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無明戦士ボンノウガー  作者: 澄石アラン
第二鐘 飾りじゃないのよ煩悩は
23/209

プロローグ、っていうか今回の煩悩 Anger or XXXXXXX

 ――。

 くそ。

 なんでこんな。


 口の中に溢れた血。

 耳から脳、脳から心を踏みにじる笑い声。

 俺はうつ伏せた身体を持ち上げようとコンクリートの上をもがいていた。


「苦しかろう。もうよいぞ、帰依(きえ)せよ」


 十一面観音じゅういちめんかんのんエーカダシャムカの、十一の顔が放つ、十一の声が廃ビルの闇に響く。

 その黒く大きな仏像は手印を結び次の攻撃に備えてた。


「鳴滝禅。煩悩に囚われ、煩悩に魅入られ、煩悩に惑わされる者よ。死への恐れもまた煩悩。帰依により、優しき救済を授けようぞ」


 身体の痛み。

 ふるえる肩先。

 吹っ飛ばされて割れたガラスの上に着地した、そのせいで全身ずたずただ。


 窓の外にはいつもの華武吹町。

 乱痴気(らんちき)色したネオンの光が割れた窓から入り込む。

 あの大嫌いな喧騒さえ遠く、助けてくれない他人さえここには無い。

 俺は廃墟の暗闇で、守るものも守れず……。


 助けてくれ。

 救ってくれ。

 死ぬのが怖い。

 思っているさ、思っているとも!

 じゃあ何で――それが煩悩なら、どうして煩悩ベルトは応えてくれないんだ!

 何で、変身出来ないんだ!!


「芽吹かぬものを偽り、育たぬものを偽り、心の成長まで偽る。そして己を偽りて恥じ、力にならぬ煩悩に(すが)る。くくく……ははははははははははは……! 無益よのう! 無様よのう!」


 十一の声が嘲り笑った。

 反響はさらに鼓膜に重なる。


 笑うんじゃねえ……。

 笑うんじゃねえ、それ以上……。

 言い返す気力さえ無く、俺はただ血の滲んだ歯を噛み締める。


「それでは、強制救済を実行する」


 十一面観音エーカダシャムカは、真言を唱え始めた。

 その背面の後光が強さを増し、唸りを上げながら回転し始める。

 煩悩ベルトはただきゅるきゅると空回る音を吐き出し続けていた。


 俺は……起死回生の糸口を、混濁した記憶を一切合財ひっくり返して探すことしか出来ないでいる。

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