プロローグ21 協力者
魔物の国はもう少し後で描きます。
今回からは王都での生活基盤を作らないと!
遺跡の砦から半日程山を下りた所で本隊に合流した。
ベクトール伯爵に暗黒魔王が現れた事、不戦条約の件、そして騎士長2人が討ち死にした事を報告した。
ある程度は、先に逃げ出した騎士達が報告していた様で、
騎士長2人の死以外は、伯爵も然程驚いてはいなかった。
既に王都へは暗黒魔王出現の伝令を走らせていた様だった。
サーシャ副隊長も急ぎ王都へ戻り、報告しなくてはならない。
山脈の中腹まで到達していた討伐隊は、町まで戻って待機する事になり、魔物達の砦への進軍は中止となった。
翌朝、
王都へ帰還した俺達は、寄宿舎で待機していた。
サーシャ副隊長とルーレシア副官は、グラムノーツ隊長へ報告に行ったが、事が余りにも重大過ぎた為、国王への謁見を求め、慌ただしく出かけて行った。
ルーレシア副官に、帰って休息をとる様に言い渡されたので、皆自宅に戻る。
俺は、居候している〈聖夜の雪亭〉に戻る前にセルフュリアの屋敷に向かう事にした。
『あのエルフの娘に逢いに行くのかの?』
(えぇ、ちょっと寄って行きます。
剣の使い方を教えて貰ったお礼も言いたいし、それに…)
『…協力者として依頼に行くのじゃろう?この王都に居る知り合いで魔物に近しい者は彼奴とドワーフの男位じゃからな。』
(明日は、ドワルドのおっちゃんとこにも行くつもりっすよ。)
『それにしても主が、魔物達の王になろうとはな…』
(…成りたくてなった訳じゃ無いんすけどね。)
『じゃが此れからどうするつもりじゃ?魔物の世界で王になるのならば、人の世界には干渉せぬ方が良いのでは無いのかのぉ?』
(…そういう訳にもいかないんすよ。異世界には、真也を探しに戻って……あれ?!)
『どうしたのじゃ?』
(真也が、〈召喚〉されたのって俺が向こうの世界に戻って1週間位経ってから…でしたよね…)
『そうじゃな…それに主が此方に戻る際、時空間転移したので、この世界ではまだ3日しか経っておらん事になるのぉ…』
(…となると…真也はまだ【召喚】されてない?)
『そうなるのぉ…然も何処に召喚されるかも分からんのでは、探し出すのは至難の技じゃよ。』
(…(T ^ T))
そうこう話している間に、セルフュリアの屋敷の前に到着した。
先生との話は中断し、屋敷の門を抜け建物に向かうと、
セルフュリアや御付きの従者が全員で出迎えに来ていた。
(あれ?なんで来るのわかったのかな?)
「お待ちして居りました、御主人様。」
セルフュリアはドレスを摘み優雅に会釈する。
「連絡もして無かったのに、如何して俺が来ると思ったの?」
「先刻、御方様が、王都へお戻りになられたのは直ぐに分かりました。
お逢いしていないこの数日で、御方様の御霊が以前とは比べられぬ程に輝きを放っておられます。
もはや王都の何処にいても気付かぬものなど居りますまい。」
「な…成る程…御霊って輝いているのね…」
(…って、それ不味くね…先生何とかならないんすか?)
『此ればかりは無理じゃな、魂の力は隠しようが無い。
じゃが、気付く者はエルフや魔物の様に永き時を生きる者達だけじゃろうから、余り気にする必要は無いはずじゃ。』
(…なら良いんですけど。)
「この様な処で長話も失礼になりますので、中の方へお越し下さいませ。」
セルフュリアに促され大食堂へ通された。
執事のミランジュさんが、メイドさん達に指示を出し何やら用意させている。
ミランジュさんが此方に歩いて来て一礼する。
「御方様、長旅でお疲れでしょう。只今、湯浴みの準備をさせておりますので、暫くお待ち下さい。」
「やったぁ!此処のお湯は疲れが取れるんだよねぇ。」
「御方様に御喜び頂けるのは幸い、当家の主人には何よりの褒美でございます。」
ミランジュさんは、笑顔で一礼する。
「あぁ、そうだ。ミランジュさんに教えて貰った剣技で何度も救われました。本当に有難うございます!」
これまで色々な場面で助けられたエルフの剣技は、剣聖と呼ばれるミランジュさんに教えて貰ったものだった。
ミランジュさんは、超驚いて目を丸くする。
まさか、俺が御礼を言うとは思っていなかったのだろう。
(…そこまで驚かなくても( ̄▽ ̄;))
「勿体無きお言葉、不遜ながら御教授させて頂いた我が剣がお役に立てたのならこの上ない喜びで御座います。」
ミランジュさんが、深々と頭を下げる。
「良かったわね、ミランジュ。御方様に御礼を言われるなんて、子々孫々に至るまで語り継げることですよ。」
いつの間にか現れたセルフュリアは、ミランジュの側迄歩いて行き肩を叩く。
(いや…そこまでですか?大体、俺ってどんな人なんだよ…
ちょっと聞いてみようかな…前にも聞いた気はするけど…)
「ちょっと聞いてもいいかなぁ…セルフュリアさん達から見て俺ってどんな奴なんでしょう?」
少ぉ~し、不安になったので聞いてみた。
(…確か前は創世のどうのこうのって…意味不明であんまり聞いてなかったんだよな…)
「恐れながら申し上げます。
少し話は長くなりますが、我等が伝承に記されている最初から御話致します。
世界が誕生する遥か昔、まだ暗く虚無しか存在しなかった頃、世界に〈漆黒の意思〉が生誕されました。数千数万数億年の時が流れ、その〈漆黒の意思)は命を持ち、それは原初にして最初の高次元生命体=神となられたのです。
創世の時代、原初にして最古の神は、様々なものを創造なさいました。
世界に光・闇・地・水・火・風・聖・魔を生み出し、様々な高次元生命体や高次元精神体を創造され、あらゆる生命の祖を生み出し、世界を創造していったそうです。
我等の祖であるハイエルフやウルドワーフ、太古の魔物や魔族を生み出されたのも原初の神だったそうです。
その御姿は漆黒に輝き、畏怖と尊厳に満ち溢れていたそうです。」
『…懐かしい話じゃのぉ、我の記憶を継承して居る者達がまだ存在しておるとはな…』
(これって事実何すか?!先生)
『そうじゃぞ、我こそ原初にして最古の神【漆黒の創造神】じゃ。
どうじゃ、尊敬するじゃろ?敬いまくるが良いぞ。』
先生が言うとどうも胡散臭いな…
大体、先生は〈輪廻の輪〉ってところで管理者やってたんじゃなかったっけ…
「ゼロ様の御霊は漆黒に輝き、我等の魂に畏怖と尊厳を与えております。
まさに、御方様は伝承にある最古の神にして我らの創造主様に在らせられます。」
セルフュリアは紅潮し眼が少し潤んでいる。
(俺、そんなに偉くも凄くも無いし…勘違いな気がする…けど、無下に否定するのもどうかと思うしな…」
「そうか、大体理解したよ…でも、俺がその太古の神様かどうかは疑わしいけどね…」
「いいえ、それは違います、
私達が御方様を信じている…それが総てです。」
セルフュリアは、信じ切った意志の籠った瞳で俺を見つめていた。
「…そうだね。」
その眼差しに俺は、照れくさそうに鼻を掻きながらそう答えた。
屋敷の裏にある温泉は、周りを竹藪で覆われ岩を組んで浴槽が作ってある。
ゆっくり湯船に浸かって、疲れを癒す。
「ここの温泉はほんと疲れが取れるなぁ。」
(…にしても、先生。さっきの話は本当何すか?)
『…』
(…拗ねてるな。)
脱衣場に人の気配がする、誰かが入って来た様だ。
「ミランジュさんっすか?今日もいい湯ですよぉ。」
剣の稽古の後はいつも一緒に入ってた事を思い出す。
「今日は俺が背中流しますね。」
湯船から立ち上がり洗い場に…
湯煙で視界が悪いけど、シルエットがミラージュさんにしては体の線が細いような…
湯煙が晴れて行く、目の前のシルエットが…
そこにいたのはセルフュリアだった。
「えっ?!」
状況を把握するのに数秒を用した。
目の前に立っているセルフュリアは何も身に着けていなかったのである。
俺は、湯船に飛び込み、
「す、ス・すみません!」
セルフュリアも湯船に入ってくる。
「ご一緒させていただいても宜しいでしょうか?」
「な…え、えぇ?ど…どうぞ…」
セルフュリアは後ろを向いている俺のすぐ背後に腰を下ろした。
「ゼロ様、此方を向いて頂けませんか。」
セルフュリアはとんでもない事を言って来た。
「そ、それは出来ないっすよ!そっち向いたらセルフュリアさんの…が見えちゃいます。」
俺は、心臓が飛び出るくらいドキドキしていた。
セルフュリアのか細い声が聞こえた。
「私がお嫌いでしょうか…ゼロ様。」
その切ない響きの声は俺の心を圧し潰した。
「そ、そんな事無い、セルフュリアさんの事は好きですよ。」
「あぁ‥嬉しいです。」
そう言って俺の背中に柔らかい弾力のある感触が2つ伝わった来た。
セルフュリアが優しく俺の背中に抱き着いていた。
「どぅうひゃぁ!」
俺はパニックを起こし湯船から立ち上がると一目散に脱衣室へ走って行った。
後に残されたセルフュリアは、クスリと笑いながら俺の後姿を見送っていた。
気持ちを落ち着かせながら大食堂に戻って来ると、ミランジュさんが待っていた。
「御方様、御心が乱れているようですが…どうかなされましたか?」
ミランジュさんは俺の心を見透かしたように問い掛けて来た。
「あ、いや、何でもないっす。
そ、それよりもミランジュさん少し手合わせしてもらえませんか。」
気を紛らわすのに、体を使った方が良いと思い手合わせを申し出た。
「宜しいのですか?湯あみした後に、また汗を掻いてしまいますが。」
「今はちょっと体を動かしておきたいんですよ…アハハ…。」
乾いた笑いを浮かべながら俺は先に庭に歩いて行った。
広い庭の中央まで歩いて行き、
俺は、漆黒の剣を金の装飾が施された白鞘から抜き、一振りしてみる。
剣風で雲が切断される…
(凄いな…湖の貴婦人に貰った時は、あれだけ重かったのに今は羽のように軽い。)
『その剣は、我が造ったあの世界で生み出した、主、専用の剣じゃからのぉ。』
(俺専用の武器っすか!道理でしっくり手に馴染んでるし、何かスゲェー力も感じる…)
『そうじゃろうなぁ、その剣は昔我が持っていた剣をモチーフに作っておるからな。
【魂】が不完全な状態で作っておるから性能は格段に落ちておるが…今の主にはちょうど良いじゃろうて。
そしてその剣の名は…ゼーレフォン。』
(〈漆黒の剣〉先生の剣のレプリカって感じっすかね…でもこれ気に入ったっす!)
俺は、漆黒の剣を天空へ掲げ、精神を集中させていく…
俺の全身から立ち昇る【蒼黒の霊気】、そして掲げた漆黒の剣が蒼黒の光を帯び始める。
『名は剣本来の力の源…剣の聲を聴き名を呼べば、お前に応えてくれるじゃろう。』
そして俺は剣の名を呼ぶ。
「〈漆黒の剣〉!」
漆黒の剣の霊気が爆発したかのように膨れ上がるそれはまさに黒き台風。
大気が弾け大地は震動する。
世界を飲み込むかの様な漆黒の霊気。
(スッゲェー力の奔流だ…こりゃあんま使わない方が良いかもな…)
俺は霊気を吹き払う様に一振りし、剣を鞘に戻した。
「御方様…今のは、その剣の力ですか?!なんとも凄まじい…神の力を宿している神剣。」
ミランジュさんが剣を後ろ手に持ち跪いていた。
「ミランジュさん来てたんすか。此れ俺用に創って貰った剣なんすよ。」
「御方様の為に創られた剣ですか、どうりで…
それにしてもいつの間に〈剣の本来の力〉を引き出せるように成られたのです?
その領域に達するのは剣の達人ですら至難だというのに…」
「剣の〈聲〉を聞くってそんなに難しい事だったんすか…」
「…やはり、御方様の剣才は我々では計り知れませんね…
…其れはさて置きそろそろお相手致しましょう。
今日は、剣聖の名に懸けて本気で参ります。」
ミランジュが細剣を軽く振り、左手は後ろに回し方手下段に構える。
その佇まいに一分の隙も無い。
ミランジュさんから研ぎ澄まされた気が漂っている。
「ヒェェ~ッ、お手柔らかにお願いしまっす。」
俺は、白鞘を腰に差し、鞘から漆黒の剣を抜いた。
陽光に照らされ黒光りする刀身。
「では参られよ。」
ミランジュが優雅に一礼する。
俺は、ゆっくり剣舞を始める。流水のように流れる動き、ゆるやかに流れて舞っているようだが、
その中身は全く別物だった。
舞は全身集中の為の動きに過ぎず、徐々に力が漲り、雑念が消え去り、剣気が澄み渡っていく。
「是程とは…剣を握ってまだ1週間と立っていないと言うのに、私と同等…かそれ以上の剣気ですね…
然も御身の〈御霊の力〉は使われておられない…何とも…」
舞が終わり、俺の姿が陽炎の様に揺らぐ…次の瞬間、気配無くミランジュの背後に現れ、
同時に音速を超える速さの斬撃を放つ。
「!」
ミランジュさんは細剣で俺の剣撃を往なすが、音速を超える剣閃の衝撃で後方へ吹き飛ぶが、
軽く着地し、瞬間地面が窪むほどの蹴り込みで戻ってくる。
超々高速で戻ってくるミランジュを黒剣の横薙ぎで迎え撃ちながら、その勢いのまま回転し背後に現れるミランジュを斬り付けるが、それも残像であり頭上に現れるのを回転蹴りで叩き落とす。
十字受けで蹴りを受け止めるが、地に落ちるミランジュ。
土煙を上げながら立ち上がる。
「強くなられましたな。此れは私もモード変更しなくてはなりませんね。」
ミランジュの剣気が爆発した。
膨れ上がる剣気が一転凝縮していき、肉体に変化を起こす。
筋肉は隆起し、体格も2倍位になっていく。
細剣を一振りすると剣圧で地面に亀裂が走る。
剣気が鬼気に変化し、ミランジュの容貌も変貌していく。
基本的にエルフの剣技とは、〈森の剣〉と呼ばれ、風に揺れる木の葉の如き流れる動きと隠形の型が多い。
強撃も力任せではなく、肢体をしならせ遠心力を生かして発動させる。
だが、その剣を極めた剣聖ミランジュさんの【剣鬼モード】は、
身体能力を異常な程引き上げ、流れる動きは激流の如く変化する。
「こっからは手加減できねーぞ、小僧!」
ミランジュの姿が消える。
眼では追えない動き、気配は一切無い、
俺は無意識に剣を左上段に構えると、其処に斬撃が来た。
かなり重い一撃に何とか耐えたが、連続して放たれるミランジュの剣線を受けずに躱す。
「受けないのは良い判断だ、小僧。だが!」
剣撃の残像を残し、背後から更なる追撃が来る。
躱しきれず、剣で受け止める。
凄まじい衝撃が伝わる!
「うおっ!」
受け止めきれず、足が地面にめり込む。
間髪入れず、無数の剛刃を繰り出して来るミランジュ。
「オラァッ、どうした小僧。そんなもんか?」
俺は、左手の黒剣で捌きながら右手に白鞘を持ち、2本でミランジュの剛刃を受けきる。
埋まった足を蹴り出し、舞う様に両手で連撃を加えていく。
ミランジュの剛剣を受け流すと同時に鞘を横薙ぎに振る。
躱されるが、更に回転して黒剣を上段から袈裟斬りで追う。
ミランジュの細剣に往なされるが、更に鞘を下段から斬り上げるが、細剣に弾かれ体が崩れた処へミランジュの細剣が、連続突きを放つ。身を捩り躱しつつ舞に戻り体制を整え、流れる様に連撃を放つ。
「…二刀流。」
此処まで互角に撃ち合っていたが、
ミランジュが跳び退がり、剣を後ろ手に持ち跪く。
「御方様、御時間で御座います。稽古は此処までと致しましょう。」
ミランジュが終了を宣言する。
背後を振り返ると、
ドレスに着替えたセルフュリアが、庭に出て来るのが見えた。
「【剣鬼モード】のミランジュと互角でしたわね。ゼロ様。」
「そう見えたのは、ミランジュさんが俺に合わせて力の加減をしてくれてたからだよ。」
俺は黒剣を鞘に収めて、セルフュリアの方へ歩いていく。
「御謙遜を…御方様は、剣に気を込められておられませんでしたし、それに御霊の御力も全く使っておられない。」
ミランジュが、セルフュリアの側に控え進言する。
「それは、ミランジュさんも同じだよ。
【剣鬼モード】なのに〈流れ〉は使って無かったし、一度も技を出してない…もう少し演れる自身はあったんだけどなぁ。」
「…それにしても御方様、先程の二刀流は御見事で御座いました。」
「あれ、我流なんだけど闘い方が性に合ってるって言うか、身体が勝手に動く感じなんだよねぇ。」
ミランジュの眼が丸くなる。
「…身体が勝手に…無意識にアレをやられたと?」
暫し沈黙が流れ、
「それでは、ゼロ様。御食事の用意が整っております故、此方へ。」
俺はセルフュリアに誘われ食堂へ向った。
後に残ったミランジュが、
「まだ、剣を初めて持たれてまだ日も浅いにも関わらず、独自の技を生み出されるとは…やはり御方様は【剣神】…なのかも知れませんね…」
誰にも聞こえない言葉で呟いていた。
大食堂には、豪華な食事が所狭しと並べられ食欲を唆る匂いが立ち込めていた。
剣を振って気持も治り、食欲が出て来たのか、お腹が空いていた。
セルフュリアには、上座に座る様に勧められたが、丁重にお断りして、メイドに勧められた席に座る。
セルフュリアは、俺の正面の席に座った。
「お口に合いますか分かりませぬが、どうぞ御賞味下さい。」
セルフュリアが食事を勧めてくれたので、俺は料理に手を付けた。一口食べ、感嘆する。
「美味い!今日はいつもより美味しいなぁ。」
「今日の料理は、私が心を込めて作りました。そんなに喜んで頂けるなんて作った甲斐がありましたわ。」
「セルフュリアさんの手料理なんだ!
こんなに美味い料理作れるなんて、良いお嫁さんになれるよ。」
セルフュリアの顔が心なしか赤くなった気がした…
「…あ、有り難う御座います。」
口に運ぶ料理が、余りにも美味しくて暫く無言で食べ続ける。
「御方様、今日何故お越しになられたのでしょうか?」
セルフュリアが、一段落するのを待って話し掛けてくる。
「そうだった…今日はセルフュリアさんに相談したい事があって…」
俺は、果ての山脈での出来事を説明し、〈魔物の王〉になった事を話した。
「御方様が、魔物の王に…それは、自然の流れですわね。太古からの種族である我等にとって、御方様は〈創造主〉であらせられますから…魔物達が王と崇めるのも理解出来ます。」
「俺としては、王様とか創造主とかでは無く、皆の仲間として見て貰いたいんだけどねぇ。」
「御方様らしいですわね…ですが、〈魔物の王〉になるのであれば、人族と接するのはなるべく避けた方が宜しいのでは無いでしょうか。」
「…やっぱりそうだよなぁ。魔物ってだけで敵視したり、嫌悪されるよなぁ…」
「そうですね…人族は自分達と毛色が違うのを嫌う性質がありますから…
私達、亜人種ですらやっと最近受け容れられた位です。」
「…となると人族の圏内では、素性を隠しとか無いと面倒に成りそうだな…」
俺は沈黙し、少し考え込む。
「…セルフュリアさんにお願いがあるんだけど…」
「何で御座いましょう?」
「王都で活動するのに、色々協力して貰えないかな?
人族圏内では、俺の身分は衛士見習いだから余り表立って動けないし…〈魔物の王〉ってバレるのも不味いしね。」
「御方様の為であれば協力は惜しみませんが、魔物の世界と人の世界の2つで生活をするのは大変では無いかと…何か目的があるのですか?」
セルフュリアが首を傾げ、理由を聞いて来る。
「実は…異世界から〈召喚〉されて来る友人を探したいってのが一番の理由かな。」
俺はふと不思議に感じていた。
(真也が、異世界に〈召喚〉されたからって何か問題があるのか?生徒会長達だって、普通に暮らしてる…)
それなのにアイツの事を考えると言い様の無い感情が、胸を過ぎる。
真也と最後に別れた時、俺は真也に嘘を付いていたから、それが後ろめたいのか…
それとはまた違う…何か漠然とした不安を感じていた。
「畏まりました。御友人は、エルフの情報網で探してみましょう。
それで、御友人の方は人族でいらっしゃいますか?」
「人族だよ、名前は真也。探してくれて助かるよ。
俺一人で途方にくれるとこだったんだ。」
「助かるだなどと、我等に御命じになれば良いのです。
御方様は、我等にとって掛け替えのない存在で御座います。」
深々とお辞儀をし傅く姿を見て、
(いや…だからそこまで慕われる様な人なの?俺。)
と思う。
セルフュリアは、頭を上げ此方を見る。
「私からも一つ提案が御座います。」
「提案?」
「はい、御方様の身の廻りの世話と身辺警護に従者を付けさせて下さいませ。」
「え?俺に従者なんて必要無いよ、そんな人つけてたら返って目立つでしょ?」
「それは、心得て居ります。その上で、お役目に打って付けの者がいるのです。」
「…そんな都合の良い人が居るとは思え無いんだけど?」
「では、呼びますわね。
ミランジュ、呼んで来て下さい。」
側に控えていた執事に声を掛ける。
ミランジュは一礼し扉を出て行くき、直ぐに供を連れて戻ってきた。
執事と一緒に入って来た人に、俺の目は釘付けになった。
「此方へ。」
セルフュリアの側に歩いて行き、隣に立つドレスを着た人物…
「エ、エルナ?!」
同じ騎士見習いで、最後のダークエルフでもある。
エルナ・イシュタールだった。
無口なタイプだが、小剣を二刀使うかなりの剣の使い手である。
「この者を、御方様の従者として付けます。」
「な、え?エルナが従者って…何でエルナが此処に居るんだよ?」
俺は手に持っていたナイフとフォークを落とす程驚いた。
ミランジュが、代わりを持って来てくれたのにも気付かない。
「彼女は、我等エルフ族の中でも稀少な黒エルフの最後の生き残り、以前より消息を探して居りましたが、先日遂に見つけました。」
(そう言えば…衛士隊の修練場で、そんな話をしていたな…)
「でも、何で此処に…もしかして住んでるの?」
「姫様の御好意で、此方に住まわせて頂いております。」
エルナが敬語で話す。
セルフュリアから俺の事を聞いたのだろう。
エルナのドレス姿にも驚いたが、思いも寄らない人物に動揺が隠しきれない。
「エルナであれば、御方様と同じ騎士見習いでもありますし、果ての山脈の魔物達とも面識がある。
黒エルフの隠行の技も使えるので、常に御方様の側に使える事が出来ます。」
(まさに、打って付けの逸材ですね( ̄▽ ̄;))
「私では、御方様の御付きとしては力不足とは思いますが、精進いたします故宜しくお願い致します。」
(エルナにそこまで言われると断れないな…)
「…じゃあ、一つだけ条件がある。」
「何なりとお申し付けください。」
エルナは、ドレスを摘み跪く。
「エルナが付き人になっても、俺の大切な友達なんだから、敬語はやめてくれないかな。」
一瞬間が開いて、
「はい。」
エルナは返事をし微笑みながら顔を上げる。
王都で生活基盤作りはじめましたね。
もっと繋がりを増やして行きます。
リアルが忙しい_:(´ཀ`」 ∠):