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迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


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白薔薇は麗しきかな④

 残っている『白薔薇の女王』はあと十二体。


 冷静さを取り戻したクロートは、ようやく魔物たちの姿をしっかりと確認した。


 白い布がゆらめいて、そのドレスのような服の下には蒼白い体がある。


 顔はミイラのようであり、落ち窪んだ目元にはぽっかりと穴。奥には深い深い闇が渦巻いていた。


 クロートだけは魔物たちから漂う甘ったる臭いに咽せそうなほどだが、ほかの三人はわからないのだろう。


「いいか、こいつは変異種。通常なら手のひらから真っ直ぐにマナ術を撃つが、こいつらのは屈折しながら追尾してくる」


 ガルムはそう言いながら、一体が手を上げるのを見ると瞬時に踏み切る。


「逃げても無駄だからな……であれば、元から絶て!」


 その言葉に合わせ、ぶおん、と。重い音を立てながらガルムの巨剣が閃く。


『――!』


 腕から先を斬り飛ばされた『白薔薇の女王』が甲高い声を上げて後退るのを、ガルムが逃すはずはない。


 返す刃で白いドレスを真っ二つにし、マナへ還った『白薔薇の女王』の核がその足下へと落ちる。


 レイスを相手にするのとやることは変わらないとわかり、クロートは剣の感覚を確かめるように指先を動かした。


「――こっち、来ます!」


 そこで次の『白薔薇の女王』――三体同時だ――が、手を上げた。


 レリルが警告の声を発すると、モウリスが前に出る。


「お前の魔装具ならこの程度は問題ない」


「えっ?」


 次々に放たれたマナ術がモウリスへ向けて屈折を繰り返し突き進む。


 わけがわからず聞き返すレリルには応えず、モウリスは右手の刃と黒い革手袋の左腕を胸の前で交差して、ふーっと息を吐き出した。


「体ごと当たれ」


 瞬間。彼の動きを追っていたクロートは目を見開いた。


 バチバチッ!


 モウリスの武器と左腕――どちらも魔装具だと思われる――が、マナ術を弾いたのである。


 確かに、さっきもレリルの盾はマナ術を受けていた。


 ――同じようにマナでできた装備であれば、耐えられるってことか!


 クロートが息を呑むと同時に、ほかの『白薔薇の女王』が再びマナ術を放つ。


 モウリスはその黒い雷を視界に捉えると、右手の武器を振り抜いて……。


 バシュンッ!


 斬られた黒い雷が弾けて霧散する。


 彼はそのまま巨躯にあるまじき速さで一気に『白薔薇の女王』へと肉迫すると、あっという間にマナへと還してしまった。


 一瞬の出来事だったが、クロートは「あんなの反則だろ!」と心のなかで叫ぶ。


 ――魔装具。いつか絶対に手に入れてやる……!


「おいクロート、物欲しそうな顔してんじゃねぇよ! ……お前の剣でも弾くくらいはなんとかなる。どうしても逃げ場がないときは斬れ、いいな!」


 しかしガルムに突っ込まれて、クロートは苦虫を噛み潰したような顔をした。


 しっかり表情に出ていたのだ。


 とはいえ、魔装具じゃなくともリッチのマナ術を弾けるというのは彼にとって朗報である。


 ――残りは十体か。


 クロートはさっと周りを確認した。


「いけるな、クロート?」


「勿論! ……ふっ」


 クロートはガルムの声に短く息を吐き出して床を蹴る。


 正面の一体がクロートに手を向け、いまならやれると思ったクロートはそのまま声を張り上げた。


「弾く!」


「――おいっ! 逃げ場がないときはっつったろう!」


 ガルムが慌てたように言葉にするが、もはやクロートは聞く耳を持たない。


 わざと速度を抑えて、マナ術が放たれる時間を作った。


 黒い雷が『白薔薇の女王』の手にぱりぱりと走ったかと思うと、放たれた矢のごとく迸りクロートへと迫る。


 クロートは僅かも遅れることなく、長剣を左下から右上に振り上げた。


「いっけえぇ! ――っだ、うわあっ!」


 クロートの振り上げた刀身は確かにマナ術を捉えたのだが、その威力は凄まじいものだ。


 マナ術はクロートから逸れ、彼の右頬を掠めるようにして行き過ぎたが、クロートは左側へと大きく体勢を崩してしまった。


「言わんこっちゃねぇ……!」


「う、わ!」


 駆け寄っていたガルムが左手でクロートの首根っこを掴んで引き寄せたところに『白薔薇の女王』の追撃が放たれる。


「見とけ!」


 ガルムは短く指示を出すと、右足でどんと床を踏み締めた。


 クロートはガルムの左後ろへと引っ張られたまま、重心を落とすその姿をしっかりと見据える。


「――こう、やんだ――よっ! おらぁっ!」


 そして。


 右腕一本で振り抜かれる巨剣が唸り声を上げ、黒い雷が『撃ち返された』。


 まさか自身へとマナ術が向かってくるなど『白薔薇の女王』は思いもしなかっただろう。


 頭への直撃を受けて吹っ飛ばされ、瓦礫に叩きつけられて霧散した。


「……すご」


 思わずこぼれたクロートの言葉にガルムが歯を見せて笑う。


「まだまだお前にゃ早かったな?」


「ぐ……そんなことないからな! 衝撃が思ったより強かっただけだし!」


 レリルはふたりの会話を後ろで聞きながら、笑ってしまった。


 ――こんな状況なのに、なんて生き生きした親子なんだろう!


 普段レリルといるクロートはもっとしっかりしていて冷静なのに……まるで歳下のようにも見える。


 レリルは自分の魔装具にちらと視線を落とし、すでに次の一体を屠ったモウリスに言った。


「……私もやってみていいですか!」


「……」


 モウリスは応えなかったが、その大きな背中が『さっさとやれ』と言っている気がして、レリルはクロートを真似て短く息を吐き出すと床を蹴った。




本日は土曜ですが書き上がったので投稿です。

基本は平日更新にて進めております!


よろしくお願いします。

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