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仁ノ緒

「全く、まさか揃いも揃って蒼主院(そうじゅいん)の殿方とは!」


 文句を垂れる麗奈(れいな)に対し両我(りょうが)が反論する。


「なにか文句でもあるのか! むしろありがたく思え!」


 喧嘩腰の二人を見つめながら、等依(とうい)は周囲を警戒する。


「ここ……オレちゃん達だけみたいっスね……。どうするんスか?」


 訊けば、二人はしばらく睨み合った後……同時に前を歩き出した。


「あら? 奇遇ですこと。わたくしもそちらに向かう予定でしてよ?」


「奇遇だな(わたし)もだ。邪魔はするなよ、天大路(てんおおじ)!」


 どうやら二人で先導するつもりらしい。等依はため息を吐くと、後に続いた。


 ****


 しばらくして嫌な気配を感じ取り、両我、麗奈、等依の三人は同時に足を止めた。そこは開けた座敷のような空間で、そこに藤色の髪をした女性が座っていた。


「お待ちしておりました。蒼主院の方々、我が名は仁ノ緒(さとのお)と申します。藤波(ふじなみ)家の……次期当主でございます」


 そう告げて深々と頭を下げると、仁ノ緒はゆっくりと立ち上がり三人に視線をやる。


「それでは……殺し合いと、参りましょう……!」


 敵意を込めた声色で、仁ノ緒が縄を取り出した。その姿に三人は警戒心を跳ね上げる。


「我が身に宿すは……最強の妖魔の一角なりて! さぁ、身を振るわせなさい!」


 途端に彼女の姿が変わって行く。身体は倍以上になり、全身から(つた)と花が咲き乱れて宙に浮く。


「なっ!? 妖魔に転じたというのか!? そんなことが!?」


 驚愕する両我の横で、麗奈が鉄扇・白金猫(しろがねびょう)を構え、等依が鬼達を呼び出した。


「……っ! 来るっスよ、両我!」


「わ、わかっている! 鬼ども出ろ!」


 両我も雷狼応鬼(らいろうのおうき)氷狼轟鬼(ひろうのごうき)を呼び出し、戦闘体勢に入った。それを待っていたのか……仁ノ緒の攻撃が始まった。


「藤波流……大千本槍(だいせんぼんやり)!」


 彼女の後方に咲いていた花から、花弁が分離し、千に分裂してまさしく槍のように飛んできた。その威力は凄まじく、慌てて張った等依の防御結界をたやすく突き抜けてくるほどだった。


「がはっ!」


「等依! く、いい度胸だ……鬼ども! やれ! やれぇ!!」


 結界を破られたダメージをもろに受けた等依を支えながら、両我が指示を出す。


「……わたくしも行かせてもらいますわよ! (きん)術式(じゅつしき)、解放! 壱銘(いめい)斬葬(ざんそう)(らん)!」


 得意の技で仁ノ緒の懐めがけて攻撃を放つ麗奈だったが、その攻撃はたやすく弾かれた。そのスキを突いて、雷狼応鬼と氷狼轟鬼が仁ノ緒に同時に殴りかかる。


 だが。


「……ふふふ。ぬるい……ぬるいわ人間共! それで我らに……敵うものかぁ!!」


 仁ノ緒だった妖魔は、激しい攻撃を繰り返す。舞うように、花を咲かせては刃として飛ばしてくる。


 絶体絶命の危機だった。

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