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いざ共同生活

 五奇(いつき)は自然と言葉を漏らしていた。


「笑わないよ」


「あ?」


「笑わない! だって、君、物凄く悔しそうじゃないか!」


 五奇の真剣な声色に、鬼神(おにがみ)は心底驚いた顔をした。それに気づきながらも、五奇は続ける。


「……わかるから。自分が無力だって思わされた時の気持ち。だから、俺は! 君を絶対、笑わない!!」


 力強くそう言う五奇に、等依(とうい)空飛(あきひ)も深く頷きながら、


「頑張ってる子を笑うとか、そもそもないっしょ!」


「力が制御出来ていないという点につきましては、僕も同じでございますから。はい」


 思い思いの言葉を鬼神にかければ、彼女は頬を赤く染め、口を開いた。


「ばっかじゃねーの! はっ! ……奇特な連中だぜ……けっ!」


 少しだけ、距離が縮まった気がした。そのタイミングで齋藤が入室してきた。


「互いを少しは理解したようだな? では、共同生活について説明を行うぞ?」


 少し含んだ声で齋藤は説明を始める。その内容に五奇含めた四人は困惑するのだった。


 ****


「共同生活か……はぁ、やれんのかなぁ?」


 自宅に戻った五奇は、コンビニで買った鮭弁当を食べながらそう一人呟いた。


(今日で、少しだけ……ホントに少しだけ互いのことがわかったけどさぁ)


「だからって、一緒に暮らせるかは別だよなぁ……」


 深いため息を吐き、白米を口に運ぶ。


(なんで俺が炊くと、お米が毎回焦げるんだろうなぁ?)


 市販のご飯の方が美味しいことにちょっとした劣等感を感じながら、食事を終えると少し休み、


「はぁ……片付けをしないとかぁ」


 家の中を整理し始めた。この部屋はマンションの一室であり、三年前の事件の後、父の入院に伴いここに越してきたのだ。ルッツの計らいで少し広めな1DKに住ませてもらっている。


(ここの引き払いとかは、確かルッツ先生がなんとかしてくれるんだったな。そこは安心だけど……)


 "共同生活"。その単語に一抹の不安を感じながら、時間をかけて荷物を精査していく。

 引っ越すのは三日後で、急いでやる必要性は全くないのだが、気持ちがなんとなく落ち着かないので、もう段ボールに詰めていくことにした。気づけばあっという間に深夜になってしまい、五奇は寝ることにした。


 ****


 三日後。午後十時。

 五奇、等依、空飛、鬼神の四人は、用意された一軒家の前に立っていた。庭付きの三階建てという、そこそこ都会からすれば、なかなかの良物件だ。


「さてっと、どーするっスか? 五奇ちゃん」


 等依に話を振られて、五奇が口を開く。


「えと、じゃあまずは各自の部屋割りからしますか。確か……二階から三階までが個室でしたね」


 齋藤から事前にもらっていた見取り図を見ながら言うと、鬼神が、


「俺様を三階の角にしろ。あと、横取り野郎と隣だけはまっぴらごめんだ!」


 それだけ言ってさっさと手荷物だけ持って中に入って行ってしまった。


(随分と嫌われたなぁ)


 苦笑いを浮かべながら、五奇は残りの二人に話を振る。


「というわけで、俺は二階のどっちかにしますけど……二人は要望あります?」


「うーん、オレちゃんはどっこでもいーけど?」


「僕は……その、大変申し上げにくいのですが……鬼神さんの隣は出来ればご遠慮させていただきたく……」


 空飛の一言で三階は確定したので、二階の残りの部屋をどちらにするか、じゃんけんをして決める。


「あっ。僕が角部屋のようでございますね」


「ですね。それじゃ手荷物置いたら、大物から入れていきましょう」


 そう言って、五奇は綺麗に整列している四台のトラックを見た。それぞれの家具などが入っているのだ。

 

「こー見るとそーかんっスね!」


 呑気に感想を述べる等依に五奇が声をかける。


「まぁ確かになかなかない光景ですけど……。等依先輩、空飛君、とりあえず手荷物置いてきましょう? それで、等依先輩には悪いんですけど……」


「鬼神ちゃんに部屋割り決まったって伝えとくっスよー。ほいじゃー」


 こうして三人も家の中に入り、各自の部屋に手荷物を置いた後、家具などを搬入することにした。ここでも活躍するのは等依の簡易式神達だ。


「チャラ男……てめぇ、引っ越し業者向いてんじゃねーの?」


 合流して来た鬼神にそう言われても、等依はいつものテンションで、


「まー、実際いるらしースけどね~? オレちゃん、いちおートクタイ入ったんでしばらくはこっちで頑張りたい的な?」


 あっさりそう答えると、等依は的確に式神達に指示を出していく。


(ホント、便利なんだよなぁ……)


 五奇も関心しながら、自分で持てる荷物を運んだ。ふと見れば、空飛も大きめな段ボールを運んでいるのが見えた。そうして、全員の荷物を運び入れた頃には、お昼を回っていた。

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