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迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


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白薔薇は麗しきかな⑥

「やーっ、はァーッ!」


「は……!?」


 階段から飛び出してきた人影が、楽しそうに声を張り上げる。


 逆手に持った双剣を腰のあたりに構えた走りは、敏捷に自信のあるクロートと同じくらいの速度か。


 驚いたクロートに真っ直ぐ突っ込んできたそいつの前に、ガルムは巨剣をするりと差し出して壁を作った。


「うあっは、危なっ!」


 重心を後ろにしてギュギュッと急停止したその人影――小柄な男であった――は、シャキンッと刃を打ち鳴らす。


 すぐさまガルムへと向き直った男は、ガルムを認識するとぱあっと笑顔になった。


「でっけぇなおっさん! 仕留め甲斐があるってもんだよね!」


「馬鹿言うな。俺は無法者じゃねぇぞ『アルテミ』」


 クロートは聞こえた単語に耳を疑った。


 『アルテミ』って――こいつが?


「んっ、なんだよ……違うのか? じゃあお前は?」


 返したガルムに、彼はきょとんとして構えを解く。


 しかも突然話を振ってきたので、クロートは思いっ切り顔をしかめた。


「一緒にいるのに俺が無法者なわけないだろ……」


「ちぇー、じゃあ無法者はどこにいるんだよー」


 ――なんだこいつ。


 クロートは心のなかで呆れつつ、黙ってそいつを眺めた。


 背はクロートと同じかそれより小さい。


 ふわふわした金髪に、ぱっちりと大きな猫目。その瞳はクロートやガルムと似た翠色をしており、もしかしたら歳もクロートに近いのかもしれない。


 装備らしきものが双剣以外には見当たらず、体にぴったりとした黒い服の上に暗い赤の襟付きシャツを羽織っている。


 そのとき、呆れたような声が響いた。


「先走るなと言ったはずだレザ。……俺らが『アルテミ』だって簡単にバレちまう返事もやめろ馬鹿。――で、あんたらはどこの誰なんだ?」


 あとから来た赤い長髪を束ねた細身の男が、階段の横、つまらなそうな顔でクロートたちを窺っている。


 ぐるりと額を隠すように黒の太いバンダナを巻いていて、どうやら後ろで結んだ髪に一緒に編み込んであるようだ。


 こっちもレザと呼ばれた男と似たような服装だが、腰にぶら下げた剣のほかにもシャツの内側にちゃんと革鎧を装備していた。


 ……階段は外壁沿いに下っているのでクロートから全員は見えないが、彼の後ろにはかなりの人数がいるらしい。ざわりと人が動く気配が感じられる。


 ガルムは巨剣をゆっくりと背負うと臆することなく言葉を紡いだ。


「俺たちは『ノーティティア』だ。異常を察知して先に塔に入っていた。……こりゃ、マナレイドだな。あんたらもレイスと一戦交えてきたんじゃねぇか?」


 赤い長髪の男はそれを聞いて深々とため息をつく。


 クロートたちの前にいるレザは、ガルムと赤い長髪の男を交互に見て眉を寄せ、さらに視線を巡らせてレリルに気が付いた。


 彼はそこで「わっ!」と歓声を上げる。


「すっげ! 女の子がいるー!」


「えっ? えぇっ?」


 レザはぴょんぴょんとレリルに近付くと、彼女の周りをくるくると回り出した。


 ――なんだこいつ。


 クロートは二度目の感想を抱く。


「あんたも『ノーティティア』なの? 冒険者? どうやって戦うの? そのナイフ?」


 矢継ぎ早に重ねられる質問に、レリルがぎょっとした顔をしてかなり引いている。


 彼女は思わずクロートを見たが、とりあえず害はなさそうだと判断したクロートはそっと無視。


 ……酷い扱いである。


「おいレザ。犬みたいなことするな。――確かに大量のレイスは狩ってきたが――だとすると無法者はもうやられちまったか」


 赤い長髪の男が言うので、ガルムは首を縦に振る。


「ああ。確かめたけりゃ上に行け。俺たちはここで『薔薇の女王』の変異種とやり合ったところだ。このままマナレイドが続けば異常な数が『リスポーン』するぞ――まあ『アルテミ』なら心配ねぇと思うが……」


「……忠告、感謝する『ノーティティア』。仕事だからな、一応確かめる必要もある。俺らは上に向かう。……国に報告するのにマナレイドの情報も必要だ、悪いが近々邪魔させてもらおう。――行くぞ」


『うっす』


 赤い長髪の男はひらひらと右手を振ると、瓦礫を避けてすたすたと歩き出す。


 返事とともに階下から十数人が出てきたので、クロートは少しだけ身を引き、道を空けた。


 どいつもこいつも、ギラギラした眼で睨め付けていくのは気に入らないと彼は思ったが――合法のもとで人を狩りに来たのだと思うとゾッとしないでもない。


 しかし、そのなかでレザだけは違った。


 子犬のように目を輝かせ、屈託のない顔でにこにこと笑っている。


「じゃあ俺も『ノーティティア』には付いていくから、そんときにねー、女の子!」


「……」


 レリルはどん引きしたまま動かないし、返事もしなかった。


 ――なんか面倒そうな奴だな、あいつ。


 クロートは相手はレリルに任せようと決める。


 そうして『アルテミ』が上階に消えたとき、彼ははっとしてあたりを見回した。


「あれ……モウリスは?」


 それを聞いたガルムがふんと鼻を鳴らし、肩を竦めてみせた。


「『アルテミ』が来る前に上階に消えたさ。……あいつならヘマはしねぇよ。――帰るぞ」


「……なあ、父さんは……」


「クロート。とりあえずハイアルム様の書状!」


 我に返ったレリルが重ねてきたので、クロートは言葉を切って苦笑する。


「そうだな。……俺たち、仕事で来たんだ」


 ガルムは眉をひそめると、クロートが差し出した書状の封を切った。


 

本日分です!


よろしくお願いします。

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