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ディルクに連れてこられたのは学校の応接間だった。
「殿下がもう少ししたら来られると思うから、そこの椅子に掛けて待ってくれ」
「…はい」
「にしてもライラは殿下と知り合いだったのか?」
ディルクは扉近くの壁にもたれながら聞いてきた。
「知り合いではありません」
"ふーん"と聞いておきながらあまり興味のなさそうな返事が返ってきた。
「そういえばこの前出版された・・・・」
ディルクは本の話題を持ち出し、2人はなかなか姿を現さないクリスを待ちながら話に花を咲かせた。
「すまない、遅くなった」
突然扉を開けて入ってきたクリスに驚き、ライラは慌てて立ち上がり一礼をした。
「ずいぶんと楽しそうに話をしているな?2人は知り合いか?」
そう尋ねるクリスの声は少し低く、機嫌が悪いように思えた。何より笑顔のはずなのに目が笑っていない。
クリスの様子に2人は顔を見合わせた。
「実は私とライラは10年ほど前から知り合いでして」
「10年も前から?」
「はい。図書館で出会い、お互いに本の趣味が合いまして…」
「…そうか」
クリスはチラリとライラのほうを見る。
(何?)
「ディルク、すまないが席を外してくれ」
「はっ」
応接間にはクリスとクリスの補佐官トマスとライラの3人になった。
ライラは黙り込んでいた。
(話があるなら早くしてよ)
「…今日は静かなんだな」
「…えっ?」
「いや…なんでもない」
「それより、また会ったね」
(は?)
きっと今めちゃくちゃイラっとした顔をしてるだろう。
「クリス様、これは会ったのはなく強制的に会わされたの間違いでは?」
「そんなことはないぞ、たまたま講演に訪れた学校に君がいたんだ。そして君の顔を知ってる護衛にもし見かけて君の都合さえよければ連れてきてくれとお願いしたんだ」
「だから決して強制ではない」
にっこり笑うクリスとは対照的にライラの表情は暗くなっていく。
(そもそも王都の学校はここしかないし、王子殿下に言われたら命令じゃないのよ)
「それで何かご用ですか?私、授業があるのですが」
「あぁ、すまない。足の具合が気になってね。どうだ?調子は?」
呼び出された理由が足のことだとは思わず、拍子抜けした。
「…先日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。私の足を気にかけてくださりありがとうございます。王城の薬がよく効いたようですっかり良くなりました」
なーんだ…と一安心したライラ。
「そうか。それは良かった」
「それはそうと…今度ぜひ君のお勧めの本を教えてくれないか?」
(………)
安心しきっていたライラは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
「君も忙しいだろうからな。今度の休みで構わない。王城の図書館に一緒に行こう」
「詳しいことはまた連絡する。ではこれで」
ライラに有無を言わさない早さでクリスは去って行った。




