プロローグ13 限定イベント 1の島
リアルが忙しくて更新が進まないっす…
保健室で女子にボコられた後、ボロボロになった俺を、もう一度芦浦先生に手当てして貰い。
やっと家に帰り付いた。
今日は、異世界への【転移門】が開かれるらしいので
先生と約束していた。
急いで2階の自室に上がり、
「イツツ…、全くあいつ等手加減くらいしろよなぁ…」
引っ掻かれた腕を摩りながら独り言ちる。
「先生との約束の時間には間に合ったからいいけどな…」
机の上に置いてあったSGを手に取り装着しながらベッドに横になる。
右の耳のあたりの起動スイッチを押す。
(待ってろよ、真也。すぐ会いに行ってやるからな…)
目の前の画面にグラフが表れる…
同調率240%…グラフが、オールグリーンになる。
機械音声が聞こえる。
「同調シンクロ完了しました。これより、リンクスタートします。」
景色が変化して行くとキャラ選択画面になった。
目の前の画面には、黒い鎧のアバターがゆっくり回転している。
左上にアバター名が表示されている…
Lv18 HP2700 MP1800
ネーム:ZERO
目の前に仮想端末を出し、装備を設定していく。
設定が完了したので先生が指定したフィールドをクリックする。
また、景色が変化して行く。
フィールド:ダンジョンオブキャッスルインザスカイ
広大な草原地帯の中に、ストーンヘンジがある。
その手前が、出現ポイントだった。
空を見上げると天空に浮かぶ幾つもの島々が点在しているのが分かる。
天候は快晴。爽やかな風が草原を走り抜けて行く。
『…時間通りじゃな。』
(先生、転移門の場所は判ったんすか?)
『…見つけてあるが、一つ問題がある…転移門のある場所へ辿り着く為には、このイベントをノーコンクリアしなければならん…成功すれば祭壇が出現するらしいのじゃ…』
(…なかなか大変そうですね…ノーコンクリアじゃないとってのが、かなり難易度が高そうで…)
ノーコンティニュでクリアは、かなり高難易度だな…限定イベントじゃ攻略情報もないだろうし…
『…挑戦してみるか?…このイベントは不定期のようでな…次いつ行われるかは未定じゃぞ。』
ここで挑戦しなければ次何時になるか分からないって事か…
…でも、やらなければ先には進めない!
『…我はこの世界では力が及ばぬでな…主の手助けは出来ぬからな。』
(…分かってるよ先生、これは俺がやらないといけない試練…必ずクリアして見せるさ!)
俺は、強く決意を固めるが、気負わず自然体で挑む。
ストーンサークルに進むとNPCが居た。
イベントのナビゲーションなのだろう。
見た目は、半妖精型、特徴的なのはおでこから生えた触覚の様な物と耳が少し尖っている。
目が大きくてかわいい感じの女性型だった。背には小さな羽が生えていた。
「お待ちしておりました、勇敢なる戦士様。此処は天空城の迷宮です。
戦士様にお願いがあります、最上階に鎮座しておられる荒ぶる神を封印しては頂けないでしょうか?」
〈 YES or NO 〉
「あぁ、その為に来たんだ。」
俺は、〈YES〉をクリックした。
「ありがとうございます。
私は、ナビゲーターのアンドロメダと申します。天空の迷宮攻略終了までよろしくお願いします。
それではこれより、ダンジョンの簡単な概要を説明します。」
STORY:
太古の昔、世界を統べる神同士の闘いが起こり、世界を二分した戦いに敗れた神は世界の果てに封印された。
敗れし神を封印する為に作られたダンジョンが、この〈天空城の迷宮〉である。
遥か昔に封印されてから幾星霜の刻が流れ、そして数日前、敗れし神が復活した。
ダンジョンを守護していた者達は復活した荒ぶる神の影響によりモンスター化してしまい、ダンジョン内に点在していた〈封印の神器〉がモンスターの手に落ちてしまった。
荒ぶる神の完全復活はもう間もなく…一刻も早く封印の神器を集め再び封印しなくてはならない。
「このダンジョンは5つの島で構成されていて、各島のイベントをクリアすれば先に進める扉が開きます。封印の神器は3つあり、最後の島には荒ぶる神が待ち受けています。」
「…って言う事は各島でイベントをクリアして神器を集めるってことかな?」
思ったことをつい口にした、NPCに話しかけても同じ事を言うくらいだろうし…
「違います、戦士様。神器を集めるのとイベントクリアは関係ありません。」
聞いた事を正確に答えてくれた。
「あぁ、なるほど…」
ちょっと驚いた、NPCは組まれたプログラム通りにしか動かないものなので、まともな答えなど期待していなかったからだ。
「それでは、戦士様…ZERO様とお呼びいたしますね。此れから始まりの島へご案内いたします。」
そう言って、ストーンヘンジの中央へ移動して行く。
俺は、ナビゲーターと同じくストーンヘンジの真ん中迄歩いて行った。
アンドロメダは、跪き祈りの形をとる。
「我が祈りに応え、彼の地へ誘わん事を願います。」
アンドロメダの祈りが聞こえたかのように俺達は光に包まれ…彼の地への旅に出た。
始まりの島、草原と村があり小高い山があった。山から流れてくる川は村の中央に流れている。
入り口は浮島の最下層にあり、俺達はそこへ転送された。
石造りの階段が地上まで続いているようだった。
下を眺めると、さっきまでいたストーンヘンジが直径1cm程度に見えている。
かなりの高度に転送されたようだった。
「それでは、注意事項がありますので説明いたします。
①飛行制限:飛行能力は使用できますが高度制限があります。次の島まで飛んで行く事は出来ません。
②武器・装備制限:ダンジョン内で手に入れた武器や装備以外は使用できません。
③魔法スキル制限:ダンジョン内で手に入れた魔法スキル以外は使用できません。
④プレイヤーはナビゲーターを必ず同行させる事。
説明を終了いたします。守って頂く注意事項はこの4つだけです。」
(①はイベントの性質上仕方ない措置だな、②と③は通常装備だとダンジョン内の敵には効かないって事だろう…④は移動制限かな…最速で走り抜けたり出来ない様にしてあるって事かな…)
「了解した。…となるとモブがアイテムを落としたりするのかな?」
質問してみた。
「ザコ敵からも入手は可能です。ボス級モンスターや宝箱からも入手できます。」
アンドロメダは即答で返事を返してきた。
「それじゃあ、先ずはモブ倒しまくって装備ゲットだな。」
俺達は、石の階段を上り始める。
(最初の定番は、スライムとかゴブリンかなぁ。)
「ZERO様、敵が来ます!気を付けて下さい。」
アンドロメダが、教えてくれる。
(…気配がしないな、プログラムだとやっぱり分かんないんだろうな…)
モンスターが現れた。
ミノタウロス:Lv18 HP3500
「えぇ?!…半人半牛が初期モンスターって在りなの?」
つい、口から声が出た。
予想もしなかった展開で…中ボス級の敵がザコ敵扱いだった事にかなり動揺した。
「危ない!」
アンドロメダが、叫ぶ。
半人半牛が振り上げた戦斧が、振り下ろされる。
間一髪で避けたが、戦斧の威力は凄まじく激突した石畳の地面を粉砕する。
「?!」
(マジで、中ボス級じゃねぇーか?!)
一回転して立ち上がった俺に追撃はなく、戦斧は次にナビゲーターを襲う!
「なっ?!」
「キャアァァ…!」
俺は反射的にアンドロメダにタックルし戦斧の攻撃を凌いだ。
(嘘だろ?…モブがNPCに攻撃するとかあるのかよ?
仮にイベントの一環にしても…NPCに攻撃するなんて…)
「…注意事項④か!必ず同行させるっていうのは、NPCを守りながら進まないと辿り着けないって事か!」
「…すみません、ZERO様。」
俺の胸の中で小さく謝るアンドロメダ。
(…難易度が高過ぎだろ。…それより先に半人半牛を倒さないと!)
襲い来る戦斧を交わしつつアンドロメダを柱の陰に隠し、俺は、半人半牛の懐に潜り込む。
(此処なら戦斧は、振り回せない…)
巨大な拳が轟音を立てて襲い来る、左腕でガードしたが反対の石壁に叩き付けられる。
「がはぁっ!」
地面に突伏した俺に戦斧が追い討ちを掛けて来る。
「ZERO様!」
アンドロメダの声のお陰で何とか戦斧を回避する。
(くそッ、どうする?このままじゃ…)
立ち上がろうとする俺の目に更に2体の半人半牛の姿が見えた。
「ヤバイな…」
その時、アンドロメダが柱の陰から飛び出してくる?
新たに現れた半人半牛の前に躍り出る。
「ZERO様、此方は私が惹きつけますのでお早く!」
(囮になるって?!)
鈍重な動きの半人半牛の背後に回り込み、全身に力を溜める…気が溢れ出す。
「おぉぉ…ッ!」
超高速で走り出し手刀を固める。
黒い線が閃き、半人半牛を肩口から斬り落とし、スピードを殺さず反対側の石壁を蹴った反動でアンドロメダの方へ跳ぶ。
アンドロメダに襲いくる戦斧を右の手刀で弾き、回転しざま左の手刀で半人半牛を斬って捨てる。
着地と同時に足先に意識を集中させ、回転しながら回し蹴りを放つ、足先に黒い線が閃き、半人半牛の胴体を寸断した。
「大丈夫か?ったく、無茶すんなよなぁ…」
アンドロメダに声を掛けて、気付く…
また、NPCに声を掛けちまった…と言うか、本当にプログラムなのか?と思う程に動きが自然過ぎる。
「はい、ZERO様のお陰で怪我はしていません。
それよりも、今倒したモブが変化してアイテムをドロップしますから、ゲットして下さい。」
倒れている半人半牛を見ると、ポリゴン化しアイテムに変化していく。
「アイテムは、時間が経つと消滅しますので気を付けて下さいね。」
アンドロメダが、説明を追加する。
(やっぱり、普通のナビゲーションNPCだよな…)
アイテムを拾いに戻って見ると変化したドロップ品が落ちていた。
〈ポーション小×3〉
(ま・じ・っ・す・か?…あんだけ強かったのに貰える物ちゃちくない?!スライム並みだよ…)
と言いつつ、ゲットして持ち物に入れて置く。
「それでは、先に進みましょうか。」
そう言って、奥を指差す先に…単眼の巨人が、群れでやって来るのが、見えた…
(…おいおい。)
一時間後、地上に建てられた石の祠から飛び出して、
「やっと出口ダァ〜〜〜ッ!」
草原に仰向けに倒れ込む。
よく見れば全身キズまみれの状態だった。
「どんだけハード何だよ、このイベントダンジョンわ!あんだけ倒したのにゲットできたアイテムってポーションだけだし…」
あの後、数百体のモブを倒し、罠や仕掛けを何とかクリアして来た…
後からゆっくり出て来るアンドロメダに見下ろされ、
「お疲れ様でした。これでチュートリアルは、終了となります。」
「はぁっ?∑(゜Д゜)チュートリアルだとぉ!」
嘘だろぉ、こんなハードなチュートリアルがあってたまるかよ!
俺は、立ち上がる気力すら失せてしまった…
「さて、それでは回復の泉でキズを癒した後、〈神託の祭壇〉へ向かい、そこで長老達に会ってもらいます。」
アンドロメダは、俺の気持ちに鞭打つように、淡々とストーリーを進めて来る。
(…休憩もさせて貰えない…のね。)
俺は、諦めて重たい身体(気持ち的に)を起き上がらせる。
祠から少し歩いて行くと泉が湧き出ていた。
そこへ入るとみるみる傷が回復していく…しばらくするとHPもMPも満タンになった。
(…これ良いねぇ、なんか気持ちも元気なった気がする…だけ、だけど…)
心身共にリフレッシュ?して〈神託の祭壇〉へ向かう。
村の中央に石造りの神殿が立っていた。
長い階段を上がって行く。
神殿の入り口にある堅牢な木製の扉の前に到着すると、アンドロメダが俺より一歩前に出る。
「復活せし荒ぶる神を鎮める為、起ち上がられた勇敢なる戦士様を連れて参りました。
願わくば、尊き神託を授からんと欲します。」
祈るように両手を前に組み、強い意志の籠った言葉でお伺いを立てている。
「…入るが良かろう。」
中から年寄りの声が聞こえた。
頑丈な木扉は音を立てて開き始める。
扉を入ると中は薄暗かった。
松明が灯されている通路を進むと広間に出た。
広間の中央に祭壇があり、それを囲む様に5人の長老が鎮座している。
アンドロメダに誘われ、俺は祭壇の前まで進み出る。
「よう来られた、戦士殿。ここが、〈神託の祭壇〉じゃ。」
「ここでは、其方が荒ぶる神を封印する者として相応しいかどうかを見極めさせて貰う事になる。」
「我等、5名の問いに偽りなく答えるが良い。」
「すべての質問を終えた時、神託は下されるであろう。」
「さぁ、進み出て祭壇にある真偽の石碑に両手を置くのじゃ。」
長老達に言われるまま、俺は祭壇の前まで歩いて行き、真偽の石碑に両手を置いた。
アンドロメダは後ろに控えている。
(…どんな質問が来るんだ…返答次第ではイベント終了って事だよな…)
俺は固唾をのんで質問を待った。
「では、まず儂からの質問じゃ…」
(…)
「戦士殿…お主の好きな女の名前を言ってみなされ。」
(は?)
しばしの沈黙が流れる…
「早よぉ、答えなされ!」
「あ…えぇ…と、今はいないっす…」
催促されて、俺はどもりながら答えた。
「ふむ…嘘はついておらぬようじゃ、じゃが17歳にもなって好きな女の一人もおらんとは不甲斐ないのぉ。ふぉっ、ほほほ…」
長老が爺さんの笑い方をしている。
(ほっとけよ…ってどんな質問だこれ?)
「では次の質問じゃ…」
別の長老が質問し始めた。
(…)
「お主に荒ぶる神を封印する事が出来ると思うかの?」
「勿論だ。」
俺は即答した。
「頼もしいのぉ、さすがは戦士殿じゃな。その心意気や良し。」
「次は儂からの質問じゃが、その前に…戦士殿は、友人や親友と呼べるものは居るかの?」
「友人は何人かいます、親友も一人います。」
「なるほどの…では質問じゃ。崩壊しかけている世界で、親友の命か世界を救うか2択を迫られた時、主はどちらを選択するかの?」
別の長老から3つ目の質問が投げかけられる。
しばし、考えた後俺は答えた。
「3択目を選択するさ、俺はどちらも救う!」
「…甘っちょろい選択じゃな…じゃが嫌いではないのぉ。」
長老はにこやかに言っていた。
「4つ目の質問じゃ、多数が勝利する為には、少数を犠牲にしなくてはならない事もあると思うかの?」
次の長老が質問を始める。
「何をするにしても犠牲は付き物だと思う…」
この質問は…かなり難しい…
「でも俺は、勝利よりも少数をとるかもしれないし…」
まともに答えていなかった…
「選べぬという答えか…それもありじゃろうて。」
感慨深げに呟く長老。
「では最後の質問じゃ…というよりはお主の真意を問う。」
最後は真ん中に座っている長老だった。
「この先、如何なる事があろうとも、意志を曲げることなく荒ぶる神を封印する事を誓うか?」
「誓うさ!何が在ろうと封印して見せる!」
俺は強い決意でそう答えた。
(異世界に戻るには…真也を探しに行くには、封印して先に進むしかない。)
「…良かろう。我等の認めし者に【神託】を与えることとする!」
最後の質問をした長老がそう告げると石碑においていた両手が淡く赤い光を発し始める。
赤光は光量を増し、両方の手首に光の輪を作る。
一瞬目も眩む様に光り輝き、収束して両手首に消えて行った。
「誓いにより神託は成された、この者を【封印せし者】と認める!」
長老全員で宣言する。
頭上に浮かぶ文字、
【 CONGRATULATIONS 1ST CLEAR 】
「おめでとうございます、ファーストステージクリアですね。ZERO様。」
アンドロメダが、近寄ってきた。
「これがこの島のイベントだったのか?」
俺は質問してみた。
「はい、神託を受けるのがクリア条件です。」
アンドロメダが、にっこりと微笑んで答える。
(…なんか以外にあっけなかったな。)
「それでは、次のステージの扉が開いておりますので先に進みましょう。」
祭壇の奥の扉が光っている。
俺とアンドロメダはそこに歩いて行き扉を開ける。
次のステージに進む為に…
島を5か所にしてしまったのでもうしばらく異世界には帰れませんね…ハァ…
何時になったら本題の2重生活が出来るのやら…