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第2話『テンプレートな異世界の街、すぐに滅びる説』

 前回話したテンプレ異世界街。何が良くないって、もう皆さん分かったんじゃないでしょうか。東京とニューヨークがどうのって言いましたもんね。


 あ、ちなみにアメリカはロスの方しか行ったことありません。悪しからず。


 まあ要するにですよ、街の景色ひとつとってもファンタジーにしろやっ!!!ってことですね、はい。


 テンプレ異世界街は弱いです。本当に。すぐになくなりますよあんなの。


 では単刀直入に、どんな街ならファンタジーなのか。


 それは、なんかすごいやつ!


 すんません。


 えーとですね、個性って言いましたよね。


 街も個性を見せろってことです。テンプレ異世界街は平地に城を囲んで家々があって、城壁に囲まれておしまいですね。


 僕の言っている異世界街は、例えば山!山の中腹にそびえる王城、そこから1本だけ伸びる石段、その下に広がる家。巨大な石の彫像や魔法陣を象ったものが浮かび、山は天然の橋で繋がっており、橋からは水が迸り街を潤している。


 どうですか!分かりますか?分かりますよね!?


 そう、ファンタジーとはこうあるべきですよ。みなさんもこんなファンタジーを夢見たことがあるでしょう。


 街の住人はいつか、その山を踏破し、英雄となるのを目論んでいたり、死んだ戦友を思って毎日城に向かって酒を掲げたり。王国魔導士団に入るために毎日山で修行したり。夜は空中に浮かぶ街頭だっていいでしょう。竜が飛んでたって、グリフィンに乗って移動したり。


 最近じゃそれすら少なくなって来ましたよ。


 移動は馬車のみ。似通った見た目の家に住んで、市民は夢すら見ずに淡々と暮らしていく。


 それはやっぱりファンタジーというよりも主人公や貴族に都合がいいだけの偽りの世界。そうは思いませんか。


 何かひとつ、自分の世界に加えてみてください。


 ツイッターにも載せた、自分なりの街と、テンプレ異世界街を比較してみましょうか。


 ◆


【きっと素晴らしいファンタジーの街】


 見るものを圧倒する岩山を背に、王城はそびえ立っている。門から伸びる石畳は、じきに石段となり、はるか谷底まで続く。城に寄り添うかのように家々が連なり、住人たちは仕事に勤しみながら空を見上げる。


 雑多な印象と、しかしそれでいて心惹かれる景色がそこにはあった。そして何より異質なのは……山を貫き天まで届く、巨大な剣だ。少し傾いで立っているその様は、剣というよりは最早地形そのものであった。かつて竜を滅したと言われるその刃に守られて、今日も城は立派にあった。


 夜には皆々家を出て、宙を揺蕩う光を見るのだ。酒を片手に語らうもよし、夢を目指して修行するもよし、この街には王都でありながら、そんな時間が流れている。


【テンプレ異世界街】


 遥かに続く大草原を、馬車に乗って駆け抜ける。背に積んだ乾草の甘い匂いと共に、王都への期待が高まってきた。


高く聳える城壁が、それを害するものを通すまいと立ちはだかって、見るものを圧倒する。街は綺麗に区画整理され、家家も立派だ。商店は賑わい、王都がいかに国の要なのかを理解させられる。王城は街の中心に座して、嘔吐の権威を示すのだ。


目指すギルドを目指す途中、小さな奴隷たちを見る。現在この世界では奴隷制度は当たり前なのだ。


人々は皆、自らの役目を終えれば酒場に出向き、酒を酌み交わす。いつの日か、自分の夢を叶えられると信じて。


 ◆


 はい、ということでした。ちなみに【きっと素晴らしいファンタジーの街】は僕の作品を少しいじって解説しやすくしたものになっております。


 どうでしょうか。【きっと素晴らしいファンタジーの街】と【テンプレ異世界街】、どちらの街に行きたいですか。もちろん下だって人もいるでしょう。そんな人たちは、もう読むのをやめろなんて言いませんよ。今後もこれを読んで、ぜひファンタジーの本当の面白さを知ってもらえたら嬉しいです。


【テンプレ異世界街】の文は本当によく見ますね。テンプレで書きやすいし想像もしやすいですしね。


 おっと、突き刺さる剣はよくみるって?いえいえ、それだけじゃあありませんとも。


 お約束とテンプレは違いますからね。お約束の剣は、背景までは同じではないでしょう?この文の剣の意味はですね、おっと、続きは今度あがる連載でどうぞ。


 でもテンプレートは、もうすでに作られているんですね。いい意味でお約束をなぞるのはいいことですが、テンプレに甘えるのは違います。


【きっと素晴らしいファンタジーの街】の方は、近年の王都と違いますよね。でも、これがもともと僕たちの夢見た異世界街なはずです。ファンタジーは奇想天外な発想と、魔法による神秘的な体験があってこそです。


【テンプレ異世界街】、市民たちは暇でしょうね。いや、暇ではないか。ずっと同じことをやる、いわばNPCです。


 え?主要キャラじゃないならNPCだ?


 それは違いますよ。だって、市民が生き生きしている街は自然と他の人間にも影響を及ぼすものです。景色だって、緑だって綺麗に見えます。そう言った場所であれば、市民を絡めたお話もいつでも作れますし、街のあちらこちらにドラマが生まれます。


 では、今即席で作ったお話をどうぞ。


 ◆


 酒場を出て、危ない石段を歩く。幸い歩行人の意図を汲んでか、明かりが漂い始めるので助かる。


 商人街を目指しつつ、灯篭の浮かぶ川を横目に歩いていると、少し先に見える橋に光が集まっていた。何事かと近寄ってみると、どうやら子供が倒れているようだ。


「大丈夫か!?」


 駆け寄ると、子供は寝ているだけだった。柔らかい風に包まれて髪が揺れている。穏やかな顔に、思わずこちらも顔が綻ぶ。


「子供はいいもんだな」


 その呟きを聞いてか、突然上体を起こす。こちらをみて、数秒静止、そして叫ぼうとするところを手を出して止める。


「待て待て待て、怪しいもんじゃねえ。冒険者だよ冒険者。坊主はなんでこんなとこにいたんだい?」


 子供はすぐに大人しくなり、自ら名乗った。


「僕は坊主じゃない!ちゃんとウィルって名前があるんだ」


「そうかそうか、すまんかったな。そんで、どうしたんだ。もう遅い時間だぞ」


 ウィルは強がるように胸を張り、宣言した。


「僕は1人で生きていくことにしたんだ。ママもパパもいっつも僕を子供扱いして、今日だって全く悪くないのに怒られたんだ。きっとピクシーの悪戯なのに」


 なるほどな。子供の頃は良くあることだ。俺も昔、家を飛び出して、ずるずるここまできちまったからな。


「そうか、坊主、それで家出したんだな。まあたしかにその気持ちは分かるぜ。面白い話をしてやろう」


「もう坊主でもいいや……それより面白い話って?」


 キラキラと輝く純粋な目だ。やっぱり子供はいい。


「よし、じゃあ腰かけようか」


 橋の下に2人で腰掛ける。輝く妖精に照らされた、水面が光を反射していた。幻想的とも取れるその光景に、ウィルは見とれる。


「おじさん、帰れって言わないの?」


「そりゃあ言うさ。暫くしたらな。でも今は話だ。あと俺はおじさんじゃねえ。お兄さんと呼ぶがいい!」


 ウィルに家出をした話、そのあとどうやって生きてきたかを話した。ウィルは揺蕩う光に目を向けながら、黙って話を聞いた。噛み締めるように、聞いた。


 泥を啜るような生活、汚いこともやった。それが今の俺を作っている。


「でもな、この世界は希望であふれている。今話したみたいな辛いことがあったときは、光を見ればいい。今も誘うように光るこの妖精たちは、いつでも暖かさを与えてくれるんだ。辛いことはたくさんある。耐えなくちゃならない。だから、坊主、お前さんも頑張るんだ。親の言うことは聞いて、いつか1人でやっていけるように修行する。15になったら家を飛び出せば、まだみぬ世界はそこにあるからな。坊主、上を向け。耐えて耐えて強くなって、責任を持てるようになったなら好きなことをすればいい」


「おじさん……」


「お兄さんだって。傷つくから。え、まって、30っておじさん?」


「うん」


「ま、マジかっ! ま、まあいい。お前さんも家に帰るんだ。しっかりした親がいるのは幸せなこった。子供を殺そうとする親なんてのもいるからな。俺の親もそうだった。だから、少年、高みを目指せ。抱いた夢を叶えられる、それがこの世界だ。さあいけ坊主、母さんと父さんが待ってるぞ」


「ぼ、僕も頑張ってみるよ。いつか絶対立派な冒険者になるんだ!」


「ああ。そのときは世話してやるよ」


 光の中を、一目散に駆けてゆく。


「やっぱり、子供ってのはいいな」


 ゆらりとなびく妖精の光は、心なしか同情するように男の前をチラつく。


 誰も知らない男の正体。妖精だけが知っているのだ。


 男はこの国の、元第6王子だった。


 ◆


 はい、こんな感じでどうでしょうか。


 男は母親を亡くし、王の父にも見放された元王子でした。


 このお話、これがただの平地の街、街頭に照らされた場所ならどうでしょうか。妖精も飛んではいませんし、橋の下なんて場所もありません。


 ただベンチに腰を下ろしているだけです。


 たしかに、いくらか綺麗なお話かもしれませんね。ですがどうでしょう、ウィルが15になって、この橋の下、男と再会したら。


 それはベンチで再会するより、よっぽど感動的ではありませんか。


 このように、街の一部はドラマに発展します。街のどこもかしこも同じ景色のテンプレ異世界街なら、どれも似たようなものになってしまいますね。


 ですから、異世界の街は独特でなくてはならないのです。


 独特で個性あふれる街であれば、その地形を生かしたエピソードなども入れやすく、他の作品と一線を画することができるんですね。ですから、皆さんも、ぜひ、独特な異世界街を創造してみてください!


 滅びるってなんのことかって?そりゃあ平地にある街ですからね。他国の魔法や魔物の大群によってすぐに滅びますとも。城壁だって魔法や破城槌で壊せますし?そうしたら街に火を放てばはい、終了です。


 個性あふれる街は少なくともすぐには滅びませんよ。山に囲まれて自然の要塞にもできますし、城への階段は1本なら食い止めるのも容易いですし。


 ですから、やっぱりテンプレ異世界街はすぐに滅びますよ。

今回はテンプレの街は滅びるってお話でした。わかりやすかったですかね。ともかく、俺たちの夢見たファンタジーはもっと奇抜だった!ってことですよね。


ということで、ブックマーク、☆☆☆☆☆に評価を入れていただけると幸いです!感想なども大喜びしますよ!取り上げて欲しい話などがあれば書き込んでくださいませ。それでは次話で!

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