表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/203

無法者はさもありなん⑥

「――そうね。クロートとガルムはそうよね」


【監視人】たちは身寄りがない。レリルは言っていたはずだ。


 クロートは、目の前のエルフもそうなのだと気が付いたが、自分よりも長く生きているはずの彼女がいまどんな気持ちなのか、理解することはできそうにない。


「ごめんなさい。ハイアルム様からの依頼だってことも――当然よね。ならきっと、レリルの言うとおり意味はある。いらぬお節介だったわ」


 クランベルは眉尻を下げたまま、ふふっと笑ってみせる。


 レリルはそのピンク髪のエルフに飛び付くと、ぶんぶんと首を振った。


「ありがとうクランベルさん! 心配してくれたのはわかってます。私たち、無理しないから」


 クランベルはレリル受け止め、彼女の背中――レリルはクロートに背中を向けている――を両手でトントンと優しく叩く。


 その表情は慈愛に満ち、優しかった。


「――ええ。……そうだ! それなら情報がいるわね? 【シュテルンホルン迷宮】の説明は私がしてあげる!」


「本当? ちょうど受付に聞きに行くところだったんです!」


 レリルはクランベルから体を離すと、ぱあっと花が咲いたように笑ってみせる。


 クロートに兄弟はいないが、きっとこのふたりの関係は姉妹に近いのだろうと思う。


 ただひとり蚊帳の外にいるような気持ちになったが――クロートは嬉しそうに話すふたりを邪魔することはしなかった。


 見守る自分の口元に笑みが浮かんでいるのには、気付いていなかったのだけれど。


******

 

【シュテルンホルン迷宮】


 情報を売る組織『ノーティティア』本部が置かれている迷宮大国ルディア王国の王都から、一週間ほどの距離にある人工迷宮だ。


 小さな都市がそのまま迷宮化したもので、なぜ都市が滅び迷宮化するに至ったのか――魔物に蹂躙されたとか伝染病が流行ったとか、諸説飛び交っているようだが――は、謎である。


 大きさでいえば【シュテルンホルン迷宮】はルディア王国王都に比べると遥かに小さい。


 一日歩けば都市の端から端まで歩くことができる程度だ。


 また、その中央には巨大な塔が聳えており、魔物はこの塔を中心にして生まれる。


 クランベルは地図を広げてざっと説明すると、数枚の絵を出した。


 一枚目には……ドレス……のような黒い服を纏った女性……のようななにか。


 クランベルは人差し指でそれをとん、と叩いて教えてくれる。


「塔の最上階には『薔薇の女王』がいるわ。レイスの上位種のリッチよ。ものすごく獰猛で、厄介なことにマナ術を使う。手のひらから真っ直ぐにマナを放つから、手のひらの向きに注意すれば避けることは難しくない」


「マナ術を使うんですか?」


 レリルは驚いて聞き返したが、クランベルは困ったような顔をして、肩を竦めた。


「むしろ魔物はマナの塊だから――マナ術をどう定義するかにもよるけど、難易度が上がれば上がるほど使う固体は多いわね……」


「そうなんだ――クロートは知ってた?」


「え。俺? うーん。父さんと行った迷宮にはたまにいたのかな――つまり口から火を吹くとか、そんなでもいいんだろ?」


「ええ、それってマナ術かなぁ……違う気がするけど……」


 蜂蜜色の髪をひょこんと揺らして肩を落とすレリルに、クロートは思わず苦笑を返す。


『どう定義するか』によって、人の捉え方は変わるのだ。


 ――ならモウリスの『魔物の定義』に、黒い宝箱の『イミティオ』は当てはまらないんだな。


 黒い鎧の大男――モウリスの言葉をクロートは理解できなかったのに……予期せずしてストンと腑に落ちてしまった。


 そんなクロートの濡羽色をした黒髪を、開け放たれた窓から入ってくる柔らかな風が撫でていく。


 それを眺めていたクランベルは、若い【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】がなにを思っているのか、はっきりとはわからなかった。


 ただ――彼女にはひとつだけ思うところがある。


 この少年――青年への階段を登る、まだ経験の浅い子供のような――は『イミティオ』の秘密を知りたがっているのだろう……という確信。


 それは彼が父親と同じ生業である【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】に誇りを持っているからで、この先に進むほど変わっていくはずの己の道に希望が満ちていると信じているからだ。


 ――ガルムは残酷かもしれないわ。


 ――でもきっと、それしか道を知らなかったのよね――私と同じで。


 心のなか彼女が呟いた言葉は、ふたりには悟られていないだろう。


「――で、次の絵だけど」


 クランベルは沈んでいく思考を無理矢理引き上げると、ふたりに向かって次の絵を差し出す。


 身を乗り出して覗き込んだクロートとレリルは、首を傾げた。


「見たことないな」


「なんだろう?」


 なにかの模様だろうか。円のなかに、複雑に線が引かれている。


「これは核を使った罠のひとつよ。無法者は邪魔されないよう、これを駆使することが多いの。魔物の核を粉にして混ぜた塗料を使って複雑な模様が描かれているわ」


「罠……」


 呟いたクロートに、レリルが唸る。


「人工迷宮には罠が多いって聞きました。それも、核を使って作られているんですね?」


「全部じゃないけどね。落とし穴なんかは原始的よ」


 人工迷宮と自然迷宮の違いはそこにもある。


 自然迷宮は自然にできたため、罠の類は少ないのだ。


 そのぶん、人工迷宮では魔物だけでなく罠にも気を配る必要があり、冒険者には自然迷宮しか挑まない人もいるほどである。


 知識を授けることでふたりが少しでも安全に進めることを祈って、クランベルは説明を続けた。


******


本日分です!

次あたりからはシュテルンホルン迷宮に入れるかと。


引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ