表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/203

組織にとってはこともなし②

「アーケインの奴は無法者に用があるって言っていたからな……少なくとも、協力していたわけじゃあねぇだろう。『アルテミ』が動いていたのも当然知ったうえで【シュテルンホルン迷宮】に来た……俺はそう考える」


 ガルムはそう言ってから、前を指さした。


「水場だ。とりあえず飯にするぞ」


******


 ガルムは火を起こす道具――小さな核で使用することができる――を持っているので、焚き火をするのはかなり楽だ。


 からからに乾いた堅いパンと、簡単なスープ。


 焚き火を囲んで食べた食事は決して豪華ではなかったが、それだけでも腹と気持ちはずいぶん満たされる。


 クロートはほっと吐息をこぼして、揺れる炎を眺めた。


【シュテルンホルン迷宮】の塔に燃えていた松明と違って、そのへんの小枝や枯草を集めて作った小さな焚き火はなんだか生き生きして見える。


 夜が明けてきて、生命の息吹を感じられるのも理由のひとつかもしれない。


 ほんのりと残った料理の匂いと草花の香りを柔らかい風が流していくと……ガルムは話の続きを始めた。


 ガルムが言うには、モウリスは無法者になにかしらの制裁――どんなものかは考えたくはない――を加えるために迷宮にいたのだろうとのこと。


 でもモウリスは樹海の自然迷宮【アルフレイムの迷宮】で無法者に雇われていたはずだ。


 傭兵なのでは? ……とレリルがガルムに聞いたが、うまく誘い出したんだろうなと言い切られてしまった。


「……悪い人……ではないと思うんですけど……」


 続けたレリルに、胡坐をかいたガルムはぽんと膝を打つ。


「考えても仕方ねぇさ。だからとりあえず、お前らは六級を目指して物語を読め」


 からからと笑うガルムは、モウリスのことをどう思っているのだろう。クロートにはさっぱりわからない。


 そもそも、ガルムはいったいなにをどこまで知っているのか。


 クロートは首を捻りながら、そういえば……と言葉を発した。


「なあ、父さんは何級なの?」


「ん?」


「聞いたことないよなと思って」


「そういやそうか」


 突然の質問にガルムはにやりとすると、人さし指を一本立ててみせる。


 クロートはぽかんと口を開け、瞬きを数回してみせた。


「――えっ?」


「……そっか。クロートは知らないんだね。ガルムさん、『ノーティティア』では数えるほどしかいない凄腕なんだよ。私たち【監視人】も一目置くくらいなんだから」


 レリルがふふっと笑ったので、クロートは口を開けたまま、にやにやしているガルムの表情とその前に翳された指を穴が空くほどに見つめる。


 指は一本。つまり……。 


「嘘だろ、一級ッ!?」


「おうよ」


 ハイアルムが教えてくれた等級は、九から始まって一までだった。


 つまりはその頂点。それがどれほどすごいことなのかクロートにはまだわからなかったが――とにかく、ガルムは一番上なのだ。

 

 その先はまだ知らなくてよいとも、ハイアルムは言っていたが。


 クロートはそこではた、と思い当たって再び首を捻った。


「……あれ? そうすると、六級になれば父さんの物語も読めるってことか?」


「ぶふっ! ……いや、あれは……」


「読めるはずですよね、私も興味あります!」


 水を飲もうとして噴き出したガルムに、レリルが被せてくる。


 ガルムはなにか都合が悪いのか、口をへの字にして唸ったあとでため息をついた。


「俺はなにも知らねぇ」


「そうと決まれば早く『ノーティティア』に帰らないとです。……ね、クロート!」


 結局モウリスのことも『イミティオ』のこともなにひとつわからないままだったが、蜂蜜色の髪を揺らす彼女が見たことないほど満面の笑みを浮かべていたので、クロートもつられて思わず笑ってしまうのだった。


******


 それから数日後。


 クロートたちが無事に『ノーティティア』本部へとたどり着いたときには、すでにセブルス――七の月になっていた。


 セブルスは一年の真ん中の月にあたり、一年の半分という節目のため各地で催し物が開催される。


 迷宮大国ルディア王国の王都でも、世界マナリムとマナに感謝する大きな祭り――『祈祷祭』が行われるため、一年で一番の賑わいになるのだ。


 クロートは生まれて十六年だが、その『祈祷祭』に参加したのは二回だけ。


 今年は参加したいな……と思いながらクロートは『ノーティティア』本部で割り当てられた部屋に荷物を置いた。


 当たり前のようにレリルと一緒の部屋で、これは当たり前だがガルムもいるという不思議な空間だったが気にしても仕方ない。


 ……すでに王都は混み始めていて、『ノーティティア』には祭りのことを調べに来る人たちも多いようだ。


「じゃあ父さん、俺たちハイアルムに報告してくる」


「ああ」


 そんななか、クロートとレリルはすぐにハイアルムへの報告――レリルが早く六級になるのだと言って急かすからだ――へと向かうことになっていた。


 レリルは帰りの数日間で【シュテルンホルン迷宮】での出来事をしっかりと古めかしい本に書き終えたとのこと。


 ――とりあえず、モウリスと父さんの物語を読んで……それから俺の話だな。


 自分がどんなふうに記されているのか気になっていたクロートは、こっそり確認しようと決めて、レリルと一緒にハイアルムのいる部屋へと向かうのだった。



17に投稿できていなかったので!

よろしくお願いしますー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ