3
「メリッサ。なんか顔色が悪いが、大丈夫か? 今日は早めに切り上げたらどうだ?」
陛下に気遣われてしまいました。
それもそのはず。3徹して布教用のBL小説を書いていたのです。
それなのに私の自信作は友達に酷評されました。批評も称賛も受けたことのないド素人が書いたこの世界には存在しないBL小説の第一号はこうして散々な評価を受けて、布教する前に自信喪失しそうです。
せっかく。
せっかく、寝る間も惜しんで書いた作品が・・・!
仕方ありません。前世で二次も一次も作ったことがなかったのですから。
こんなことなら、『小説家になりたい』に投稿しておけばよかった・・・!
BL歴10年の読み専に布教できる質のBLは早かったようです。
イケメンがチーレム野郎のような平凡顔なのを、どうにかもっと上に見えるように詳細な描写していても、微妙と言われる理不尽さ。確かに平凡顔(この世界のイケメン)たちが一緒にいても誰も腐った妄想するどころか、「〇〇様、カッコイイ~」「XX様、ステキ~」と目をハートにしている姿しか見かけません。
その上、同性が好きな男性と言えば、無駄に女子力の高いゴリラマッチョ。王宮ではオネエで有名な騎士のアリスン様しかおられません。
世の常識を上回るイケメンというものを書くのにも、BLらしい耽美な世界を描くにも私の力量では無理でした。
オネエゴリラ×オネエゴリラの恋愛小説に脳内変換されないように描くなど、プロの大御所BL作家にしか無理な話だったのでしょう。
「いえ、お気になさらないでください。ちょっとした私事があっただけです。引継ぎまで大丈夫ですから」
文章は駄目でも、イラストならオネエゴリラに脳内変換されれる危険もなくBLの素晴らしさが伝わるはず。
文章力は前世と変わらなかったようですが、美術2(10段階評価)だった私も転生チートで絵心は上がっています。
初めから布教イラストを書けばよかったのです。
「そうか? 無理するんじゃないぞ。――・・・・・・お~い。聞いてるのか?」