プロローグ17 限定イベント 4の島、そして...
3姉妹の最後の一人だけど、あまり語る時間は無いので、先の物語で登場させたいっすね…
シューラム神皇→ファルノール神皇へ変更しています。
4thステージ 刻歴図書館
俺達は、岩山の麓に転送されて来た。
目の前にある
階段は岩山を切り出して造られており、頂上まで続いている。
岩山の頂上には、大きいが古い建物がある。
其処を目指して、階段を登って行く俺とアンドロメダ。
中腹付近に差し掛かった時、頂上の建物から伸びている空中階段が見えて来た。
階段はずっと先の空の上に続いている。
遥か上空に見える島…ではなく、白亜の神殿だった。
アンドロメダによると、あれが【荒ぶる神】の居城だと言う。
「この上にあるのは、刻歴図書館です。あの図書館は、司書様が管理しています。」
「司書様?」
「はい、その司書の名は、アリアドネ。あらゆる知識を身に宿していると言われていて…
最後の神器はその司書様が、保有しています。」
「…アリアドネは君の姉さんだったよね?」
(3姉妹の長女、アリアドネ。どんな人だろう…次女のヴィヴィアンは、自由奔放でちょっと意地悪だったけど…)
俺の疑問が分かったのか、
「アリア姉さんは、かなり厳格な人です。筋が通らない事は絶対認めません。それにすごく頑固なんですよね…」
「かなり怖そうなお姉さんみたいだね…」
「そうですね…でも、優しくて良い姉なんですよ。」
そう言って微笑む、アンドロメダ。
その微笑みは、NPCとは思えない表情だった。
(…本当にNPCなのだろうか、根本的な何かが違う気がする。)
これまでのアンドロメダやカーラ、イフリートもそうだが、イベントの重要な役割を持つNPCは、言動や受け応えが、余りにも自然過ぎる…プログラムとは思えない…まるでプレイヤーと同じだ。
自分の意思で行動しているとしか思えない。
「ZERO様、もうすぐ着きますよ。」
俺が彼是考えているうちに到着した様だ。
近くで見るとかなり大きな建物だった。
ヨーロッパの大聖堂を思わせる様な造りをしている。
図書館の中も壮大だった。
内部は木造建築になっていて、飴色になった造作物は素晴らしい装飾が施されている。
5階建位ありそうな書棚が整然と並び、びっしり本が並んでいる。
この図書館が、所蔵している書籍の数は想像も付かない。
圧巻な光景に言葉を失っている俺。
「アリア姉さんは、この書籍全ての知識を持っているそうです。」
「は?!…この量の知識を保有してるって…」
(まるで、先生の〈森羅の智慧〉だな。)
その時俺は、突然肩を叩かれる。
驚いて振り返ると、
プラチナブロンドの髪を真っ赤なリボンでツインテールにした真っ赤なロリータファッションの少女が立っていた。
(何?この子…全く気付かなかったぞ?)
「アリア姉さん!」
(え、えぇ?!この女の子が??)
「アンちゃん、お久し振りじゃない?」
可愛く手を振るアリアドネ。
「アリア姉さん、ご無沙汰してます。御健勝の様でなによりです。」
アンドロメダは、スカートを摘みお辞儀する。
「…アンちゃんもね、…それでこのお兄さんが【封印せし者】かしら?」
「あ、俺はZERO、です。」
「ZEROちゃんね、あたしは、アリアドネ。
この大図書館の司書をやってま〜す。」
(あ、あぁ…図書館の司書のイメージが、崩れて行く…)
「あの、実は…」
俺は気を取直して、神器の話を切り出そうとした。
「ZEROちゃん神器を取りに来たんでしょ?はい、これあげる。」
勾玉の首飾りを手渡された。
「へ?」
【 4thステージ クリア 】
(えぇぇぇぇ…ッ!終わり?マジっすか??)
驚いて声も出ない俺を尻目に、
「アンちゃん、あなたにはお迎えが来てるわ。」
アリアドネが、真面目な顔でアンドロメダに話す。
「分かっています…」
(…お迎え?)
「そう…あなたは、あなたの務めを果たしなさい。」
「アリア姉さん、ZERO様の事をお願い致します。」
「…分かっているわ。」
話について行けない、
(…お迎え…?お務めって何だ?)
奥からキトンを着た男女二人組が、やって来る。
「アンドロメダ殿、主人の命により迎えに参った。」
「速やかに、同行願いたい。」
「…分かって居ります、お連れ下さい。」
そう言って、俺の方へ目を向け悲しげに微笑み。
「ZERO様、お会いできて嬉しかったです。
私のナビゲーターの役目は此処までです。」
「アンドロメダ、それは…」
「行きましょう。」
促され、立ち去って行く。
扉に消えて行く…
「…どう言う事なんだ?お務めって何だよ…」
「ZEROちゃん、あなたには説明してあげないといけないわね。」
アリアドネが教えてくれた。
「アンちゃん…アンドロメダは、太古の昔から神の生け贄になるのが定め、其れがあの子に与えられた務めなのよ。」
(…生け贄だと?)
「【荒ぶる神】だが何だかの生贄になるのが務め?そんな事があってたまるか!」
俺は憤慨した。
今まで共に苦労して、冒険して来た結末がこれか?!
「…ZEROちゃん、ありがとうね。
妹の為に怒ってくれて、でも此れは抗えない運命なのよ。
どんなに悲しくても受け入れるしか無い…」
「ふざけんなよ!そんな運命なんてあってたまるか!!」
無意識に〈黒い波動〉が、滲み出して来る。
「ZEROちゃん…助けに行きたいの?
…ヴィヴィアンは湖底に連れ去って、-妹の生贄の務めを回避しようとしてたみたいだけど…」
(…ヴィヴィアンノアの行動はそう言う事だったのか…)
「当たり前だ、今すぐ連れ戻して来る!」
追い掛けて行こうとする俺の腕を掴む、アリアドネ。
「待って、焦らないで。」
「!」
「今、焦って行っても助けれないと思うの。」
「そんなのやってみないと分からないじゃないか!」
「だって、ZEROちゃん、神器の使い方も分からないんじゃ、無理だと思うわよぉ?」
可愛らしく口許に人指し指を充てている。
「そんなの無くたって、今の俺の力なら勝てるかも知れないだろ!」
「う〜ん、無理ね。このイベントの【荒ぶる神】とは、創世の神々の一人だし…然も【傲慢なる者】と云われる太古の7神…今のZEROちゃんでも、きっと勝てないわね。」
愛らしい動きで、腰に手を当てている。
「でも封印する事は出来るからぁ、今から神器の使い方を教えてあげるわ。
そしたら、アンちゃんを助けてあげて欲しいのよぉ。」
「何があっても、アンドロメダは必ず助け出して見せる!」
「じゃあ、ZEROちゃん、ちょっとしゃがんでくんないかなぁ。」
俺は、言われた通り片膝をついてしゃがんだ。
アリアドネが俺の額に自身のオデコを引っ付ける。
(?)
「口で説明するよりこっちの方が早いから、あなたの頭に直接伝えるわね。」
そう言うとアリアドネは目を瞑る。
額が淡く光る…温かさを感じたと思った瞬間、
物凄い量の知識が流れ込んで来た。
(…なっ、何だ?!)
暫くしてからアリアドネは、額を離す。
「あたしの知識の一部を授けたわ。
試しに、【神器】の使い方を頭の中で考えてみて。」
言われるがまま、考えてみると…脳裡に使い方が浮かぶ。
「おぉ、何だ此れ?使い方が頭に閃いた…」
(…これって…〉
知識が湧き水の様に溢れ出している。
神器に関する知識の全てが…
「あたしがしてあげれるのはコレ位だからねぇ。」
「充分!助かったよ。」
「ZEROちゃん、頑張って来るんだよぉ。君はやれば出来る子だぞぉ。」
親指を立てながらそう言ってくれる。
変な応援の仕方だが、やれそうな気がして来るから不思議だ。
(…相手が神だろうが関係ない、必ず連れ戻す!)
俺は、アリアドネに礼を言ってから、アンドロメダが連れて行かれた扉を開け、走り出した。
図書館から伸びる半透明の階段が、白亜の神殿まで続いている。
超高速移動を使い数秒で入り口に到着した。
入り口には、門衛が二人立っている。
良く見ると、アンドロメダを連れて行った奴等だった。
男の方は槍と盾を持ち、女の方は鞭を握っている。
「そこで、止まれ!」
男の方が、俺を制止する。
「此処は、我等が偉大なる〈神王様〉の居られる地。
招かれざる者は、足を踏み入れる事すら許されておらぬ。早々に立ち去るが良い。」
厳しい口調で勧告された。
「ん?其方は、図書館にいた者ですね?此処へは何用で来たのですか?」
女の方は、優しく問い掛けて来た。
「俺は【封印せし者】、〈荒ぶる神〉を封印しに来た!
それに、俺の大事な仲間を生け贄として連れて行かれたから、彼女を取り返しに来た!!」
「お前のような奴が【封印せし者】だと?笑わせてくれる。それなら尚更、此処は通せないな。」
槍を身構える男。
女の方も鞭を鳴らして臨戦態勢になる。
「仲間を思う気持ちは、殊勝な心掛けではあるがな…我が主人を封印させるわけには行かん。」
「…だろうな、だが、俺は引かん!推して通らせてもらう!」
俺は、超高速で走り抜けようとしたが、鞭で腕を絡められ動きを止められた。
「くっ…そぉ、」
「甘いわね、そんな動きで私達を出し抜くのは無理よ。」
全くビクともしない。
持ち物枠に入れていたフルンティングを右手に持ち鞭を切る。
「あら、私の鞭を斬れるくらいの実力はあるようね。」
左手にアリアンシールドを装備する。
剣も盾も完全に修復されていた。
(VR-EXならではだな、現実なら破壊されたらもう使えないだろうからな。)
豪速で、槍が飛んで来た!
盾でいなしながら、フルンティングを斬り下ろす。
しかし、槍は傷1つ付けず剣を弾き返す。
九頭龍の硬い鱗すら簡単に斬り落として見せたのに、この槍はそれ以上の強度があるようだ。
「その程度の力で此処を通れると思っているのか?」
俺は、全身に力を溜め、黒い波動を滲ませる。
「ほう…貴様、その禍々しい力は…」
男の眼に、殺気が宿る。
全身から、〈白い波動〉が溢れ出す。
(…あれは、俺の波動に似ている…が色が違う。)
その威圧は凄まじく、まるで俺がもう一人其処に居るかの様な…
「我の魂に刻まれた黒の者への感情は、抑えることが出来ん。」
更に膨れ上がる〈白い波動〉が大気を震えさせる。
俺は〈黒い波動〉を膨れ上がらせ、身構える。
女の方は、成り行きを見守っているようだ…
その時、大気を圧し潰すようなプレッシャーが上空から襲った。
「?!」
(何だこの出鱈目な圧力は…)
立っていることを拒絶するかの様な圧力…
門衛の男女が平伏している。
「神皇様…」
「…畏まりました、この者をお連れ致します。」
(誰と話してるんだ…?)
プレッシャーが消え二人の門衛は立ち上がる。
「そこのお前、神皇様からのお許しが出た。
御前に連れて参るから大人しく着いて来るが良い。」
「…着いて来なさい、あなたのお友達はまだ生贄にはなっていないわ。」
女の方が先に歩き出し、俺はその後をついて行く。
(…連れて行ってくれるなら何処へでもついて行くさ。)
巨大な白亜の神殿は、荘厳な造りで見る者を魅了する。
大理石の床に継ぎ目は見当たらず、柱は巨大でドーム型の天井を支えている。
凛とした雰囲気が漂い、空気が冷たく感じる。
回廊を抜けた先に広間があり、大理石の階段が壁の大きな窓の様な開口に続いている。
其処には、鎖に繋がれたアンドロメダがいた。
「アンドロメダ!」
俺は大声で呼び掛けた。
「…ZERO様…」
アンドロメダは、振り返って俺を見る。
その表情は、物悲しげで、自分の運命を受け入れている顔をしていた。
駆け寄ろうとした俺を男の門衛が、槍を横に突き出し止める。
「それ以上先へ行く事は許さん。」
(…アンドロメダ。まってろ、必ず助けるからな。)
急に大気が重くなり始めた。
そして空には黒く濃い暗雲が広がって行く。
暗雲の更に上の方から何かが近付いて来る…
その何かの圧力は、世界を震わせる程の力を有している、その圧力が、次第に力を増して行く。
暗雲が渦巻き、次の瞬間巨大な風穴が開く。
その穴から光が差し込み、地上の一点を照らし出している。
其処へ光り輝く者が音も無く降り立った。
門衛二人は平伏する。
良く見ると身体が小刻みに震えている。
「神皇様。御帰りをお待ちしておりました。」
神々しい光を放ち、その霊気は冷たく他者を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。
純白の甲冑を身に纏い、背負っている外套も純白だった。
金髪で逞しさを感じさせる太い眉と顎髭が印象的だ。
「良い、下がっておれ。」
威圧に満ちた威厳ある声は頭の芯にまで響いてくる。
「はっ、畏まりました。」
門衛達は下がり、控えている。
俺は前に出て、
「あなたが【荒ぶる神】か。おれの仲間を返して貰いに来た。」
俺は、神を前にしても臆する事なく言ってのけた。
「ほう、お前は【封印せし者】であろう?
神託を授かった者が、その意を無視して、大義より仲間を選ぶというのか?…何と愚かな。
その贄を救うという事は、我を封印することが出来なくなるという事だぞ?」
「どういう意味だ?アンドロメダが〈封印〉と何の関係がある?」
「我を封印する神器は3つだが、アンドロメダが贄になることで、神器の力を開放し我を封印できるのだぞ?」
(…それは、わかってた。アリアドネが与えてくれた知識に…あったから…)
「…でも、それじゃあ、辻褄が合わないだろ?
あなた自身が、あなたを封印する生贄を作ろうとするのは可笑しいだろう?」
傲慢なる者は、豪快に笑った。
「ガッハハハ、頭は悪くない様だな。〈黒き者〉よ。
一つ教えてやろう、我はこの奇妙な世界が嫌いなのだよ。」
(奇妙な世界…仮想現実世界の事を言ってる?のか)
「この世界から離れられるのなら、我が封印されようがこの世界を崩壊させようが我にとってはどちらでも良いのだよ。」
「…それは…いや、何故あなたはそんなにこの世界を…」
「…この限定イベントとやらはお前のためだけに作られた世界だという事だ…
これ以上は、語れぬがな。さてどうする?」
(俺の為に作られた?どういう事…そんなイベントなんて…)
「よくわからんが、やることは判ってる!アンドロメダを助けてあなたを封印する!!」
〈傲慢なる者〉は、不快そうな目になる。
「…良い決意だが、愚かだな。」
神の全身から憤怒の霊気が立ち上がる。腕を振り上げ、命を下す。
「ダイモス、エリス、相手をしてやるが良い。我はティアマトを呼び生贄を捧げるとしよう。」
「畏まりました。我が〈神皇〉様。」
控えていた門衛の二人が、俺の前に立ち塞がる。
二人共、神命が下り本気で立ち向かってくるに違いない。
それが解る程の巨大な気を全身から放出している。
彼等は今の俺と互角かそれ以上の力を持っている…
(それでも、俺は彼女を見放す事は出来ない。必ず救い出す…)
もう梅雨ですね…