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迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


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28/203

無法者はさもありなん⑧

******


 クロートはガルムの居場所に当たりを付けていた。


 おそらくは遺跡の入口――もしくは遺跡を取り囲む壁――と、塔を結ぶ直線の中心付近。


 そして『倒壊している』建物のどこかである。


 クロートたちより数日先に出発したガルムであれば、すでに内部に潜入しているだろう。


 そしてガルムのことだ……安全な場所を作るか見つけるかして、普通なら踏み入れないような倒壊した建物の中に隠れているはず、というのがクロートの考えだった。


 遺跡の入口と塔付近には、邪魔されたくないと考える無法者たちの見張りがいる可能性が高い。


 ……であれば、いっそ遺跡内部に侵入してしまう選択をするのがガルムである。


「まずは入口に見張りがいないか確認しよう。無法者からすれば邪魔されたくないはずだからな……見張りがいてもおかしくない」


 クロートの言葉にレリルはしっかりと頷く。

 

 彼女は真剣に地図に目を向けていたので、クロートが苦笑いを浮かべたのには気付いていなかった。


 いまはわかって頷いていても、彼女が飛び出さないように眼を配る必要があるだろう。


 ――俺は、レリルの命も自分の命も危険に晒すつもりはないからな。


 クロートは胸の奥にその考えをしっかりと刻み込む。


 ガルムも、そうやって自分を導いてきたんだと……クロートは唇を引き結んで気合いを入れた。


「入ったあとは裏路地を進む。このときの戦闘は徹底的に避けよう。音で無法者たちにバレたら最悪だし」


「わかった。……ガルムさんの居場所、クロートの言う通りなら塔を見ながらぐるっと一周するだけの範囲があるよね。しらみつぶしに捜すの?」


 レリルは地図を覗き込みながら、指先で壁と塔の中間を通る円を描く。


 クロートは首を振った。


「たぶん、入口と塔を結ぶ線の近くだと思う。『アルテミ』が来たらすぐわかるように」


「なるほど。クロート、頭いいんだね」


 レリルはうんうんと頷きながら、顔を上げずにそう言う。


 態度はともかく、褒められているようだ。


 クロートはちょっとだけ得意気に唇の端っこを持ち上げた。


「出発は暗くなってから――だよね? 食事して、少し休んでおこうか」


 レリルはクロートが嬉しそうなことには気付かず、地図を畳む。


 暗くなってから……とはひとことも言っていないはずだが、自分もそう思っていたのでクロートに異存はない。


 そのほうが侵入しやすいだろうと、クロートもレリルもちゃんと考えていたのだった。


******


 ところが。


 空が暗くなり始め、星がちらちらと瞬きだした頃。事態は急変する。


 ……ズドオンッ!


「うわっ!」

「なに!?」


 身を隠すように岩の影で体を休めていたふたりは、地面を揺らすほどの轟音に飛び上がった。


 慌てて音のしたほう――遺跡の塔からだ――を見れば、上層あたりからもうもうと黒煙が上がっている。


「薔薇の女王がリスポーンしたのかな……?」


 レリルの呟きに、クロートはごくんと息を呑んだ。


「……どうだろう。あんな派手にやったら、周りの魔物も呼び寄せちゃうだろ? だから――」


「まさか『アルテミ』?」


 レリルがはっとして眉をひそめる。


 クロートは唸った。


「わからない。しまったな……『アルテミ』の情報ももらっておけばよかった。先に到着してるのかも」


「そうだよね……とにかく行こう! なにか起きてるのは間違いないよ!」


 レリルはさっさと荷物を背負い直し、いまにも走り出そうとしている。


 クロートも手早く準備しながら、それでも慎重に言葉を発した。


「レリル。まずは隠密行動! 約束だからな!」


 ガルムは『無法者』と『アルテミ』、双方の動向を調べていたはずだ。


 ――狩りが始まったとしたら、どうするだろう。早く合流しないと。


 焦る気持ちはクロートにもあったが、目の前に広がるのは迷宮だ。


 真っ赤な部屋が脳裏にちらりと過ぎったのを、クロートは首を振ってかき消した。


******


 時折、大きな音が震動となって【シュテルンホルン迷宮】を揺らす。


 見上げた塔の先、炎のような光が散ることもある。


 戦いは、いまなお続いているようだ。


 幸運なことに――というには状況が不明確すぎるが――入口には見張りらしき人影はなかった。


 魔物たちもおそらく塔に向かっていることを思えば、いまは遭遇しないで済むかもしれない。


 さらにうまくいけば、ガルムは塔に入らずに様子を窺っている可能性だってある。


 ……クロートとレリルは、どこかカビ臭い真っ暗な路地を月と星の明かりを頼りに駆けていた。


 暗くなったせいでよく見えなかったが、瓦礫には苔が生え、壁は蔦で覆われて、路地には朽ちた動物の骨が落ちていたりもする。


 なんというか重い――じっとりと纏わり付く空気に満ちた迷宮だ。


 息を殺していればいるほど、誰かにじっと見られているような気がしてくる。


 そのとき、クロートは微かな光を視界の端に捉えた。


 それはクロートたちが駆ける路地から一本向こうの路地へと繋がる細い道。


 突然立ち止まったクロートに、訝しげな顔でレリルが口を開こうとするのを、彼は小声で止めた。


(しっ……)


 レリルはなにかを察してすぐに身構える。


 クロートはそっと細い道を覗き込んだ。


 ぼんやりとした蒼白い光が、ゆらゆらと集まって濃くなっていく。


 やがて形をとった光は音もなく弾けるように霧散し――一体の人型の魔物を生み落とした。

 

 

 ……魔物がリスポーンする、その瞬間だった。



平成がおわりますね……

このままだとレイワ一発目がダークに……なりそう……


皆様いつもありがとうございます!

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