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プロローグ10 準々決勝(校内戦)



4回戦も終わり、明日は準々決勝。

アバターの調整を済ませて教室へ戻ったが、真也は来ていなかった。


「怜君、居る?」

桐島莉奈が教室に入ってきた。彼女も4回戦で勝ち残った一人だ。


「莉奈。どうかしたのか?」


「なんか生徒会の人が4回戦で勝った人を呼んでるんだって。怜君も一緒にどうかなって思って。」


「ああ、じゃあ一緒に行くよ。」


俺は莉奈と一緒に生徒会室に行く事にした。

生徒会室までの間に莉奈と雑談する。


「今残ってるのは、あたしと怜君でしょ。あと生徒会長さんと副会長さん…あとは、瀧川さんかな。」


「瀧川って人も生徒会だったよね?」


「そうだよぉ。剣なら生徒会長よりも強いって言われてるみたい。」


「ふ~ん。…にしても莉奈も強いよな。」


「え~、そんな事ないよぉ。ゼロ君に比べれば…」


(…ゼロ君?)

生徒会室についたのでドアをノックすると中から入るように声がした。

中に入ると生徒会の3人は先に来ていた。


生徒会長が着席を促す。

「好きな処に座ってください。」

俺と莉奈は入り口近くの椅子に座った。


「わざわざ呼び出したのは、貴方達に一つ確認したいことがあったからです。」

生徒会長の藍田香織が話す。


「確認したい事?」

俺が聞き返す。


「桐島さん、貴女の事は瀧川君から聞いたので分かってます。貴女は王国側の人間ですね?」


(王国側の?、何の話…?)


「…ええ、あたしは王国近衛隊 翠組【聖樹の剣士】のリーナです。」

莉奈は赤い縁の眼鏡を外して答える。


(なにそれ?王国衛士隊?)


「そうですか…私と副会長は帝国側の【召喚者】です。」

藍田 香織もそう答える。


(…帝国側?…【召喚者】?…全く話についていけないんですけどぉ??)


「瀧川君も王国側だから話は聞いてると思うけど、この世界には協定があるからちゃんと順守してね。」


「えぇ、分かってます。」

莉奈は肯いて見せる。

それを見てにっこり微笑む生徒会長がこちらを見る。


「それより、問題なのは貴方ね。戦い方を見る限りは、貴方も【召喚者】の様だけど…何かが違う気がするんです。御上君は、向こうの世界ではどこの勢力に入ってるのかしら?」


一同が俺を見るが状況を理解できない俺は…


「…あんた等が話してることが理解できないんだけど…どういうことか説明してくんないかな?」


「…いいでしょう。」


生徒会長の説明は端的で解り易かった。

俺が行っていた異世界(アナザーワールド)では、召喚士達の儀式により【選ばれた者】、すなわち仮想現実の世界にいるアバターを召喚するらしい。

召喚されたアバターは【召喚者】と呼ばれ、世界を渡る時に〈異能の力〉を授かる。

【召喚者】はある一定の期間しか異世界(アナザーワールド)に滞在できないらしく、こちらの世界に戻ってくる事になるそうだ。一度異世界(アナザーワールド)に召喚されると彼方ではアバターが自分の肉体になっているので、此方に戻ってくれば、シンクロ率100%になる上に、〈異能の力〉は消える事はない。


(生徒会長達や莉奈も異世界(アナザーワールド)に行ったことがあるってことか…俺とは少し違ってるけど…)


俺は思ったことを聞いてみた。


「それじゃ、一度戻ってきたらもう異世界(アナザーワールド)に行く事は出来ないのかな?」


「いいえ、戻ってきたアバターにはどこかに【召喚紋】があります。それでいつでも異世界(アナザーワールド)に渡る事が出来ます。」


「そうなんだ…」


「しかし、貴方は異世界(アナザーワールド)の事は知っているのに召喚の事は何も知らない…

やはり【召喚者】ではないのですね?あなたは一体…」

もう一度、藍田香織に質問された。


「彼は、たぶん【転生者】ですよ。」

俺の代わりに莉奈が答えた。


「えっ?なんでそれ…知ってんの?」

つい口を滑らせた…


「やっぱり…王都でそんな噂を聞いたんです。」

莉奈がにっこり微笑んだ。


「なっ?【転生者】などいる筈がない!」

副会長が言い放つ。


「万一【転生者】だとして、転生した者がこちらにどうやって戻ってくる?」

瀧川総司も疑っているようだ。


「お静かに!異世界(アナザーワールド)に関する情報や行動はこちらでは【禁忌(タブー)】です。」

生徒会長に言われて二人とも黙る。


「今日来てもらったのは、異世界(アナザーワールド)を知る者同士、親交を深めこちらの世界での制約を再確認して貰う為です、詮索する為ではありません。今日は此処までにしておきましょう。」


俺と莉奈は席を立ち、

「じゃあこれで帰るわ。」


「次は校内大会でお手並み拝見させていただきますわ。」

生徒会長が席を立ち、こちらに小さく手を振っている。


ドアを出て行こうとする俺にもう一言、

「あぁ、そういえばあなたのお友達の神宮寺君でしたか、彼も今召喚されているみたいですね。」


「?!」



――――――――――――――――――――――――――




準々決勝の朝、

登校途中に彩芽とあった。

「真也、どこに行ってるかあんた聞いてないの?」


「お、俺は何も聞いてないよ…」

突然聞かれて焦ったせいでちょっとどもった。


「ふ~ん。まぁ、いいけどさぁ。あたしにも話してってくれないって水臭くない?幼馴染なのに。」


「だなぁ…俺にも話してくれなかったしな…」

二人して無言のまま教室へ向かった。


教室ではクラスメート達が絡んでくる。

「怜、すげーなベスト5だろ?今日勝てばベスト3だぜ!!」

「ホントだよなぁ、いつの間にあんなに強くなったんだよお前?」

「強くなり方教えろよぉ。」


(…うざいなぁ…いつもは声も掛けて来ない癖に…)

校内放送が流れる

《準々決勝出場者の方は、仮想現実(VR)教室のほうへ集まってください。》



対戦表では、


副会長:梶原拓海×桐島莉奈

    瀧川総司×御上 怜


会長は明日のトーナメント優勝者との対戦になる。

準々決勝からは時間無制限で対戦が行われる。    


ポッドに入っていく対戦者達。

俺の隣のポッドで莉奈が手を振りながら

「お互い頑張ろうねぇ~。」


「莉奈も頑張れよ。」

そう言ってお互いポッドに入っていく。


ポッドが起動し仮想現実の世界にアクセスして行く。


フィールド:夜のベイサイドブリッジ、天候 雨

仮想現実の世界でプログラムが一番難しいのが天候だと言われている。

雪は比較的早く再現できたようだが、風や雨は再現するのに民間企業の技術者が30年掛けて成しえなかった。

だが、この体験型仮想現実世界(VR-EX)では完全に再現されている。


風雨吹き付ける橋の上に黒と銀2つのアバターが出現する。

漆黒の金属製のスーツに長剣を携えている俺と

銀に青い装飾が入った金属製のスーツに日本刀を携えている瀧川 総司

青銀のアバターの右上にアバター名が表示されている。


〈セイリュー〉


日本刀を鞘から抜き放ち正眼に構える。

「お前の真偽をこの刀で確かめさせて貰う。」


「瀧川、お前なんか堅いな…もう少し気を抜いた方が良いと思うよ。」


(…こいつかなり強いな…)


『主は…最近、毎日のように【召喚者】と戦っておるな…まぁ、これほど頻繁に戦えれば学ぶ事も多いじゃろ。」


(…って先生、【召喚者】と戦ってたの知ってたんすか?)


『?、主は知らなんだのか?』


(…はぁ~、知らないのはいつも俺だけかよ。)


俺は腰を少し落とし、長剣を右下少し後方に向ける。

正眼に構えている日本刀の剣先から迸る殺気。


(…なんかわくわくするな、強いやつと戦うのって怖いけど…なんか楽しいな。)


『…強さへの渇望…少しづつ心が変化しておるのか…もしれんな。』


「行くぜ、セイリュー!」


俺は、一足で間合いを詰める、長剣は体に隠れて相手から見えないように持っている。

正眼の構えは攻守一体の構え…ギリギリ迄剣を見せない様にして間合いに入った瞬間、長剣を超速で斬り上げる。

セイリューは動いた様には見えなかった、しかし長剣はそのまま空を斬る。

返す剣もまた瞬速、しかし、また空を切る。

セイリューの右手が動く、緩やかに動いたかに見えたその刀は俺の喉元に届く…間一髪長剣で弾き返す。

たまらず後方へ飛び退る。


(めちゃくちゃ強ぇ~~~ってか愉しい。)


『この者は中々良い動きをしておるな…』


(こっからっすよ先生、俺も本気モードでやるっす。)


「様子見といったところか…そろそろ本気で掛かって来い!」

そう言うと、セイリューが八双に構える。


「あぁ、言われなくても全力でいくさ!」


言うなり、俺は高速移動で攪乱しながら剣撃を交える。

横に走り抜けながら剣撃を打ち合う、後方へ飛びさらに上空へ跳んでも剣撃は打ち続けている。

着地と同時にお互いの方へ弾ける様に向かい、剣を打ち合う。


「俺と互角に渡り合えるとはな…だが俺も【鬼神の剣豪】の名を冠する者として本気で相手をしてやろう!」


〈鬼闘法〉


セイリューの額に角が生え、身体が隆起して行く。

体格が1.5倍程になり、全身から溢れ出す凄惨な鬼気。


(な、何あれ?)


『…形態変化じゃな、先程よりも更に強くなっておる。』


(それ反則でしょ?アバターでそんな事も出来るの??)


「いざぁ!!」


八双の構えのまま地面を蹴り超速で跳ぶ、蹴った地面が吹き飛んだ。

八双の構えから繰り出される超速の剣、俺はほぼ無意識に半身身体を捻り躱した。

剣の凄まじい破壊力は、地面を斬り裂き衝撃で陥没した。


「!」


陥没した地面を更に蹴り上げ、下から斬撃を跳ね上げる。

長剣で受けた、

腕が吹き飛んだかと思う程の衝撃が伝わる。

長剣ごと身体が撥ね飛ばされ一回転して地に伏し、間髪いれず剛刃が襲って来る。

横に回転しながら何とか回避し立ち上がる。

目の前に剛刃が迫る、

長剣を水平にして両手で受ける、

壮絶な衝撃を受け膝が落ち、俺のいる地面が陥没する。


「どうした、そんなものか?」


「くっ…」


衝撃を受けきり鬼刃を弾き返す、ゆっくり立ち上がる。


「まぁ、俺の剣をまともに受けて立って居たのは王国衛士長くらいだがなぁ。」


「…王国衛士長(グラムのおっさん)知ってるんだ?」


「あぁ、グラムノーツ衛士長とは、王都で手合せした事がある…?」


(また…余計な事言っちまった…)


「お前、衛士長と知り合いなのか?」


「ん、ぁあ、ちょっと顔知ってるってだけ…それより他に強い剣士はいるの?」


「…まぁ、あの国で俺より強い剣士は、数人いるが…あのエルフの剣聖だけは別格だな、あの方は別次元の強さだよ。」


(…ミランジュさん、やっぱり有名人何だ。)


「さて…そろそろ息も整ったし、続きやりますか。」

長剣を一振りし、斜に構える。

腰を深く落とし、精神を集中させていく。


「…何だ、さっきまでと雰囲気が…。」


セイリューから鬼気が溢れ出してくる。

今度は正眼に構えを取っている。


「…来い!」


意識を集中させ右脚に溜めた力を解放する。

一瞬でセイリューの前に現れ、長剣を叩き込む。

その剣を弾こうとしたセイリューの背後に俺が現れる。


「!」


剣に溜めた力を解放し、高速回転して長剣を叩き込む。

セイリューは、超速で半回転し刃で俺を薙ぎ払う。

左脚に溜めた力を解放、

薙ぎ払った刀が俺に当たると同時に再び背後に現れ、頭上に現れ、左右に現れる。


「?!」


セイリューは、一瞬で総てを斬り捨てる…その目の前に現れた俺の右腕に溜めた力を解放して、袈裟斬りに振り下ろした。

剣の威力は、セイリューを突き抜け、背後の橋を真っ二つに斬り裂いた。


セイリューも二つに分かれ消える。



【Your Wins】



接続ポッドから起き上がる。

先に出ていた瀧川総司が、立っていた。

ポッドから降りる。


「御上…お前さっきの技は、剣聖の…。」


「なぁ、瀧川。楽しかったなぁ。」

俺は、にっこり笑いながら言った。


「…いや、何も聞くまい…また、闘おう。次は俺が勝つ!」


総司は、部屋から出て行った。


後ろで声が聞こえ、

「あ〜〜ん、負けちゃた。」

莉奈が、ポッドから降りてきた。


「あれ?怜君、先に終わってたの?勝った?」


「あぁ、勝ったよ。苦戦したけどな。」


「すごいね、セイリューって王国一の剣士だよ!怜君勝てちゃうんだぁ…」


後から副会長が、降りてきた。


「…お前、手を抜いていたのか。」

莉奈に問い掛ける。


「えぇ、抜いてないですよ?」


「そうか…」


そう言うと、副会長も部屋を後にする。


「俺達も戻ろうか、腹減ったし…」


「お腹空きましたね、もうお昼回ってるみたいです。」


俺と莉奈も部屋を後にした。



――――――――――――――――――――――――――



フィールド:天空城 夜

天空に浮かんだ半径5キロ位の浮島、そこに建っているのは純白の城

中央付近にある円形の闘技場その傍には湖と丘がある、

闘技場の真ん中に俺は立っていた。両手に小剣を持て居る。


(腹いっぱいくったなぁ、今日の学食旨かった!)


『主はいつも腹が減っておるな…』


両手に持った剣を軽く振り回し、ゆっくり流れるように剣舞を始める。


(育ち盛りなんで。それより、先生(リューヴェルド)(ゲート)〉は見つかったすか?)


『…そうじゃな、大体の場所は分かっておる。』


(何処にあるんすか!)


『…主は、あの者を捜しに行きたいのだな。』


(俺の親友なんです…すごく大切な…)


『…ふむ、じゃがあと数日待たねば成らん。この世界に今はゲートは存在して居らぬ。』


(それって…)


『…その時が来れば判る。』


(…それなら、今心配してても何も出来ないんすね…だったら、身体動かして鬱憤晴らそう!)

ゆっくり流れる剣舞に【双影身】を乗せてみる。

流動的に数人の俺の影が増え剣舞を続ける…剣先に魔方陣を乗せ、振る剣に黒い剣筋を曳く。


そのまま降り抜くと黒い剣閃が飛ぶ。

超速で飛ぶ黒い剣閃は闘技場を切り裂き、湖を割っていく。

ゆっくり流れる剣舞の中で翼を広げ、舞いながら空に飛んでいく。


2本の剣をづ上で交差させ魔方陣が浮き湖へ向けて剣を振り下げると交差した2本の黒い剣閃が湖に向かって飛んでいく。

湖面を揺らすことなく剣閃が沈んでいく、島の反対側から現れる剣閃、そこから湖の水が流れ出す。


(…まぁまぁ、かなぁ。)


『…主も少しは熟練度を上げておる様じゃな、これまでの【召喚者】との戦い方をまねるのはでなく、自分の中で練り上げ昇華出来る様になっておる。』


(おっ?先生が俺を褒めるなんて初めてじゃないっすか?)


『…たまには嘘でも褒めんとな、主のやる気が無くなっても困るじゃろ。』


(嘘かよ~~~~~~~ッ?!)



準々決勝が終わり、明日の決勝の為の調整も粗方出来た…

親友の顔が浮かんだが、俺はそれを振りきる。

仮想現実世界の空は晴渡り、俺の心を映しているようだった。


















次回、魔法戦にしてみようかと思います。(あまり考えてない…

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