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続、各々の力と

「行くっスよ~火雀応鬼(かがらのおうき)氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)、かもーん!」


 等依(とうい)が両手を広げてそう言った瞬間、二メートル以上の、一体は赤、もう一体は青の、角が生えた鎧を纏った"鬼"が現れた。


(すっご! なんだあれ!? 妖魔……だよな?)


 五奇がそんなことを考えている間にも、等依とその鬼達に向かってターゲットが飛んでいく。


「サクっとバシっと、よろしくちゃーん!」


 相変わらずのテンションだが、等依の声色は真剣だった。赤の火雀応鬼が先陣を切り、向かってきたターゲットを次々と破壊していく。その攻撃から漏れた分のターゲットを青の氷鶫轟鬼が仕留める。完璧な連携だった。


「すっご……。あんなに強いのに、なんで……」


 思わず五奇が呟くと、聞こえていたらしい齋藤が口を開いた。


「それは本人に訊くべきだな。……もういいだろう! やめい!」


 ターゲットの射出が止まり、等依は息を吐いた。


「疲れたっス~火雀(かがら)氷鶫(ひとう)。戻っていーっスよ!」


 二体の鬼は静かに透明になって姿を消し、等依が戻ってきた。


「次は夜明空飛(よあけあきひ)、貴様だ!」


 指名された空飛が、前に出て丁寧にお辞儀をした。


「よろしくお願いいたします。……その、お二人方よりも派手さもなにもございませんが……なにとぞ、ご理解ください」


 空飛が二対(につい)の短刀を構えたのを確認した齋藤が、右手を上げた。


「ターゲット、射出! 始め!」


 空飛は軽快かつリズミカルな動きで、飛んでくるターゲットを次々と斬りはらっていく。


「はっ! はぁっ!! たぁ!!」


 確かに五奇や等依のような派手さはないが、動きの一つ一つが丁寧で舞いのようだった。


(なんでこれでEチームなんだろう?)


 五奇が首を傾げていると、タイミングよく等依が口を開く。


「空飛ちゃん激つよじゃ~ん! なしてEチームなんスか?」


 それを聞いた齋藤が呆れた声を出した。


「貴様ら……少しは互いに関心を持て! 全く! もういい。やめい!」


 ターゲットの射出が止まり、空飛が短刀をしまい、再度お辞儀をして下がった。


「最後は貴様だ。鬼神乙女(おにがみおとめ)、前へ出ろ」


「……ちっ」


 舌打ちをしながら前に出た鬼神を見て齋藤が右手を上げる。


「ターゲット、射出!」


 ターゲットが放たれた。だが、


「あっり~? 鬼神ちゃん攻撃体勢になってなくねースか?」


 等依の言う通り、鬼神は攻撃体勢に入っておらず、ただ立ち尽くしているだけだった。三人で首を傾げていると齋藤が叫ぶ。


「どうした? そのままでは実戦で確実に死ぬぞ!」


「るっせぇ! こっちだって好きで攻撃してねぇんじゃねぇんだよ! クソが! 百戦獄鬼(ひゃくせんごくき)! 百鬼(びゃっき)! 出て来いってんだよ! おい!」


 しかしなにも起こらず、ターゲットは無情にも鬼神めがけて飛んでいき光線を放つ。

 彼女は避け続けるしかなく、あっという間に時間が経ち、とうとう"百戦獄鬼"は現れないままだった。

 しばらくして、齋藤によりターゲットが止められた。


「……んだよ。なんか言えや!!」


 乱暴に吐き捨てながら戻ってきた鬼神に対し、五奇達はなにも言えずにいると、齋藤からこう言われた。


「貴様らで話し合え。いや、じっくりと互いを知れ! では部屋に戻るぞ!」


 ****


 部屋へ戻った四人は、齋藤から言われた通りに互いの話をすることにした。「部屋の外で待っている」と、言い残し齋藤が出たのを確認して、等依が口を開いた。


「じゃあオレちゃんからね~? オレちゃんは~式神しか使えないっス! で、何が問題かってーと。五奇ちゃんが使ってる退魔術式(たいまじゅつしき)ね? アレ、大元は()()()()()()()()()()


「えっ!? そ、そうなのか!?」


 思わず敬語が外れ、驚く五奇に等依は頷きながら話を続ける。


「そーなんスよ~! なんで、オレちゃん、本来な~らそれも使えないと、いっぱしの退魔師になれねーのね? だからEチームなわけ! オーケー?」


「お、おーけーって言われても……」


 動揺しすぎて言葉がうまく出てこない五奇に対し、どこか誤魔化すように等依が次を促した。


「ま、そーゆーことで……つっぎの人ー!」


 それを受けて、空飛が手を上げる。


「では、次は僕の話を聞いていただけますでしょうか?」


「おーけーっスよ! 空飛ちゃんよっろ~!」


「あ、えっと。うん、空飛君よろしくです」


 等依と五奇が答えると、空飛はお辞儀をし話始めた。


「僕は"半妖"なのでございますが、高位妖魔"黒曜(こくよう)"の転生体でございまして。その、真の力を発揮するには"黒曜"の力を宿さなければならないのでございます。ですが、黒曜の力は人の身に宿すにはあまりに強大でして……。お恥ずかしい限りなのですが、黒曜の力を解放してしまいますと、人格が黒曜に寄ってしまい制御出来なくなるのでございます。はい」


「えと、それってつまーり、暴走しちゃうってことっスか?」


「物凄く簡単に申し上げれば、そう言うことでございます」


「なんか……意外ですね。空飛君、そういう風に見えないのに……もしかして、制御できないのが理由で?」


 五奇が訊けば、空飛から小さく「はい」と返ってきた。その様子を見て、先程からずっと黙っていた鬼神がどこか含んだ声を出した。


「てめぇらは……俺様なんかよりマシってことかよ……ちっ! クソが! 俺様は、百戦獄鬼の力を()()()()()()()()()……笑いたきゃ笑えや!!」


 そう言った彼女の声は、震えていた。

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