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プロローグ9 現実世界の校内大会予選

現実世界に戻しました。



真っ白な天井、俺は意識を取り戻しゆっくり眼を開けた。辺りを見回してみる…

どうやら病院のベッドに寝ている様だった。


(ここ…何処だろう…)


起き上がると、頭が痛んだ。

頭に手をやると包帯が巻かれている、体もあちこち痛みがある。


(…怪我してる?けど…なんで?確か…遺跡で石櫃に触れて…)


全く状況が理解出来ない。


(先生、コレってどう言う事すか?)


返事が無い…と言うより居ない?!


先生(リューヴェルド)!)


何の返事も無い…

やはり、俺の中に居ない…感じられない。

ベッドから出て鏡を見てみると包帯があちこちに巻いてあり、頭の包帯には血が滲んでいる。


「血…」


(コレって…?俺の身体って擬似肉体だよ…な)


部屋の扉が開いたので、其方を振り向く。

入って来た看護師と目が合った。


「キャァーーッ?!

医師(先生)、た、大変です!患者さんが!」



俺はベッドに戻され、直ぐに医者が走って来る。

俺を見るなり眼を丸くする。


「生き返った?!ここに運ばれて来た時はもう心臓は止まっていたのに…蘇生するなんて…」


「怜?!」


よく知ってる声、

「…母さん。」


駆け寄って来る母親の背後には真也と彩芽が立っていた。

皆、泣き腫らした顔をしている。


「良かった…怜。」

「何やってんのよ、心配させないでよ!」

もう一人、俺が助けた娘も泣きじゃくりながら一番後ろにいた。



どうやら俺は、トラックに跳ねられ病院に運ばれてる時に心臓が止まって死んでたらしい…

処置室で、蘇生術をしたが無理だったそうだ。

外で待っていた遺族に話をし終わって看護師が入って来たら生き返ってたって…


その後、

医者も驚く回復力で完治したらしく、3日後には退院出来た。

家に帰って自分のベッドに横になった。

かなり懐かしい気がしたが、まだ4日しか経ってないんだよな…


(アレは夢だったんだろうか…)

腕を上げて自分の手を見る。

(…リアルな夢だったなぁ、今でも先生(リューヴェルド)の声が聴こえそうだ。)


机の上にSG(端末ユニット)が置いてある。

ベッドから降りて机のSGに手を伸ばす。


「久々にサーフしてみるかな。」


SG(端末ユニット)を顔に装着する。

右耳辺りにある起動スイッチを入れると、目の前の画面にグラフが表れる。

起動するとVR-EXの世界へ入る為に互換神経への接続が行われる。

これは、人体に影響が出ない様に超微弱な電磁パルスにより五感を錯覚させる。同調率は90%に設定してある。

グラフが、オールグリーンになる。


機械音声が聞こえる。

同調(シンクロ)完了しました。これより、リンクスタートします。」


景色が変化して行く。

黒い鎧のアバターがゆっくり回転している。

左上にアバター名が表示されている。


キャラネーム:ZERO


目の前に仮想端末を出し、装備を設定する。


(さて、久し振りだから慣らしてみようかな。)


仮想端末を操作して、トライアルバトルフィールドにアクセスした。

また、景色が変化して行く。



広大な仮想現実世界の、高層ビル群。

その中でも一番高い建設中のビルの屋上に【黒い鎧の戦士】が光線剣(ビームソード)を右手に持ち、現れる。


(なんか、懐かしいなこの身体の感覚…)


左手を握ってみる。

右手の剣を振ってみる。


(…)

回転しながら剣舞する。


(前からこんなに動けてたかな…?

これで先生(リューヴェルド)が居たら、夢のまま…)


『呼んだか?』


(?!)


『…何を驚いている?』


(エッ?あ、あれェ?!これなに?えっと…)

思考回路がショートした。


『…無理もないか、それでは説明してやろう。』

先生が説明してくれた。


異世界から聖櫃転移門により、誤って元の世界に転移してしまった。


(これは、覚えている…)


何の手順も踏まず適当に転移した為、問題だらけになったようだ。


融合していた魂が2つに分かれ、一つは俺の元の肉体に戻り、先生の方はこの世界に閉じ込められた。


異世界で使っていた肉体は、元々仮想現実世界のアバターだったので、其処へ転移されたようだ。

仮想現実世界にリンクしていない状態で戻った事で、俺の意識()がサーバーから弾かれ元の肉体に戻った様だ。


先生(リューヴェルド)、向こうでは一年位経ってたんすけど、こっちは数日しか経過してないんす…)


俺の疑問を聞いてみた。


『【転移】とは、肉体や魂を他次元や時空を越えて移動する事じゃからな、主の残留思念が強く残っている時空間と場所へ導かれたのであろうな。』


(成る程…)


『この世界に【転移】したという事は、この世界の何処かに()()()があるという事なんだが…』


(…って事は、またあの世界に行けるんすか?!)


『門が見つかればな…この世界では、我の力が余り及ばぬのじゃ。探すのに、少し刻が要る。それにしても此処はどんな世界なのじゃ?』


(…先生の力が、及ばないって…)

仮想現実世界だからかな?


(此処は【体験型仮想現実世界(VR-EX)】って言う…プログラムによって造られた多重擬似世界みたいなトコっす。)


『…成る程、主等が創り出した数多の世界が存在する空間という事か…〈世界創造〉は我が技の一端、それを使う事が出来るとは、【人】とは無限の可能性を秘めておるのかも知れんな…』


(…先生(リューヴェルド)て、自分の事を高次元生命体って言ってたすよね?)


『何度も話しておる、我は原初にして最古の高次元生命体である。この世の全てを創り出したのは、我じゃと。』


また妄想癖が、始まったな…先生(リューヴェルド)が凄い方なのは分かるんだけど、俺の【魂の半身】という時点で眉ツバなんだよなぁ。


(それよりも、先生の力が及ばないって言ってましたけど、それって…)


『この世界では、我の力に制限が掛かっておる様じゃ。【森羅の智慧】などは問題なく使えるがの。』


(そうなんだ…先生の力が未だに良く解らないんだけど…

それに来週から大会もあるし…あっそうだ!)


『どうしたのじゃ?』


先生(リューヴェルド)、俺に先生の力の使い方を教えてくれませんか?)


『?、教えずともいつでも使える筈じゃが?

主は【魂の半身()】に聞くだけで良いのじゃが?

そうすれば、【森羅の智慧】が主に最善の方法を選択し、イメージを具現化してくれる。』


(イメージを具現化?)


『試しに何か、やりたい事を【魂】に語り掛けてみよ。』


俺は…〈飛びたい〉


次の瞬間、背中に漆黒の翼が生えて空に舞った。


(うぉっ!凄い…な、願うだけで良いのか…)


『其れが、我が力の使い方じゃ。じゃが、使えるだけでは駄目だ、使いこなせる様に鍛錬するんじゃな。』


(努力して、熟練度を上げないといかんのね…

あとは、現在のところ自分の上限がどの位か知っとかないとっすね。)


俺は魂に聞いてみた、

俺が今持っている最大火力は…

左手の平に1cmの黒い球体が、現れる。


(…小さ過ぎじゃ…(・・;)

一応、真下のビル群に向かって投げてみる。

球がビルに接触した、が何も起こらず…


(ちょっとは、期待していたのに…( ̄▽ ̄;)

次の瞬間、直径5kmにも達する巨大な球体に膨れ上がり、ビル群を包み込んだ!


(!)

一瞬で、黒い巨大球体は収束して消滅した。

その跡は…

半円形に消滅した大地、ビル群は跡形もなく消失していた。


(これって…核兵器並みじゃ…)


俺は閉口した。

威力が桁違い過ぎる…


(…こんなの使ったら反則だな…)


『何じゃ、その程度しか出来んのか?

我が【魂の半身】にしては情け無いのぉ、しっかり修練する事じゃな。』


(まじか…これの本来の威力って一体…)



その光景と先生の発言に疲れたので、先生(リューヴェルド)体験型仮想現実世界(VR-EX)の利用方法を一通り説明してから、現実世界に戻った。




数日休んだ学校へ普段通り登校する。

俺からすると1年間来ていなかったので、かなり懐かしい感じなんだけどね…


校門に人集りが出来ている、


(あれ、何だろう?)

人集りに近寄って行くと幼馴染の真也と彩芽が俺を見つけて駆け寄って来た。


「体良くなったんだな、怜。全く心配させんなよ…

まぁ、何にしろ無事で良かった。」

肩を叩いてくる親友。


「怜が、あの娘を助けに飛び出した時は驚いたけど。

逆にアンタが轢かれるって、有り得ないわ!

後先考えないで行動するのはアンタらしいけどね。」


褒めてはないな…彩芽も相変わらずだな。


「はいはい、そんであの人集りは何?なんかやってんの。」

人集りの方を見て聞いてみる、


「それがさぁ、何人かの生徒が生徒会の人に文句言って騒いでるみたいなんだけど、人多くてみえないのよ。」


「ふ〜ん?」


「今日から校内予選始まるから皆ピリピリしてるんだと思う。」


「大会が異種格闘技戦だから、私は諦めてるけどねぇ。」

人集りを避けて教室に辿り着いた。

校庭でも廊下でも生徒達の話は、大会の話題で持ちきりだった。


全国生徒会連盟の主催で行われるこの大会は〈トップオブトップ(TOT)〉と呼ばれる、何でも有りの戦闘スタイルだ。

使用されるのは、IDとして造られているノーマルアバター。設定や改造は自由に出来るし、装備や武器も使える。更に、課金した物でも使用可なのだ。


俺はいつも校内で10位程度なんだけど、真也は前回3位にランクインしている…彩芽はランク外だな。



大会の開会式に講堂に集められた300人の全校生徒達。

講堂内は騒ついている。


生徒会役員達7人が壇上に上がって来た、


「それでは、これより開会式を始めます。」

教頭先生の司会だった。


「まず、初めに生徒会長から挨拶。」


壇上に据付られている、答弁台に歩ん出来た綺麗な女子生徒。

明るく綺麗な栗色の髪が背中まで伸び、ピンと張った背筋に、端整な顔立ち。かなりの美人である。


「今紹介を受けた生徒会長の藍田 香織です。」

ソプラノの美しい声音で話し出した。

会場が、静まり返る。


「挨拶の前に少し話があります。

貴方達の中に我が生徒会に不信感を持っている方がいらっしゃる様です。」


会場が騒つく。


「私達が使用しているアバターに不正が有るのではと言う指摘がありました。」


(…今朝の人集りだな。)

と俺は思い付いた。


「そこで、我々のデータを開示する事にしました。」

生徒会長(藍田 香織)が宣言する。


「!」

会場にどよめきが起こる。


アバターのデータは秘匿するものであり、他人に知られるなんて有り得ない事である。

データが露見すれば、対策を事前に講じられ大会で勝つ事など出来はしない。

それが分かっていて開示するなんて、自殺行為も甚だしい。


壇上のバックスクリーンが下りて来て、画像が映し出される。生徒会役員7人のデータが全て載っている。

しかし、ステータスも装備や武器も至って平凡な感じだし、スキルも目新しい物は無かった。


「これが、私達のデータです。今日からの予選はこれらのアバターで参戦します。

これだけでは、データを改ざんしていると思われるかもしれないので、戦闘前に今一度対戦する相手に開示する事をお約束します。」


(そこまでするのか…て事は嘘偽りは無いって考えた方がいいな。)


「それでは、トーナメント表を発表します!」

バックスクリーンの画像が切り替わる、全校生徒の名前が書かれているトーナメント表が、映し出される。


「トーナメント表のデータは、皆さんの端末ユニット(SG)に送っています。対戦時間の10分前迄には、仮想現実(VR)教室でスタンバイして下さい。」


「それでは、ここに開会を宣言致します。」


高らかに宣言する生徒会長(藍田 香織)

そして会場中から歓声が上がった。



トーナメントは、20分の制限時間内で行われ戦闘不能になるか、降伏を宣言する事で勝敗を決する。

時間内に決着がつかない場合は、HPやMPの残量で決まる。

1回戦は、2日間行われ、2回戦からは1日で終わる。

4日目が、終わった段階でベスト10が残った。

俺も、真也も残っていたが、生徒会長以下6名全員残っている。

最後の一人は…俺が助けた女子生徒だった。


名前は、桐島 莉奈(17)

2ヶ月前に隣のクラスに転校して来たらしい。

余り目立たない娘だったので、ウチのクラスは知らない奴が多かった。

艶のある黒髪で肩までのショートカット赤い縁の眼鏡を掛けている。


週末は安息日になっているので、次の試合は来週行われる。


食堂で昼食していると、


「あの…此処良いですか?」

前の席で、桐島 莉奈が話し掛けて来た。


「ん?あぁ、空いてるよ。」

俺は気にせず席を勧めた。


「ありがとうございます。」

そう言うとその席に座る


「あ…あのぉ…、ちゃんと御礼もして無くて…」


「気にし無くて良いよ、無事で良かったじゃん。」

飯を頬張りながら話す。


「いいえ、本当に有難うございました!」

深々と頭を下げている。


「そう言えば、自己紹介も中途半端だったな、

俺は、御上 怜。よろしくな。」


手を差し出す。


「わ、私は、桐島 莉奈です。」

差し出された手を握り返しながら答える。


「桐島さん、それにしてもベスト10に残るって、凄く強いんだな。」


「そんな…私なんて全然大した事無いんです…それより御上君の方が凄いと思います!あの黒いアバターカッコいいです。」


「ほ、褒めてくれてありがとう。あのさぁ、俺の事は怜って呼んで、堅苦しいの嫌いなんだよ。」


「あ、はい。じゃあ私も莉奈って呼んでください。」


「OK、莉奈ね。」


その時、真也が彩芽とやって来た。

「怜、早いなもう食い終わったのかよ。」


「アンタ相変わらず、食い意地が張ってるわねー。そんなんじゃ、女の子にモテない…あれ?あなた…」

彩芽が莉奈に気付いた。


「あぁ、彼女は、隣のクラスの桐島莉奈さん。」


「アンタが助けた娘でしょ?知ってるわよ。

それよりアンタ、まさかナンパとかしてたんじゃ…」


「は?あ、いや…そんな訳ないだろ!」

別に怪しい気持ちは無かったのに狼狽えてしまった。


「怪しいわねー、桐島さん気をつけるのよ!こんなのに引っ掛かったら、一生台無しよ!」


酷い言われようだな…


「怜君はそんな人では…」

顔が紅くなって俯向く、莉奈。


「怜君?…ふ〜ん。」

彩芽が、変な目つきで俺を見ている。


「桐島さんのアバターって、エルフの戦士だっけ?」

真也が話を変えてくれた。


(ナイス、真也。)


「あ、はい。設定をエルフにしてますね。」


「戦い方見たけど、君強いね…生徒会長クラスの強さはあると思う…君と当たるのが楽しみだよ。」


「私も楽しみにしてます。

私、ソロソロ行かないと…お話し出来て良かったです。」


お辞儀して、立ち去って行く莉奈の後姿を見送る。




翌日、

授業と大会は休みなので、勝ち残っている生徒用に仮想現実(VR)教室が開放されている。

生徒会がアバターの調整や戦闘訓練出来る様に、学校側へ交渉してくれた様だ。


俺は真也を誘って学校へ来ていた。


「なぁ、怜。」


「何だ、真也?」

仮想現実(VR)教室でアバターの調整をしていると真也が話し掛けてきた。


「事故の後から、怜の戦い方変わってないか?なんか動きが、生徒会の連中に似てるって言うか…あの桐島さんもそうなんだけどさ…」


(…流石、幼馴染だな。真也には、俺に起こったことを話したかったが、多分信じてはくれないだろうなぁ…)


「…多分、同調率が違うんだよ。あの事故の後から同調率は200%超えてる…んだ。」


「なっ?!…200%?…まさか、そんな…いや、だからあんな動きができるのか…」


真也は妙に納得した様だ、何かを考え込んでいる。


(…これ以上は話せないよな…)

親友に隠し事をしている…心が痛い。


「なぁ、怜。色々試したいんだけど練習台になってくれ。同調率(シンクロ)200%のお前に勝たないと生徒会の連中には、到底勝てないからな。全力で頼むよ!」


アバターの最終調整が終わったらしい。


「ん、あぁ、良いぜ。いつでもかかって来なさい!」




今回練習に選んだフィールドはエジプトの遺跡。

俺の出現ポイントは、スフィンクスの頭の上だった。

ZEROの鎧は軽くしてある、

真也のアバター:シュラは遠距離が得意だからなぁ。


『…何をしておる?…また、戦闘か?』


(先生、これ模擬戦なんすよ。)


『ふむ、修練と言う事か…それで、相手は強いのか?』


(俺のライバルみたいな感じっすね。)


『…好敵手(ライバル)


ピラミッドの上に光が煌めいた…

俺は、反射的に横に跳ぶ。その瞬間、俺がさっきまでいた所に弾丸が着弾した。


(危ねェ…真也の奴どんだけ練習してやがんだ?)


スフィンクスから離れ、石が積んである陰に潜み、

俺はバレットM82を構える。

アメリカ軍最強のアンチ・マテリアルライフル。

1マイル先の装甲車も撃ち抜く精度と破壊力がある。


スコープ越しにピラミッドの頂上にいる蒼い鎧のシュラを見つけ、照準を併せて引き金を引く。


撃ち出した反動が伝わり数秒後ピラミッドの頂上付近が吹き飛ぶ。


立て続けに撃ちまくる、ピラミッドが破壊されていくが、シュラを捉える事は出来ない。


(ちっ!)


俺はバレットM82を捨て、UZIサブマシンガンを持ち走り出す。

走っている間、正確に狙撃され続けたが狙撃位置からの距離と狙撃音で弾道を予測して避ける。

同調率(シンクロ)200%だからこそ出来る芸当だ。


「…この間は、全部命中したのに…此れが同調率(シンクロ)の違い…なのか。」

驚きつつも移動を始める。

近接戦闘になることを予測しつつ、背中のバックパックからFN F2000(アサルトライフル)を取り出しながら走る。

推進装置をフル稼働させて走り抜けて行く。

採掘場に辿り着いた時、ZEROが既に到着していると判断し、重機の陰に陣取る。


小屋の陰からこちらに向かって放たれた弾丸が無数に重機に当たり続ける、推進装置をフル回転させて飛び上がる、小屋陰に隠れるZEROは…そこには居なかった!


「!」


さらに上空に漆黒の翼を羽ばたかせてZEROがUZIを構えている。

UZIが火を噴く。

無数の弾丸が迫りくる。


ドクンッ!


無数の弾丸を避けきるシュラ。

その動きはZEROと同じに見えた。

着地と同時にFN F2000をZEROに向けて引き金を引く、がZEROの姿は掻き消えた、と同時に背後から蜂の巣にされた。

シュラが霧散して消える。


【Your Wins】


そこにZEROが立っていた。


『…あの者の波動は…まさか…な」




仮想空間接続ポッドから起き上がる真也、

「…強いな、怜。」


怜も少し遅れて起き上がる。

「真也の最後の動きも凄くなかったか?同調率が跳ね上がってたみたいだけど…」


「…どうだろう。あとで解析してみるよ、練習付き合ってくれてありがとな、怜。」

そう言って重い足取りで真也は教室を出て行った。


「…真也。」




翌日、真也は学校に来なかった…



4回戦の相手は生徒会の風祭 俊一(17)、獣人タイプのアバターを使っている。



フィールドは〈草原〉

遮蔽物のない草原では何の策も使えない為、己が肉体の力のみを行使して勝ち抜ける。


獣人が吼える。

〈ハウリング〉威嚇のスキル。


「我が名はゾイル。推して参る!」

魔方陣が、獣人の足元に現れると身体能力が格段に向上して行く。

短距離走の、スターティングポーズのように身を屈めて力を溜める。



俺は自然体のまま何も構えをとらない。


「ガアァッ!」


獣人(ゾイル)は、溜めきった力を超身体能力に乗せて足の裏で爆発させる。

瞬間移動と見間違える程の速さで、瞬時に俺の横迄移動して見せ、勢いの乗った右拳が音を立てて俺の横腹に叩き込まれ…なかった。

俺は、剛拳を軽く右手で受け流す、続けて数十発の拳が唸って襲って来たがそれも悉く受け流して見せた。


「中々やるな、ならばこれはどうだ!」

そう言うと、バク転しながら少し間合いを取った。

右腰元で右手を握り込み気を溜め込み始める。左手は軽く握り俺の方に向けると、赤い魔方陣が現れる。

魔方陣を天へ振り上げ、


【ブラッディ・レイン】


赤い光の槍が無数に俺を襲う。

しかし、そこには俺の姿は無く、獣人(ゾイル)の背後に回り込んだが、それを予想していたように、


「こっちだろ!」


右拳に込めた気を俺に叩きつける。

遥か後方へ吹き飛ばされ、地に手を着かされる。間髪入れず追掛けて来た獣人(ゾイル)の鋭い爪の手刀が襲ってくる。

躱しきれず、何発も貰って行く。


『…何をやっておるのじゃ?主らしくないのぉ。集中力が無い様じゃが…』


(…真也が、気掛りなんすよ、あいつ今日学校来てないし…)


鋭い鉤爪が腹部に深々と突き刺さる。


(…この前の練習の時、あいつの様子が変だったんす。)


『…今は気にしても仕方が無かろう。まずは目の前の敵を倒す事だけを考えよ、それからその真也とやらと話せばよかろう。』


(…そうですよね、んじゃ、サクッと終わらせますか!)


鉤爪を腹部から抜き去り、背中のバックパックから小剣を抜く。


(俺気付いたんですけど、異世界で覚えたことってこっちでも使えるんすね。)


『…主が経験したり学んだことは【魂】に刻まれるのじゃから当たり前のことであろう?

それも解っておらなんだとは…』


(あはは…)


「そろそろ、終わらせるぜ。俺の最大の技を食らわせてやる!」

両手両足に魔方陣が現れる。


「そんなの使わせるわけないだろ?隙だらけだし。」

俺は獣人(ゾイル)の耳元に話し掛け、


「なっ?!」


次の瞬間、獣人の首は刎ねられていた。










ゴールデンウィークに入ったんでしばらく連載できないかもです。

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