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迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


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それは絶対の覇者たるか⑦

******


 センチピーディオを仕留めてから二時間は経っただろうか。


 ここまで何度も枝分かれしていたにも関わらず、アルは【ダルアークの迷宮】を迷いない足取りで進んでいく。


 クロートが不思議に思って聞くと、なんと彼は迷宮の地図を暗記してきたという。


「地図はお前ら『ノーティティア』から購入したんだ――精度が高いからな。……現物はレザが持っている。万が一のときはレザから離れるなよ」


「わかりました」


 アルの言葉にレリルが神妙な顔をして頷いたが、その隣で当のレザはへらっと笑う。


「そもそもアルから離れなければいいんでしょー? 平気、平気―!」


 アルはその様子に盛大にため息をつくと、首の後ろで結んだ長い赤髪を揺らして言った。


「レザ。緊張感を持て。警戒を怠るのもやめろ馬鹿」


『アルテミ』の面々はその会話に笑ったが、彼らが常に警戒しているのはわかる。


 ――そうだ、ここは迷宮なんだ。


 クロートはぎゅっと手を握り、息を深く吸い込んだ。


 警戒しても、しすぎることはない。


 ルクス――核を使ってあたりを照らす道具だ――の明かりの向こうには、いまも深い闇が満ちている。


 一度呑み込まれれば、自分の指先すら見えないだろう。


「ま、気を付けろってこったな。あと少し進めば広場がある。今日はそこで休憩だ、気張れよ」


「俺たちは全員ルクスを持っているからな。万が一はぐれても明かりには困らないぞ」


 そこで難しい顔をしているクロートを気遣ってか、『アルテミ』の面々が軽い口調で話しかけてくる。


 ――この人たちも地図を暗記してんのかな……。


 そう考えながら、クロートはひょいと肩をすくめ、おどけてみせた。


「はぐれないように気を付けるよ」


******


 言葉どおり、しばらく行くと広場に出た。


 アルは広場から続いている道――クロートたちがやって来た道と、その向かい側にある道の二本だ――のすぐ近くにルクスを設置し、自分たちの手元にも新しく灯す。


 別の『アルテミ』の面々も言っていたが、彼らは各々がルクスを持っているらしい。


 それなりに値が張る道具なので、ひとり一個以上のルクスを所持できる『アルテミ』が優れた組織であることは想像に難くない。


 そのルクスによって広場は煌々と照らし出され、はっきり見通すことができるようになった。


 クロートたちが全員入っても余りある広さ。ところどころ鋭い岩が突き出し、天井からはびっしりと並んだつらら石が垂れ下がっている。


 ――これなら、警戒しやすいな。


 クロートはほっと吐息をこぼすと、さらに視線を巡らせた。


 ……道から離れた一画が、クロートの背丈と同じくらいの段になっているようだ。


「よし。あそこで食事して、そのまま順番に休憩だ。しっかり休めよ」


 アルも気付いていたらしく、今日はその上で休憩を取ることになった。


******


 クロートの見張りの時間はアルと一緒だった。


 二時間ごと、四組が交代で見張りをするのだが、彼らは一番最後の組である。


 アルは核を燃料にした時間がわかる道具を持っており、いまが早朝だと教えてくれた。


 ゴツゴツと固い床――その少しでも平らな場所を選び座ったまま眠ったクロートは、軋む体を起こそうと伸びをする。


 向かいには『アルテミ』のふたりが同じように見張りに立っているのが見えた。


「お前には話していなかったな」


「……ん?」


 そこで唐突にアルが話しかけてきたので、屈伸をしようと身を屈めたクロートは、しゃがんだままアルを見上げた。


「レリルには話す時間があったんだ。お前に話さないのは不公平だと思ってな。――俺の部隊は全員、身寄りがない」


「……そうなんだ」


 クロートは体を起こすと、できるだけ落ち着いた声でゆっくりと相槌を打ち、そのまま黙ってアルの言葉を待った。


「皆、人間に家族を殺された。だから俺たちはここにいる。自分の家族の命を奪った奴を、この手で狩るためにな」


「……」


 クロートはそれを聞いて、自分ならどうするのだろうかと考えた。


 もしガルムが誰かに命を奪われたとして、復讐――そう、復讐以外のなんでもない行為だ――に、身を染めることができるだろうか。


 ――憎い相手の命を狩る――その選択、か。アルたちはその選択をしたんだな……。


「だがレザは違う。あいつは目の前で家族を奪われただけでなく、惨い仕打ちを受けたんだ。――体の傷を見ただろう? そのときに、どこかが欠けてしまったようでな。己の命を軽視した行動を取り、命を狩ることになんの抵抗も感じていない」


 クロートはその話に息を呑んだ。


 いまアルがその話をするのはレリルにも話したからだ。


 レザの話は、人の命に関わることに敏感な彼女にどんな思いを抱かせただろうかと……クロートは知らずぎゅっと手を握る。


「俺らはレザになにも教えてはやれない。――あいつには、同年代の友が必要だ」


 アルの声音は落ち着いていたが、レザへの心配は十分に感じ取ることができた。


「……あんたら、家族なんだな……」


 クロートはレザがいるはずの場所に目を向け、思わず呟く。


 アルは腰に手を当て、ふっと吐息をこぼすと口元を少しだけ緩めた。


「そう見えるのならいいんだがな――。クロート、レザと仲よくしてやってくれ。――頼む」


 クロートはアルの言葉に苦笑を返す。


 レリルとレザと一緒に三人で『祈祷祭』を回ったが、レザの自由奔放な行動と言動にだいぶ振り回されたのを思い出したのだ。


「なに言ってんだよ、自分たちで面倒見てくれよ。――俺は俺で、自由にあいつと話すからさ」


 アルはそれを聞くと、今度こそ大きく笑みを浮かべ、くくっと喉の奥を震わせた。


「言ってくれるな」


ちょっと過ぎましたが書けましたので投稿!

よろしくお願いいたします。

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