読めたぞ
「黒き羽根の円舞!」
黒曜となった空飛が攻撃を放つ。その技は三つの尻尾に当たりこそしたが、すぐに再生されてしまった。
「くっ! まずいわね! ワタシの将鬼は大規模技しか……!」
柩の声に答えるかわりに、雅姫が人造妖魔・合成獣の懐に入り込む。
「火の術式、弐銘、紅蓮剛弾」
炎を纏った刃からの火球を放つ。だが、効かない。
「無駄よ無駄よ! あらゆる耐性をつけておるからのう! ふはははは!!」
高笑いする售月に向かって、黒曜が黒い蔦を無数に出して狙うが、どうしても合成獣に邪魔されてしまう。
「……なるほどな。読めたぞ」
しばらく攻防を繰り広げている間に、黒曜がボソリと呟いた。
「ちょっとどういうことかしら?」
柩が訊けば、黒曜が答えた。
「おそらく、この獣と售月は精神で繋げられておる。片方を倒そうとしても無意。ならば、方法は一つよ」
黒曜が何を言いたいのか察した柩と雅姫は、一旦退く。
「およ? もうしまいかのう。つまらん」
余裕な售月に対し、黒曜が告げる。
「つまらんのは貴様よ。みるに、使役する才覚はあっても戦闘の方はからっきしなのであろう? なればこそ、獣頼りの弱いモノよのう」
黒曜の挑発に、售月が屈辱とばかりに怒りをあらわにする。
「たかが転生体に! 言われとうないわ! 殺せ! 殺せぇ!」
そう叫び、黒曜へ合成獣の牙が集中した時を狙い雅姫が火の術式を放つ。
「弐銘、紅蓮剛弾」
三つの尻尾が切れたと同時に黒曜が自身の羽根で雅姫を抱えながら宙を舞う。そこへ無偶羅将鬼が前に出る。
「奥義、阿修羅光輪斬!」
光の輪が現れ、合成獣と售月を囲む。
「ふん。その程度予測していなかったとで、も……!?」
気づけば、頭上には黒曜が放った蔦に雅姫の火がこれでもかと燃え盛り、逃げ場を無くしていた。その事に售月が気づいた時には、光の輪に包まれ、床ごと亜空間へと飲まれていた。
「なっんだと!? これは! この術式は藤波のモノ! この售月には適用されておらぬ! あ、あ、あ、あ! 飲まれてしまう! 飲まれ……!」
最後まで聞こえる事なく、售月と合成獣は亜空間に飲まれた。それを確認すると、黒曜がたくさんの羽根を出して穴を塞いだ上で、手当たり次第の物で亜空間を封じた。
封印の術を使ったのは雅姫だった。本人曰く、「こっちの方が得意」らしい。
一通りの戦いを終えた三人は、息を整えると少し休憩を取り、この部屋を調べることにした。
「なにか……手がかりでもなんでもいいわ。なにか……なにか……」
ボソボソ呟きながら調べる柩とは反対側を調べていた黒曜から戻った空飛が、あるものを見つけた。
「これは……日記?」
三人は集まると、中身を確認し絶句した。そこには、虎雷雅達、孤児と妖魔との融合実験のことが書かれて……いたからだ。