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迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


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獣は獣道を行かん③

 クランベルの話では、受付にいた職員がアルカという狼々族(ろうろうぞく)とレリルが一緒にいたのを見たそうだ。


 アルカはそのあとすぐに迷宮へと出発したが、レリルを連れていく申請が出されていなかったので気になってクランベルに伝えてくれたのだという。


「たまたま一緒にいただけで迷宮に付いていったんじゃないかもしれない……そう思って捜しながらここまで来たの。でも、いないのよ――どこにも!」


 クランベルはレザがいるために口にはしなかったが、アルカという奴が【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】なのは間違いない。


 ――【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】と一緒かもしれないってなんだよ……? どうして……!


 クロートの胸に広がるのは暗鬱とした黒い雲。


 ハイアルムから話を聞いたときに感じた不穏な考えが頭から離れない。


 ――世界マナリムにマナを循環させるために【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】はいる。それはわかってる。……でも、まさか。


 絶望に満ちたクランベルの表情に、クロートはぎゅっと手を握った。


 彼女はクロートと同じ懸念を抱いているのかもしれない。


「なあ、なんであんたは女の子が自分のせいでいなくなったと思ってるんだよー?」


 そこで声を上げたのはレザだ。


 彼はふわふわした金色の髪を揺らして、へたり込んだままのクランベルを覗き込む。


 飄々とした言葉とは裏腹に猫のような翠色の目が鋭く光っていて、クランベルは震える声を必死で隠そうと深呼吸を挟んだ。


「……私、レリルと会ってたのよ、その前に。相談されて……言わなきゃよかったのに、言っちゃったの。『あなたの知りたいことを話せるのはクロートとハイアルム様だけ』って――」


 ハイアルムと聞いて、レザが途端に嫌な顔をする。


 クロートはその言葉に息を詰め、小さな声で言った。


「俺が話さないこと気にして……クランベルに相談したのか? あいつ」


「……ええ。だからきっとハイアルム様に直接聞きにいったんだわ。そこでなにかあって、レリルはアルカと……」


「……ッ、ハイアルム、俺に決めろって言ってたのに――!」


 クロートは歯を食い縛るとすぐにハイアルムのところへと向かおうとした。


 レザがそれを見てクロートの肩に――有無を言わさない力強さで――手を掛ける。


「ちょっと待ってよ。俺にもちゃんと教えてくれるー? あんたたち女の子になに隠して……、ッ!」


 しかし彼の言葉は、最後まで紡がれることはなかった。


 すーっと音もなく扉が開いて、レザが唸り声を上げて飛び退いたのだ。


「――なにしに来たんだよ!」


 彼の手は双剣の柄に添えられているが、来訪者はまったく意に介さない。


「妾はここの責任者であるのに――失礼な扱いだの」


 しゅるりと衣擦れの音を引きながら、少女の容姿を持つ『マナの生命体』にして『ノーティティア』を統べる者――ハイアルムが入ってくる。


「悪いがクロート。妾は話しておらぬぞ? ……せっかくアルカの情報提供に来てやったというのに、酷い濡れ衣よの」


「ハイアルム様……!」


 クランベルが驚いたように声を発して立ち上がるのを、ハイアルムは黙ったまま右手で制した。


 冴えた月の色をした絹のような髪が、彼女の動きに合わせてさらりと滑らかに揺れる。 


「……レリルはガルムが無事だと聞いて安堵しておった。同時に、話せない内容とはガルムのことではなく『自分がもう必要のない存在だと告げること』――そう思い込んだようだの」


「ハイアルム。アルカって奴はどこの仕事を請けたんだ?」


 クロートはハイアルムの話に被せるように早口で捲したてた。


 彼にはこの一分一秒がレリルのすべて――その存在までをも左右するかのように思えるのだ。


 焦っていてはまともな判断ができないことはわかっているが、心は急げ、早くと訴えてくる。


「請けたのは【ムルシアタンの迷宮】調査だの。――王都の北、しばらく進んださらに先の迷宮だ。けれどアルカが向かったのは【ネスメイラ迷宮】であると妾は睨んでおる」


「【ネスメイラ迷宮】?」


「――その昔、世界マナリムと繋がるために造られたという深い人工迷宮よ」


 繰り返したクロートにクランベルが短く教えてくれる。


 クロートはひやりと冷たい手が背中に触れたような気持ちの悪さを感じた。


 ――世界マナリムと繋がるためだって? ……そんなところにレリルを連れていってどうするつもりなんだよ、アルカって奴は……!


「アルカは『ノーティティア』において申し分ない働きをしておる。己の行動には誇りを持つ奴だの」


 ハイアルムはそう説明し、クランベルに向き直った。


「クランベル。仕事を与える。誰かを連れて【ムルシアタンの迷宮】に向かうがよい。――クロート」


「わかってる。俺は【ネスメイラ迷宮】に行く」


 クロートは頷くと、警戒を解かないレザを見た。


 少し前、クロートは考えたことがある。


「レザ――お前、『ノーティティア』に入る気はないか?」


 いっそ、レザも【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】にしてしまえばいいのではないか……と。



おはようございます!

本日分です。

よろしくお願いしますー!

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