プロローグ15 限定イベント 2の島(後編)
昼にも関わらず暗く深い森の中を超高速移動で疾り抜ける。
途中ポーションを使い傷を回復させながら…
イフリートと別れてから1分程度しか経っていないが、5km以上離れた北の湖に到着していた。
湖の広さは、然程大きくはない。
湖面は陽の光が反射しキラキラ輝いていて、湖底が見える程透明度も高い。
地図を見てみると、緑の点滅は湖の中央にある。
アンドロメダは其処にいるようだが、目を凝らしても姿は見えない。
「湖面じゃないな…となると湖底?」
湖岸に近付き、水面に手を触れさせると、手を中心に波紋が広がる。
その時、湖面が淡く光り始め、
光の中心から金色の髪の美しい女性が現れる。
大きな瞳に綺麗な眉、鼻は少し低く、耳が少し尖っていて綺麗な髪が腰まで伸び風に靡いている。
何処と無く、アンドロメダに似ている気がする…
神々しく輝いているその女性が、声を掛けて来た。
「私はこの湖に住む【与えし者】、ヴィヴィアン。
【封印せし者】よ、其方は何かを求めてこの地を訪れたのですか?もし望むモノがあるのなら、一つだけ与えましょう。」
(一つだけか、…成る程な。)
村の連中やイフリートが、言っていた意味が少し分かった。
「湖の貴婦人さんに聞きたい事があります。」
「…何かしら?」
「アンドロメダと言う女性は、此処に居ますか?」
俺は、直球で聞いてみた。
湖の貴婦人の眼が細くなる…
「…彼女は、私の元に居ます。」
「貴方があの石小屋から連れ出したんですか?」
「それは違います。あの子が自ら望んで此処に来たのですよ…何故なら私の妹ですからね。」
湖の貴婦人は、口元を少し吊り上げ笑みを浮かべる。
驚きはしなかった、イフリートがそんな感じの振りをしていたから。
「じゃあ、強制ではないと?言うんですね。」
改めて聞き直す。
「ええ、今も私の湖底の神殿で寛いでいますよ…其方は何が言いたいのですか?」
「貴女は、言いましたよね。望む物は一つだけだと。」
「その通りです、其方が望める物は一つだけ。
そして、神器【黒聖剣】を求めに来た事は知っています。」
見下すような目線で俺を見る。
「…だから、貴女は彼女を連れ出した。俺に神器【黒聖剣】か彼女の二択を迫る為に。」
「!」
「でも、貴女はミスを犯した。」
「ミス?其方は何を言ってるのかしら、二択である事に変わりは無いわよ。
【黒聖剣】を求めるか【我が妹】を返して貰うのか。
ふたつにひとつよ、ウフフ…。」
不敵に笑う、湖の貴婦人。
「…だから俺は確認したんです、アンドロメダは強制で連れて来られたのか、自分の意思で来たのかとね。」
「其れが、どうしたと言うのです?」
鼻持ちならないこの美しい女神は、少しイライラして来たようだ。
「アンドロメダが、自分の意思で此処へ来たのなら、自分の意思で出る事も俺が迎えに行くのも自由でしょ?」
「な…」
湖の貴婦人が、絶句する。
俺は更に捲し立てる。
「なら、俺の選択は一つだけ神器【黒聖剣】を望みます!その上で、アンドロメダを迎えに行く。それが俺の答えです。」
(ちょっと、屁理屈がキツイか…)
「…成る程、其方が言ってる事はもっともですね。
良いでしょう、【黒聖剣】を其方に授けましょう。」
湖の貴婦人が余りにも素直だった。反撃が来ると思っていたので、かなり拍子抜けした…
湖の貴婦人が手を翳すと、湖から漆黒に光り輝く聖剣が姿を現わす。
柄尻に深真紅の宝石が埋め込まれ、鞣し革が巻かれた柄、漆黒の刀身にはルーン文字が刻まれ、彫刻が施されている。
迸る霊気は、寒さを感じる程に荘厳な気配を漂わせている。
「さぁ、受け取りなさい。」
【黒聖剣】を両手で受け取る。
「?!」
受け取るには受け取ったが…異常に重い。
両手でも操れない程の重量感…
「ウフフ…、重いでしょう?
其れは、簡単に扱える代物ではないですからねぇ。」
優越感に浸っている湖の貴婦人。
(コイツ、知ってやがったなぁ、使えないなら2択どころか0択じゃねぇか…)
俺は重くて使えない剣を持ち物欄に収納した。
持ち物一覧に黒聖剣の表示が出る。
そんな俺に追い討ちを掛ける湖の貴婦人。
「それに、其方は妹を迎えに行くつもりでしょ?」
「あぁ、そのつもり…」
「其方が迎えに行くのは自由です、好きにすると良い。
それを、私が阻害するのもまた自由でしょ?」
(そっちで、きたかぁ!)
「それでは、妹と共に其方が来るのをお待ちしておきますわ。」
そう言って、湖に沈んで行く湖の貴婦人は、和かに軽く手を振っていた。
俺は湖を潜って行く。
VR-EX内なので水の中でも息は出来る…様だ。
視界の上の方に酸素残量が表示されている。
透明度が高いので遠くまではっきり見えた。
暫く潜っていると、湖底に神殿が見えて来た。
神殿に続く参道に到着した。
両側の沿道に大理石の円柱が並んでいる、その先に人影が見える。
その人影が近付いて来て一礼した。
片眼鏡を掛けた燕尾服の初老の男性だった。
「お待ちしておりました、ZERO様。
私は執事のエルトノーズと申します。」
(迎えが来るって事は、俺に対する準備は整ってる?)
俺は、警戒心を緩めない様に気を引き締める。
執事の後をついて行く。
入り口に続く100段位ありそうな大階段を登りきると巨大な大理石の両開き扉が、堅く閉ざされていた。
執事のエルトノーズが、振り返り、
「ZERO様、屋敷に入る前に、僭越ながら我が主人についてお話し申し上げます。」
「…」
一礼して、話し始める。
「我が主人の性格は、自由奔放にして気儘でございます。本日も【与えし者】としてのお役目のみを遂行して頂ければ良かったのですが…悪戯心が芽生え、ZERO様を困らせる為だけに妹君をZERO様の元より連れ出され…」
(やっぱりね、我儘そうだったし…)
「剰え、貴方様に論破されたのであれば、妹君をお返しになるべき所を、更に困らせると言う始末。」
大きく溜息をつき、
「我が主人には、私の方からキツくお諫め致しております故、主人の愚行をお許し頂きたく、伏してお願い申し上げます。」
腰を90°以上曲げて謝罪する、執事。
「エルトノーズさんが、そこ迄謝らなくても…」
「いいえ、主人の失態は我等僕の失態でもあります、何卒ご容赦願いたい所存でございます。」
「俺は、アンドロメダさえ無事に戻って来れば良いだけで…気にしてないよ。」
「それを聞いて安心致しました。
妹君は、この扉の向こうでお待ちして頂いております。」
執事は扉に向かい、巨大な大理石の扉を開ける。
開いて行く扉の先に、アンドロメダとヴィヴィアンが立って居た。
「…ZERO様、申し訳ありません。ナビゲーターの私がお側を離れるなんて…」
アンドロメダが、目を潤ませている。
「君が謝る事なんて何もない。それよりも、イフリートに気を取られて、君を見失ったのは俺の落ち度だから、俺に非があるさ。」
俺はアンドロメダの側まで歩いて行き、俯いている頭を優しく撫でる。
「ZERO様…」
アンドロメダが、可愛らしい泣笑い顔を上げる。
横に立って居たヴィヴィアンが、口を開く。
「妹の事は謝罪します。エルトノーズ達にも叱られましたからね。」
ヴィヴィアンは、素直に謝ってきた。
よっぽど怒られたのかもしれない、神妙な顔をしていた。
「そう言えば其方、イフリートに力を授かった様ですね。」
唐突に聞かれ、俺はふと思った。
(そう言えば、イフリートと因縁みたいなのがありそうだったなぁ…)
「あ、あぁ、〈力比べ〉やって何とか授けて貰ったけど…」
「…あの魔神は、その使い方を其方に教えましたか?」
「…あれ?そう言えば…何も聞いてない!」
言われて気付いた。
(【焔の力】は授かったが、どうやって使うんだ?)
「そんなだから、ガサツで力任せの脳筋魔神とは、昔から仲が悪いのです。」
(仲が悪いのは何となくわかる気がするけど…性格は、どっちもどっちな様な…)
敢えて口には出さない。
「妹の事で、御迷惑を掛けしたお詫びに、私がお教えしましょう。」
「おぉ、それは助かる!このままじゃ、使えなかったっす(/ _ ; )」
ヴィヴィアンの提案は正直助かった。
このまま九頭龍と戦ってる時に気付いてたら間違い無く負けてただろう…
「其方も、かなり抜けてる様ですけど…」
(ごもっとも( ̄▽ ̄;))
「では、他の者は少し下がりなさい。」
ヴィヴィアンの指示に従って後ろに下がる執事とアンドロメダ。
それを見届けてから俺の方へ向く。
「それではZERO殿、お聞きしますが、身体の何処かに紋章が刻まれていませんか?」
「え?紋章…」
言われて、身体をあちこち見てみると…左腕に深紅の紋章が刻まれていた。
「あ、ありました。コレっすよね?」
そう言って、湖の貴婦人に見せると、
和かに頷き、
「それです。後は発動させる方法ですが…紋章を意識しつつ、炎を燃やすイメージをして御覧なさい。
イメージの度合いで、発現する力が変わります。」
俺は、左腕の紋章を意識しながら炎が燃え盛るイメージを思い浮かべてみた。
紋章が反応して、深紅に光る魔法陣が出現した。
右手を二本指だけ立て、魔法陣に触れさせる。
(火をつけるイメージで…着火…)
突き出していた左腕から膨大な熱量を発しながら炎の柱が、噴き上がる。
「うぉっ?!」
「!!」
その場にいた者達が皆目を丸くする。
神殿の大広間の壁を燃やし熔かし始める。
「…初めての顕現でこれ程とは…それよりも、
力の顕現を止める時は、消すイメージです。」
俺は炎が小さくなって消えるイメージをする。
魔法陣が消え、噴き出していた炎が消えた。
炎が当たっていた大理石の壁は高熱で熔けていた。
「あの…すみません。壁を熔かしちゃって…」
頭を掻きながら謝る。
「…それは良い。先に止め方を教えていない私にも責はあります。それより…初顕現であの威力とは、流石は【封印せし者】に選ばれただけはありますわね。」
湖の貴婦人に素直に褒められると逆に不安になる…
「あ…教えて貰って助かったす、これで何とか戦えます。」
「お気になさらないで、次またイフリートに会った時に、この件で、優越感に浸れますから。」
(怖えェ〜、やっぱり裏があったのねΣ(・□・;)
「ZERO様、そろそろ先を急がないと…」
近付いてきた、
アンドロメダが声を掛けてくる。
「そうだな、九頭龍を倒しに行こうか。」
「ZERO殿、イフリートの力があったとしても、かの邪竜に勝てる見込みは30%程度でしょう、御武運をお祈りしておりますわ。」
俺とアンドロメダは、湖の貴婦人に見送られ、地上に戻って行った。
去り際、
「我が愛しき妹アンドロメダ、貴女はあなたの務めをしっかり果たすのですよ。」
慈しむ様な目で妹を見詰める。
「分かっております、姉上様。」
アンドロメダの目には、強い意志が感じられた。
――――――――――――――――――――――――――
北の湖から九頭龍がいる西の湖迄は8km位ある、今はアンドロメダと行動しているため、超高速移動は使えない。
大蜘蛛や攻殻獣、食人植物に襲われたが、難なく倒して順調に進んでいる。
「ZERO様、もうじき湖に着きます。準備はよろしいですか?」
「ああ、激戦になるだろうけど不安や気負いはないよ。
寧ろ、心は静かで穏やかだよ。」
俺は不思議と緊張していなかった。
フルンティングは、意識せずに本来の力を震える様になったし、アイアスシールドも本来の強度に炎の力を付与すると言う応用もしている。
やれる事は全てやった、後は結果を出すだけだ!
その心境が、自信と冷静さを齎しているのだろう。
「それにしても、湖の貴婦人がお姉さんだったのは驚いたよ。他にも兄妹はいるの?」
「はい、姉がもう一人居ます。
私達3姉妹はそれぞれ与えられた役目を持ってこの世界に創造されました。
長女アリアドネと次女ヴィヴィアンは神器を託す役目を、私は神託を与え導く役割を担っています。」
(創造された…つまり、プログラムで作られたって事かな…重要な役割を与えられたNPCが、姉妹なのかも…」
「…となると、最後の神器はどこに?」
「3rdステージの何処かに…」
アンドロメダは、少し思案してから答えた。
ナビゲーターの知識には無いのだろう…
「まだ先は長いな…」
そうこう話しているうちに、湖へ到着した。
広大な湖は、水面が波で荒れていて、空にはどんよりとした雨雲がかかっている。
今にも雨が降り出しそうで、風も出て来た。
「ZERO様!始まります!」
アンドロメダが、警戒しながら強く叫んだ。
雷雲から幾つもの稲妻が放たれ湖面を叩く。
湖面が揺れた様に見えた後、大渦が発生した。
湖のあちこちに竜巻も起こり始める。
(…凄い圧迫感だ、これは…次元が違う。)
大気が震え、大地が唸る。
大渦の中心から現れる、九つの龍の頭を持ち、全身を青銅の如く蒼くて硬い鱗で覆われた巨大な災厄が姿を見せる。
九つの首は一斉に咆哮した!
威嚇の衝撃が疾り抜け、その余りにも凄まじい力で、
アンドロメダは脚が竦みその場にヘタリ込む。
俺は盾を構え何とか耐えて見せる。
(なんてデタラメな強さだよ!これでフロアボスなのか?)
「…何の用だ?矮小なる虫ケラよ。用がなければ立ち去るが良い。
」
九頭龍の頸の一つが話し掛けて来た。
「用ならある、俺は【封印せし者】としてお前を倒しに来たのさ!」
「成る程、我を倒さねば先に進む道は開かんからな。」
「勝てると思うのか、小僧が!」
「掛かって来い、虫ケラの様に踏み潰してやる!」
九頭龍から怒気が溢れ出す。
「あぁ、言われなくてもそのつもりだ!」
全身に力を漲らせ、盾に炎を纏い、剣からは黒い波動が立ち上る。
「行くぞ、虫ケラ!」
九つの首が襲い掛かって来た。
龍の頭一つが、俺の身長位あり、あらゆる方向から攻撃して来る。
右からの攻撃を回転して交わし、左からの攻撃を跳び上がって回避。更に正面から来た攻撃を盾で受けるが、衝撃で吹き飛ばされ木々をなぎ倒しながら止まる。
「手応えがないなぁ、小僧。」
「もう終いか?」
俺は、ゆっくり立ち上がる。
闘気は揺らがず、更に放気を増して行く。
「ほう。」
「耐えやがったか。」
黒い翼を広げ、九頭龍に向かって一気に翔ける!
九頭龍の顎を交わしつつ、フルンティングを振る。
しかし、硬い鱗に阻まれ弾かれる。
「!」
(硬テェェッ?!)
巨大な牙が並んでいる口を大きく開け、襲ってくるのを空中で、2つ3つ交わし更に上昇する。
「ん?!」
更に上から巨木?が猛スピードで降って来た、叩き落とされる。
眼の端に見えた巨木は、龍の尾だった。
(痛ッテェ…)
地面に叩きつけられるのは何とか回避する。
フルンティングに黒の波動を乗せ、振り抜く。
剣圧が、頸の一つを半分位斬り落とした。
(お、斬れた!)
が、直ぐに再生して元に戻る。
(…だよね( ̄▽ ̄;))
さらに、2撃・3撃と剣圧を放つ。
九頭竜の頸が綺麗に飛ぶ、しかし、2本切り落としたのに4本に増えて再生した。
(ほんとに増えた…これマジヤバイな。)
「我が身体を斬るか、少しはやるな。」
「だが、それだけでは勝てんがな!」
「いくら切り落としても無駄だ。」
4つの口が開かれ、力が集約されて行く。
水色の超高水圧が放たれる。
間一髪回避し盾で受けたが、放たれた水圧はまるでレーザー砲だ。
逸れた高水圧の攻撃は浮島ごと貫通してしまった。
「ZERO様!」
アンドロメダが、俺の姿を見て青褪める。
水煙が晴れていく…左手の盾の下半分が喪失している、そして左足も膝から下が消滅していた。
右脇腹も1/3が抉れていた。
(…ちょっと、不味いなこれ…HPかなり削られたな…)
ステータスを見てみる。
LV28 HP1800/5700 MP2500/2800
(あら?いつの間にかLv28になってる…にしてもかなり不利だな。)
盾は持ち物欄へ戻す。
一覧にはアイアスシールドの名前が赤色で表示されている。
修復が完了するまで使用制限が掛かっているようだ。
(さて、どうしたものか…
波動の剣なら硬い鱗は切り裂ける…翼はまだ使えるから機動力は問題ない。
盾はないから…後は攻撃しまくって押し切るしかないな…)
「かなり瀕死じゃないか、小僧。」
「もうあきらめて帰ったらどうだ?」
「それともいっそ消滅してやろうか。」
俺は翼を広げ、もう一度空高く舞い上がった。
「勝負はこれからだよ。」
そう言って、左腕に剣を持ち変える。
そこに溶岩を強くイメージする…そして紋章の力を発動させた。
魔法陣が現れ、膨大な熱量の炎が上がる。
フルンティングを介して膨大な熱量を刀身へ集めていく。
炎が黒く変色していく…
長大な黒炎の刀身を振る。
九頭竜の頸が飛ぶ、しかし再生はしなかった。
「!!!」
傷口が黒炎に焼かれ続けている、細胞が超速再生するよりも早く
燃やし尽くしている。
(…黒い炎の巨大剣、半端ないわぁ。)
「再生できないだと?」
「小僧、貴様何をした?」
「黒い炎だと…なんだそれは?」
「…イフリートの炎か!」
「許さん、小僧!」
恐怖にかられた九頭竜が咆哮を上げて襲い掛かってくる。
下から巨大な口を開けて襲い掛かる。
俺も降下しながら躱し、斬り裂いていく。
左右から襲い来る咢を横回転しながら躱し、首を切り落とすと同時に竜の尾が降ってきた。
「!!」
避けきれず、叩きつけられ、落下していく俺に竜の牙が襲い掛かる。
胴体に牙が突き刺さる。
「いやぁぁっ!ZERO様ぁ!!」
アンドロメダの悲痛な叫びが木霊する。
俺を咥える竜の頭へ他の4つの頭が超水圧攻撃をするのに口内に水流を集める。
4つの頸は大きく口を開き、水流を高圧縮し…
高濃度のエネルギーが溜まっていく…
「…待ってたよ、それが来るのを。」
俺は、咬まれたまま左腕の炎の温度を上昇させていくと、全身が…俺を咥え込んでいる竜の頭ごと燃え上がる!
竜の頭は炎に耐えれなくなり、口を開けて悶絶する…
牙から解放された俺は、翼を広げさらに後方へ跳び退り、全身の炎とフルンティングの炎を一つに凝縮させる。
4つの超水圧砲に向けて圧縮した超々高熱の火球を撃ち出す。
超高熱の火球に向けて、超水圧レーザーが放たれる!
それが火球に接触した瞬間、超巨大爆発が起こる!
大気は弾け、雲は吹き飛びそして4つの頸は完全に消滅していた。
「…それが、水蒸気爆発って奴さ…」
「こ…こんな…ここ迄やられるとはな。」
九頭竜の頸は、残り1本の頸と黒炎に燃え続けている1本の計2本しか残っていない。
「お前の勝ちだ、俺に止めを刺すがいい…」
「…ここを通してくれるなら止めを刺す気はないんだけど…」
俺は、フルンティングを一振りして、黒い炎を消し去った。
「な…良いのかそれで?我を倒せば貴重なレアアイテムもドロップできるのだぞ。」
「ああ、いいよ別に。もう疲れたし…」
俺は、気にした風もなくそう答える。
「ふむ、…ならば次の島に行く扉を開いてやろう。」
【2ndステージクリア】
そう言うと龍の尾で湖面に波紋を作る…湖面が光、湖から淡く光る扉が出現した。
「行くが良い。我に勝ちし者よ。」
「ありがとう。」
礼を言って俺は後ろを向き、
「じゃあ、行こうかアンドロメダ。あと、肩を貸してくれないか、歩きにくくてさ。」
走って来て、肩を貸してくれる。
「ZERO様、大丈夫ですか?酷い状態ですよ…」
アンドロメダが心配してくれている。
「何とか勝てたからさ、良しとしておこう。」
「そのままでは次のステージにも差し支えるだろうから…主に選別をくれてやろう。」
九頭竜は超速再生でもう既に全部復活していた。
ゆっくりと竜の尾を俺の頭に触れさせると、俺の欠損した箇所がみるみる再生していく。
「うぉぉ?」
「気を付けていくが良い。次のステージは夜の国だからな…
多くは教えてやれんが…あそこは強さだけではクリアはできない…絆と心を強く持つことだ…」
完全回復してくれた上に、ヒント迄提供してくれたようだ。
「助かったよ、九頭竜。」
「さぁ、行くが良い。」
俺とアンドロメダは、扉から次のステージに転送された。
残された九頭竜が呟いていた。
「ご武運を、御方様…」
アリアドネは、4thステージ、
3rdステージは、謎解きに変えました。