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欠片

 鬼神(おにがみ)美珠(みしゅ)に向かって大声で叫ぶ。


「俺様にありったけの回復をかけろぉおおおおおおお!!」


 その声は届いたらしく、美珠の数珠が淡く輝く。


()の術式、肆銘(しめい)蒼の煌き(あおのきらめき)!」


 本来は癒しの術の最大級だが、今回ばかりは違う。鬼神の力を回復させていくにつれて、百戦獄鬼(ひゃくせんごくき)の身体が巨大化していく。


「なにが起こっているのだ!?」


 驚く灰児(はいじ)に、鬼神はが不敵な笑みを浮かべる。


「説明してる暇はねぇ! 避けてろ! うっかり……殺しちまっても知らねぇぞ!」


 大きくなった百戦獄鬼は、異形の怪物に向かって行く。突進と雷をまともに受けるが、美珠の回復のおかげでダメージはすぐにないに等しくなる。


百鬼(びゃっき)! このまま……殺してやれ」


【御意】


 内側から応える声がした気がして、鬼神の頬が自然と緩む。そうしている間にもぶつかり合う二体の怪物は、押し合い、互いに力をぶつけあっていた。


「いくぜ! 奥義! 阿修羅逆鱗斬(あしゅらげきりんざん)!」


 彼女の声のまま、百戦獄鬼が右腕を一瞬離して、刃へと形を変え、思い切り異形の怪物の脳天を貫いた。そして、


「爆ぜろ」


 その言葉で、一気に内側から破裂し怪物は木端微塵となった。あまりの事に言葉を失う美珠と、称える拍手を送る灰児に対し鬼神は無表情に天を仰いだ。


「これで満足かよ……藤波(ふじなみ)


 その声色はどこか沈んでいたが、普段の彼女をあまり知らない二人は察することができなかった。しばらくして、美珠に声をかける。


「おい、回復もういいぞ」


「あ、そ、そうでありんしな! 解除!」


 慌てて解除すると、美珠は疲れが来たのか座り込む。その様子を見て、灰児が顎に手をやり考え込む。


「うーむ、ここで少し休息するとしようか! 鬼神乙女も疲れただろうしな! うむ! そうしよう!」


 一人でまたしても結論づける彼に、反論する気力などなく。鬼神もその場に座り込んだ。その時、百戦獄鬼が何かを手にして彼女の元へと帰って来た。


「あ? んだこりゃあ……宝石、じゃねぇな。欠片?」


 困惑する彼女の内側から声が響く。


【主よ。これは鬼の欠片だ。いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 それだけ告げると、百戦獄鬼は鬼神の中へと戻って行った。


(鬼……いや、悪魔の欠片だと? 意味がわかんねぇんだが……)


 困惑する彼女は、だが、その欠片を捨てることなく丁寧にしまう。その光景は誰も見ていなかったようだった。というのも、灰児は周辺を見てくると言って出て行き、美珠は祓力の消費でぐったりしているからだ。

 かくいう鬼神も力を無理に使ったため休息は必要なので、少しだけ休むことにした。

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