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散りゆくは

「このまま、圧されてたまる、ものかぁ!」


 叫びながら両我(りょうが)が折り畳み式の警棒を取り出した。


「水の術式、参銘(さんめい)(あめ)(いざな)い!」


 周囲に幻惑の雨が降り、仁ノ緒の動きが鈍くなるのがわかった。どうやら幻覚耐性は低いらしい。


等依(とうい)天大路(てんおおじ)! 今の内に畳みかけるぞ!」


「言われなくても! (きん)術式(じゅつしき)、解放! 弐銘(にめい)覇斬牙(はざんが)投舞(とうぶ)!」


 麗奈(れいな)が舞いのような動きで回転しながら飛ぶ斬撃を放つ。回転するごとに威力を増していくこの技は、見事に仁ノ緒に命中した。そこへ等依の火雀応鬼(かがらのおうき)氷鶫轟鬼(ひとうのごうき)が畳みかけるように殴りつけ、地面に引き倒す。


「……行けますわ! このまま!!」


 麗奈が近寄った瞬間だった。等依の叫びが響く。


「麗奈ちゃん、危ない!」


 それは、こちらの油断を誘い確実に殺すための罠。内側に太い棘が刺さった花が現れ、麗奈を包み込もうとした時、誰かが彼女の背中を力強く押した。


 そして、包み込まれた彼の声にすらならない呻きとともに花が閉じ、消えた。


「りょ、両我ぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 両我が契約していた二体の鬼達の姿が崩れて行くのがわかる。状況をのみこめない麗奈とは対照的に、等依が今までにない怒りを見せた。


「よくも……私の兄弟を! 殺したなぁ!! 藤波ぃぃぃ! 火雀、氷鶫! 合身一体(ごうしんいったい)! 氷火(ひょうか)!!」


 あの演習場で琴依からもらったヒントで編み出した技、陰陽を極限まで近づける秘奥義、二体の鬼の合体を行うとそのまま、氷と火、両方を纏った剣を顕現させ仁ノ緒を真っ二つに斬り裂いた。


 一刀両断された仁ノ緒の身体が崩れて行く。それを見守ることなく、等依は両我が包まれた花を探し呼びかける。


「両我! 両我! 返事をしてくれ! 両我!」


 だが、反応は帰って来ない。そのかわりに周囲に消えかかった狼の姿をした雷狼応鬼と氷狼轟鬼が近寄ってきた。

 それを見て、流石に察した等依は力なくうなだれる。


「……等依、さん……。あ、あ、あぁぁぁぁ! わたくしは! わたくしはなんておろかな!」


 うろたえ涙する麗奈に対し、等依は静かに告げた。


「……現実っスよ……。これが……」


 そんな二人の周囲を二匹の狼達がゆっくりと行き来し、そして天へと昇って行った。間に淡い光を挟みながら。


 しばらく動けずにいる等依と麗奈の耳に、かき消えそうな声が響いてきた。


「……これで……終われます。……どうか……とめ……て」


 消え入りそうな声は仁ノ緒の声だ。その声からは先程までの敵意は感じられない。ただ……。


「終わりたかったら……勝手に一人で終われよ! 両我を奪ったお前を……赦すものか! 止める? いいや、壊してやるよ……藤波!」


 今までにないほどの怒りに支配されるのを感じながら、等依はどこか冷静な頭で考える。


(裏で何が起こっている?)

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