少女との出会い
「おい!大丈夫か!?」
背中を叩くと、少女は目を薄く開け、こちらを見た。
「良かった!生きてる!体起こせるか?怪我は!?」
そう言うと、少女は声を振り絞って言った。
「…怪我は…してないみたい…。でも、体を…起きあげることが出来ないの…」
「分かった、今俺が運ぶから大丈夫」
少年はライターをポケットに入れ、少女をお姫様抱っこし、洞へと向かった。決して軽いとは思わなかったが、この少女を死なせまいと、少年は必死だった。
洞に着くと、少年は中に入り、少女を洞の隅にゆっくりと下ろした。
「ここで休んでて、俺は火をつけるよ」
少年はライターを取り出すと、枯れ葉に火をつけた。少しずつ枯れ葉を足していき、細い枝も加えていく。
「これで太い枝を足していけば、しばらく火は消えないかな。そうしたら、あとは水を汲んで煮沸すれば良い」
少年は、煮沸に使うものがないことに気づいた。
「そうだ…汲む物と、鍋みたいなやつがないと…」
息が荒い少女に近寄り、少年は言った。
「今、水を作るための道具を探してくる。君はそこで休んでて。出来るだけ早く帰ってくるよ」
すると少女は小さく、分かったと答えた。火はこれ以上強くならないように、他の枝を端に寄せ、煙もあまり出ないように完全に燃え移っていない木までも火を行き渡らせた。煙が少なくなったのを確認し、急いで砂浜へ向かう。
「これだけ流れ着いてれば、何かあるかも」
点々としているトランクケースやリュックを片っ端から開けていく。
「そういえば、俺が乗ってた船にはキャンプが趣味の団体がいたっけ」
大きな茶色のリュックを見つけ、中を漁ると、なんと調理器具や非常食のようなもの、飲みかけの2リットルペットボトル、頑丈な革製の鞘に入れられた刃渡り30cm程のナタが出てきた。
「やった!大当たり!これを背負って、服が入ってるトランクケースを引きずっていこう」
恐らく若い女性が使っていたであろうピンク色のトランクケースと、黒のトランクケースを引きずり、洞へと向かった。全ての荷物を含めて、80キロはある。体に鞭をうち、水が染みた靴で茂みを進んでいく。
洞が目の前まで近づいた時、中にゆっくりと長い生物が入ろうとしていた。大人の二の腕程太い蛇だ。