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教えてください

 五奇(いつき)は三階に上がると、等依(とうい)の部屋を二回ノックした。


「ほいー? もう風呂上がったんー?」


 等依の声が聞こえてきたので、五奇は素直に用件を告げる。


「俺です、五奇です。ちょっと訊きたいことがあるんですけど、いいですか?」


「いいっスよ~。開いてるからどぞー」


 返事を聞いて、五奇は遠慮がちに扉を開けた。


「お邪魔しま……えっすご!?」


 室内が見事にサイケデリックに染まっていた。幾何学模様のカーテンにクッションなど。とても同じ家に住んでいるとは思えない。思わず固まっていると、等依が不思議そうに声をけた。


「五奇ちゃーん? どしたんよ? オレちゃんに用事なんっしょ?」


 そこで本題を思い出した五奇は、慌ててベッドにもたれかかっている等依の近くへ座った。


(っていうか、目チカチカするんだけど……?)


 そんな感想を抱きながら、差し出された派手なクッションを受け取り敷く。


「んで? 訊きたいことってなーに?」


 五奇は色々な意味で負けそうになっていたが、勇気を出して早速話を切り出した。


「あのですね。蒼主院(そうじゅいん)退魔術式(たいまじゅつしき)について教えてほしいんです」


「ふーぬ、にゃるほどね~。五奇ちゃんはなんて聞いてたん?」


 五奇はルッツから教えられたことを話した。五行思想に基づいていること、自分には金の退魔術式が合っていることなど。一通り話を聞いた等依は顎に手を当てると、


「んーオレちゃんが知ってるのだーと、トクタイ所属の退魔師には種類があって、いっちゃん多いのが五奇ちゃんも使ってる"蒼主院流退魔術式そうじゅいんりゅうたいまじゅつしき"を扱う人なんね? んで、それを教えられるのてーと、蒼主院家になんらかの形で関わってる人だけなんスよ。それに、術式教えるのにも許可いる……はず?」


「そ、そうなんですか? じゃあ……先生も、もしかして蒼主院家と関わりが……?」


「もしかしなくてもそうっしょ。まぁ、それが蒼主院家の門下生なのか、それとも血筋の人なんかはわかんねースけど!」


 とにかくと言葉を区切ると等依は、


「んでまぁ、蒼主院流退魔術式つーのはね? 簡単にゆ~と、元は一般的な陰陽道から派生したもんで、蒼主院公謐(きみみつ)って人が開祖なんスよ。その人がアレンジしたのが始まりだとかなんとか?」


 今まで知らなかった新事実の数々に、五奇は驚きを隠せない。そして、それをなぜ師匠であるルッツが教えてくれなかったのかも含めて疑念を持った。五奇の様子に気づいた等依が優しく訊く。


「五奇ちゃん? 大丈夫?」


「あ、はい。大丈夫です! 風呂前にすみませんでした!」


 深々とお辞儀をすると、等依が右手をヒラヒラさせながら朗らかに言う。


「いーっていーって! つか、オレちゃんこんなんだからさぁ。わかりにくかったかもしんねーわ! 悪いっスね~。で、ところでさ……」


 一端そこで言葉を区切り、五奇に耳打ちするように声を潜めながら、


鬼神(おにがみ)ちゃんって、何時まで風呂入ってると思う? オレちゃん、いやーな予感するんスけど?」


 言われて時計を見れば二十分以上はすでに経過していた。


「女の子ってめーっちゃ風呂長いイメージあるんスよね……」


 色々と察してしまった二人は、ただただ遠くを見るしかなかった。


 ****


 結局、五奇が風呂に入れたのは約一時間半後だった。もちろん、その一時間は鬼神だ。


「あー疲れたていうか、もはやしんどい……」


 シャワーを身体に浴びながら、疲労を実感する。本当は湯舟に浸かりたいのだが、


「……さすがに、ね……」


 狂犬みたいとは言え、女性である鬼神が浸かった湯舟に入るのは抵抗があった。出会ってまだ一週間も経っていない上に、嫌われているのでなおさらだ。

 大人しくシャワーだけさっさと浴びると、五奇は歯を磨いて寝間着に着替えて、部屋へと戻って行くのだった。

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