の鈴が振動し始めてるんで。ここのどこかに妖魔がいます。みんな、準備はいいですか?」


「おーけーっスよ!」


「大丈夫でございます、はい」


「いいからさっさと行けや!」


 準備が整っていることを確認した五奇は、慎重に廃病院の扉を開ける。ひび割れたガラスが恐怖を煽ってきて、不気味だ。


「お、おい! 横取り野郎、ゆっくり慎重に行けよなぁ……」


(あ、こういうの苦手なんだ……)


 鬼神の反応に、五奇はそう思いながら進んで行く。受付を抜け、奥にある階段へと向かっていった。


「なんだかホラーゲームのようでございますね? 僕、けっこう嗜むものですから……」


 珍しく楽しげな空飛に、横にいた等依が一言、


「……空飛ちゃんてば、ナイスキャラっスねー」


 彼なりのフォローだろう言葉に、空飛が戸惑いながら訊く。


「は、はぁ……左様でございますか?」

 

 そんなやりとりをしていると階段前までたどり着いた。


「輪音の鈴が! おそらく下の階にいます!」


 そうして階段を見つめれば、ところどころが崩れていてボロボロだった。意を決して、鬼神が言う。


「おら! さっさと行って終わらせんぞ!」


 四人は慎重に階段を下りていく。


「大きく鈴が鳴りました!」


 輪音の鈴の音の大きさで、妖魔の大体の強さまでもがわかるのだ。この音の感じだと、中の下くらいの強さだろう。そう五奇が思っていると、等依が口を開いた。


「つくづく便利っスよね~! オレちゃん、そーゆーの持ってないかーら、うらやまっス!」


 意外な言葉に五奇は思わず否定する。


「いやいや、等依先輩の式神も便利じゃないですか!」


「んん? オレちゃんはそれしか取り柄ないっスからねー?」


 どこか自虐を含んだ声色に、五奇は深く追求することをやめた。


「着きました。ここだと思います」


 五奇の言葉を合図に、全員が戦闘体勢に入った。五奇と空飛が武器を構え、等依が火雀応鬼(かがらのおうき)氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)を呼び出し、鬼神がファイティングポーズを取る。五奇がカウントを三から数え、一の合図で扉を勢いよく開けた。


「ぐぉおおおおおおおお!!」


 瞬間、妖魔の咆哮が響き渡る。それ圧されそうになりながら五奇は攻撃を仕掛けた。


「行きますよ! 参弥(さんび)セット! ゴー!」


 ブレード部分を妖魔に向けて射出すると、妖魔は避けようともせずに攻撃を受けた。予想以上に頑丈だったらしく、ブレードは当たったものの、地面に落ちてしまった。それを見て、等依が自身の鬼達に指示を出した。


火雀(かがら)氷鶫(ひとう)、レッツらよっろ~!」


 二対(につい)の鬼達が向かって行くと、ようやく妖魔が動き出した。足元に落ちていた参弥のブレードを拾い、ワイヤーをつかむと強く引っ張った。


「うぉ!? うわぁああ!?」


 引っ張られた勢いで、五奇は壁に打ち付けらそうになる。


「五奇ちゃん!」


 それを氷鶫が身をていして受け止め、助けてくれた。


「あ、りがとう……?」


 五奇がお礼を言えば、氷鶫が右の親指を上げた。そして、抱きかかえていた五奇を優しく地面に降ろした。あらためて感謝を伝えると、五奇は状況を確認する。空飛が二対の短刀で妖魔に斬りかかり、鬼神が蹴りを入れる。そこへ火雀の拳が飛んでいた。


「俺も負けてられない! 輪音セット! (きん)退魔術式(たいまじゅつしき)! 壱銘(いめい)斬葬(ざんそう)!」


 五奇が技を放ち、一直線の攻撃が妖魔の腹に当たった。


「やったか?」


 五奇がそう言ってから、四人と二体の鬼達は妖魔から距離を取り、様子を見た。


「ぐがががががが!!」


 怒り狂った妖魔の身体が、巨大化して行った。

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