表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/203

ゆめゆめ忘れることなかれ⑤

迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】は等級が上がるごとに解禁される情報や迷宮の難易度が変わる。


 そういえばそんなことをハイアルムも言っていたなと思いながら、クロートは派手なピンク頭のクランベルを眺めていた。


 クランベルが言うには、この組織……『ノーティティア』は最初から【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】の隠れ蓑として設立されたらしい。 


【監視人】たちが綴った創造譚は最終的にハイアルムの持つ書庫に収められるそうで、等級があるところまでいくと閲覧可能になるんだとか。


 ――そういうの、父さんは全く教えてくれなかったからなぁ。いや、むしろ階級によって得られる情報だから、口にしなかったとかかもしれないけど。


 クロートがぼんやり考えていると、クランベルはぴっと右の人さし指を立ててみせた。


「七級になったあなたには、なんとほかの迷宮の宝箱設置状況と中身が解禁されるわ!」


「……ほかの迷宮の? え、中身もわかるのか――ですか?」


 意外な情報に、クロートは思わず聞き返す。


「そう。宝箱が設置されると、私たち職員はその情報の販売を始めるの。それが売れると、宝箱はほぼ回収されるとみていいわ――勿論、失敗して命を失う冒険者もいるけどね。……中身についてはあくまで【監視人】の報告内容によるし、【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】の実力と裁量が関係するんだけど」


迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】は、自分の設置した宝箱を開けることは叶わない。


 だから、中身については確約されたものではないようだ。


 それでも、ほかの【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】がどんな迷宮になにを置いたのか――それはクロートにとって気になるところである。


 比較的簡単な迷宮にも、たとえば魔装具のようなすごいものが設置されるのだろうかと、彼は腕を組んで考えた。


「今回、クロートとレリルは『マナレイド』と『レイドボス』に遭遇したわね。で、置いたのは『回復系の道具』って聞いたわ。クロート、それはどうして?」


 クランベルはテーブル越しに身を乗り出すと、クロートに聞いてくる。


 クロートはレリルに宝箱のことを話したので、それがそのまま物語に綴られていたのだろう。


 自分とは形が違うその尖った耳は冷たいのだろうか……それとも温かいのだろうか……とクロートは変なことを考えて――いやいや、と意識を引き戻し、答えた。


「そこを訪れた冒険者たちが『レイドボス』に遭遇したとき、俺の宝箱で乗り切れるといいなって思って」


「いい理由ね。なかなか優しいじゃない! ……じゃあ質問を変えるわね。設置したとき、想像したのはなに?」


 クランベルは身を乗り出したまま両腕で頬杖を突き、面白そうに目を細める。


 宝箱設置のときはその中身を想像して創造するようにと、ガルムは何度もクロートに繰り返して教えていた。


 だから想像したのは『軟膏』や『薬草』だ。


 クロートにとって馴染み深く、使用した回数もそれなりにある回復用の道具である。


 クロートが素直にそう告げると、彼女は歯を見せて笑った。


「あら、そのときに『マナ治療薬』を想像していたら、もっとすっごい回復用の道具が創れたんじゃないかしら? どうしてそれを選んだの?」


 ――いや、どうしてと言われても。


 クロートは困惑して、眉をひそめる。


「マナ治療薬なんて見たことなかったから……」


 彼が呟くように口にすると、クランベルは頬杖から顔を上げ、満足そうに大きく頷いた。


「そういうことなのよ、クロート。【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】は自分の知っているもの、使ったことがあるものしか創れない。だから、あなたはこれから、たくさんのことを学ぶ必要があるのよ。魔装具だって土台になるのは自分が知っている武器よ。……まあ、そもそも魔装具を創り出すには、それなりのマナが必要なんだけど――」


 そこまで聞いて、クロートは苦虫を噛み潰したような顔をした。


迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】になるための試験で訪れたスライム洞窟……そこで初めて設置したボロボロの宝箱の中身に、クロートは「魔装具」を想像したからだ。


 ――じゃああれ、なにが入ってんだろ――。


「クランベルさん。じゃあ、宝箱を設置するときに想像したものが難しすぎて、【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】の経験が足りていない場合はなにができるんですか?」


 クロートの心を読んだんじゃないかと思う質問をしてくれたのはレリルだ。


 彼が驚いてレリルを見ると、彼女はきょとんとした顔で黄みがかった翠色の目をぱちぱちしてみせる。


「ふふ、クロートが魔装具を想像した場合とかね? なにが入ってるのかしらね。少なくとも、開けたときに喜べるものが入っているのは稀じゃない? ――そうそう。私たち【監視人】が魔装具を生み出せる理由は、次の六級に解禁されるわよ」


 クロートはクランベルの返答に、さらに顔をしかめた。


 ――なんでこのふたり、俺の思ってることを言い当てるような台詞を吐くんだよ。恐いんだけど。


 心のなかで文句を言って、クロートは肩を落とすのだった。


最近ちょっとばたばたしていますが更新していきますので、引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ