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あれから4年が経ち、私は16歳になった。
カイと会えなくなってからも街には何度も行っていた。
しかし、なぜだか楽しいと感じることができなくなった。街のどこに行ってもカイとの楽しい思い出しかなかった。
気付けば行く回数が減っていた。
今日は王城で開かれるパーティー。
第一王子の成人を祝う席のため不参加は許されない。
ちなみにこの世界の成人は18歳。
朝からマイヤは張り切って準備をしている。
私のモットーは地味で平穏な生活…なので目立つようなことはしない。
ライラの顔は可愛い。小柄だしそれなりに胸もある。
前世の世界ならば間違いなく男が放っておかないだろう。
私は目立たないように地味なドレスを選ぶ。化粧は薄く、髪型も下ろして派手にはしない。あまり地味すぎても逆に目立つので中の下あたりを目標としている。
マイヤはがっかりしているが私は納得できる仕上がりだ。
「マイヤありがとうね」
「お嬢様…良いのですか?髪を上げて最先端のドレスを着れば今日のパーティーで一番の美女になりますのに…」
「良いの!目立って他のご令嬢の目に留まりたくないのよ」
マイヤは複雑そうな顔をしている。
「私の良さはあなたが知ってくれていれば十分よ」
「お嬢様…」
「さてと…行ってくるわね」
「行ってらっしゃいませ」
マイヤは笑顔で見送った。
王城へは馬車で両親と兄とで行く。
私の年齢であれば婚約者が居てエスコートをしてもらう令嬢が多いのだが、あいにくまだ婚約者はいない。
なので兄、アーロンにエスコートをしてもらう。
アーロンは20歳で結婚していてもおかしくはないのだが、堅物でこれまで浮いた話を聞いたことがない。
隔世遺伝なのか兄は高身長、騎士団勤めでモテないはずはないのだが…。
「ライラ…あなたもう少しどうにかならなかったの?」
私を上から下まで見たお母様に聞かれる。
「私にはこれが精一杯ですから」
はぁ…とため息が聞こえる。
同じ女としておしゃれに興味がない娘が信じられないのだろう。
「お兄様…私どこかおかしいですか?」
「いや、ライラは可愛い」
そう、アーロンはシスコンだ。重症ではないが今のところ妹が一番なので他の女性に興味を示さない。
私はそれを利用してこれまで縁談を断り続けてきた。というより兄に泣きついた。
貴族とは結婚したくない、平民として暮らしたい。
このまま縁談を断り続けて婚期を逃せば親も諦めるだろう。
どうせ家は兄が継ぐ。
因みにこの世界の婚期は18歳~22歳。男性はもう少し遅くても何も言われないが、女性は22歳を過ぎると市場価値がぐんと下がる。市場価値が下がり親も何も言わなったときを見計らい平民の彼氏を紹介→結婚が私の目標だ。
まぁまだ平民の彼氏もいないけど…。
そんなことを考えていると王城に着いてしまった。
(ああ…帰りたい)
華やかな世界を前にそんなことを考える。
「ライラ行こう」
アーロンがエスコートしてくれる。
「はい、お兄様」
会場に入るとすごい人だった。
「うわぁ…」
これまで片手で数えるほどしかパーティーに参加したことがないため、この規模に圧倒されてしまった。
(これなら壁の花になっても目立たなそうだ)
二人で何人かに挨拶をして回った後、兄はパーティーに参加していた騎士団の同僚の方たちと話を始めたので、邪魔にならないように飲み物を取って隅っこに移動した。
「ふぅ…」
到着してまだ一時間ほどしか経っていないが疲れてしまった。
(貴族のパーティーって何が楽しいのか分からない)
「ライラ」
名前を呼ばれて振り返ると私の数少ない友達がいた。
「ディルク様」
彼は読書仲間だ。
図書館でよく会っていたディルク。本の趣味が合うため、仲良くなった。
ディルクは兄と同い年で騎士団の同僚でもある。
騎士団に入るよりも私と知り合ったのが先だったので、アーロンがディルクを家に連れてきたときはお互いに驚いた。
「アーロンが居たから君も来てるだろうと思って探したんだ」
「そうですか」
「こんな隅っこで何してるんだ?」
「休憩です」
「早くない?」
「パーティーに不慣れなもので」
「はは…でもずっとここに居るわけにはいかないでしょ?」
ディルクが私の手を取った。
「お嬢様、私と一曲踊っていただけませんか?」
「…喜んで」
最低でも一曲は踊らないとお母様になにか言われるかもしれないと思っていたのでちょうどよかった。
踊るのは好きだ。
前世で踊っていたダンスとは違うものだが、音楽に合わせてステップを踏むのは楽しい。
「上手だね」
「ありがとうございます」
「…それにしても全体的に少し地味じゃない?」
「は?」
「えっ?」
思わず素が出てしまった…。
「ん…んん…もしかして私の格好のことですか?私は自分に似合っている装いだと思いますが」
「そうかぁ?なんかわざと地味な格好しているように見えるんだよな」
「そんなことありませんわ」
ライラは内心焦った。
(普段会うときにも地味な格好をしているのに、…まさかこいつに怪しまれるとは思っていなかった)
そうこうしているうちにあっという間に一曲終わってしまった。
「楽しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそ」
挨拶を終え再び壁の花になろうとしたとき
"国王ご夫妻並びに王子殿下のご入場です"
と会場内に声が響いた。
成人していない私が王族に会うことはほぼない。
まぁ伯爵家だとなかなかお目にかかれない人たちだ。
興味がないと言っては不敬にあたるかもしれないが事実…。せっかく来たのだからとチラッとだけ姿を見て移動しようとした。
その時一人の人に目が留まった。




