決着
「金の術式、解放! 壱銘、斬葬・雷!」
雷鳴を轟かせながら、鬼の胴体へと五奇は技を放つ。そこへ畳みかけるように、琴依と灰児も技を放つ。
「影の術式、参銘、影人形!」
「火の術式! 弐銘! 紅蓮剛弾!」
五奇が少しつけた傷に二人の技も当たる。そこへ更に、等依の鬼達の技と鬼神と柩の技も同時に当たる。だが……。
「ぜんっぜんきいてねぇーし! どうなってんだよ!」
鬼神の叫びの通り、全く効いていない。輝也と黒曜はみんなの援護で精一杯だ。二人を除いては。
「スサノオノミコト。やってくれ!」
「呪詛を……貴方に」
ルッツと和沙だ。ルッツは金龍と銀虎を器用に交互に乗り移りながらスサノオノミコトに指示を出し、和沙は陣を描いて呪文を詠唱していた。
そこへ美珠と雅姫も合流し、全員で再度叩みかける。
「参銘、閃牙・漸!」
五奇が出せる最大出力の光の弾を放つ。それに合わせるように灰児、雅姫が技を同時に乗せる。そして……等依が更に上乗せする。
「行くっスよ、氷火!」
そこへ追い打ちとばかりに、鬼神と柩が奥義を放った。
「くらいやがれ! 阿修羅逆鱗斬!」
「行って! 阿修羅光輪斬!」
二人の技も合わさって巨大な弾となり超巨大鬼にぶつかった。その衝撃で吹き飛ばされそうになるのを堪えていると、和沙の呪詛による動き封じが発動した。
「スサノオ! アマノムラクモノツルギ!」
武神の巨大な剣が鬼の脳天を討ち抜いた。その巨体が倒れたのを見て、五奇がトドメの一撃を放つ。
「壱銘、斬葬・景!」
五奇が放った閃光により、超巨大鬼は霧となって消えた。その光景を見ていた妖魔王は再度欠伸をすると、静かに告げる。
〔つまらん見世物だった。寝る〕
それだけ言って彼は次元の狭間へと消えて行こうとする。それを五奇が制止した。
「待ってくれ! お前は……なぜ何もしないんだ!?」
その問いに、彼は静かに五奇に視線をやり短く答えた。
〔元から何もなしていないからだ〕
それだけ答えると彼は亜空間のどこかへと今度こそ消えて行った。残ったのはボロボロになった神社と拘束されたすずめ、そして疲弊しきったトクタイのメンバー達だけだった。
救護班が来たのは、それからしばらく経った後のこと。みんなもれなく病院送りとなった。そして……両我の死も伝えられた。
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その頃。
スカーレットと対峙していた李殺道は、彼女の首にバタフライソードを突きつけていた。
「終わりだ」
静かに目をつぶる彼女の首を、彼ははねようとした時だった。
「龍苑……。愛していた、わ」
その言葉に、彼は思わず目を見開いた。そして答える。
「俺もだよ、麗花姉さん」
最後に一言呟いて、彼女の首をはねた。その目に感情はなく、黙々と彼女だったモノを抱えると彼は静かに呟いた。
「終わらせる。全ての妖魔を……」
そう決意を新たに青年は亜空間から、ようやく取り戻したものを抱えて脱出した。