8話 騒乱の後に少年達は語り合う
今回で第一章は終わります。
「ただいまかえりましたよ。エレシアちゃん良い子にしてた?」
「あの、ソフィア様?もう子供ではないのですが...。」
「まだ12才でしょう?」
「もう12歳です!」
帰って来てそうそうに子供扱いされてしまった。確かに渚涼風の視点から言えば12才は背伸びしたい年頃だなぁと思う。思うが、人間なんだもの、感情面は主観的な物に偏る。つまり12才のものに。精神は肉体に引っ張られるというやつだろうか?周囲の接し方も大きいとは思うが。なのであんまり子供扱いされてしまうと記憶がある分、余計に少し落ち込んでしまう。
「それで、何故そんなにご機嫌だったの?」
「えっ?私は別にご機嫌ではないですわよ?」
「あら、そう?気のせいだったのかしらね?ところで、もう誰もいないのにソフィアおばあちゃんとは呼んでくれないの?」
「もう2年も前のことではありませんか。私だって貴族の対面という物をわきまえて...。」
「あら、私は信用されていないのね...。悲しいわ...。」
「わ~、そうじゃないってば!ソフィアおばあちゃん!」
にっこりと笑ったソフィアおばあちゃんにはめられたと悟った。
中々に策士なのだ。この人。
「うんうん、そっちの方がエレシアちゃんらしいわよ。おばあちゃん、孫と話しているみたいで嬉しいわ。」
「もー。おばあちゃんってば~。家族同士でもこんな話し方しないって~。」
あんな風に笑われたら怒る気持ちも失せてしまう。
「ところであの子は?まだ眠っているの?」
「あっ。」
もう出てきて良いよ~って、言うの忘れてた。
「ごめんね?すっかり忘れてて...」
「別に怒ってないよ。そんなに謝らなくても。」
ただし、そんなに顔を近づけられると怒ります。謝るのはいいけど自重はしてくれと思う。多分こいつ天然だろう。間違いない。
「ar?ersatnh、knknktbgwkrnksr?」
「e?e-t、sn-...。」
「なんて言ってるの?」
俺を間に挟んで除け者にするとか苛めかな?それなら二人して押さえてこずに、逃げさしてしてくれても良いと思う。まぁ、俺を見ながら困っているみたいだから質問とかなら答えても良いんだけど。
「ん?「え?えーと、そのー...。」って言ったんだよ。」
「んー、ごめんね?そうじゃなくって内容を...。」
「冗談だよ。もしかして言葉が通じるのかって聞かれたの。私結構箱入り娘だから、なんでなのか知りたいんじゃないかな?」
自分で箱入り娘って言ってるし...。あんまり聞かないぞ。その言葉。というかこの子小さいからか?距離感近いんだけど。
「ett、seirdektkrhnsn。ソフィアobatn。」
「arar、hutrnhugiiksr?srja、wtshoutnhunikwn。」
なんか話してたと思ったら、ソフィアばあちゃんが出ていった。
「なんていってたのか、教えてくれないかな?」
「いいけど...。なんかさっきより、他人行儀じゃない?やっぱり忘れてたの怒ってる?」
「あー、いや初対面な訳だし態度には気を付けるよ。さっきは独り言みたいなもんだったし。」
「そっか、私とおんなじなら何歳かわかんないしそんな感じでも、おかしくないか。」
「いや、別に見た目どおりの12歳なんだけど。」
「あ、そうなんだ。私と一緒だね。ってそうじゃなくて前世合わせてだよ。」
「あー、やっぱりこれは、転生ってことなのか...。君も?」
「うん、前世では女子高生やってたよ。17歳。」
「そっかじゃあホントに同じなんだね。」
「もしかしたら知り合いだったりしてね。私の前世の友達に凄く似てるし。」
「同年代ならそんな感じなんじゃないかな。ところで、その、色々聞いても良いのかな?」
「まぁ、言葉も文字も知らないみたいだしね...。いいよ。」
「ありがとう。じゃあ」
「ただし!もっと砕けて喋れない?」
「...分かったよ。それじゃ質問タイムでいい?」
「どんとこい!」
自信満々の態度に違わず多くを知ることが出来た。
まず、この国は王国制でありテオリューシアと言うこと。
彼女は貴族で、平民の身分で王宮魔術師にまで上り詰めたソフィアさんに教えを受けていること。
平民に家名はないこと。
珍しくはあるけど、転生して記憶のある人は前例もあること。
マナという自由度の塊のようなエネルギーがあること。
魔力とはマナに働きかけることのできる魂の一部で、魂は精神の塊であり、電気を脳におこし体を動かし記憶を体に貯めていくこと。(この節を唱えたもの曰く事実かは知らないがそう考えると都合が良いらしい。いや、学説なんて全部そうだよ。)
悪魔と契約し、マナによって様々な現象を起こす魔法使いと魔方陣と魔力を使いマナを間接的に使用して魔術を使う魔術師がいること。
魔法はなんでもありだけど魔術は理屈道理の魔方陣を書く学問だと言うこと。(ちなみにこの学問の開拓者は上の学説唱えた人と同じらしい。功績多いな。)
それと、俺の魔力は低く魔術を主体に生計をたてる魔術師は向かないこと。(余計なお世話である。まぁ、言われてなければやってたかもしれないが。)
あと、他に知りたいことがあるなら、ソフィアばあちゃんに頼んで書庫の本を読ませてもらうと良いと言うこと等を教えて貰った。いや、凄いけど多いな。協力的ってレベルじゃない。
「とまぁ、ひとまずこれくらいかな。あと、明日からここの言語を教えてあげる。なんかこうやって前世の記憶とか持ち出して気兼ねなく話せるのって凄く嬉しいから。それに私、同年代の友達も少なくって。できれば同じソフィアおばあちゃんの弟子同士、仲良くしてほしいかなって。」
良い笑顔でそんなことを言われては、鬱陶しく思うこともできない。いや、別にこいつが可愛いからとかではなく、俺も会話をしたのは久しぶりで凄く頼もしかったからだ。正直、もう仲間はずれはいやだ。
「そうだな。通訳してくれりゃあ覚えやすい。お願いするよ。それにこっちも言葉が通じるってのは凄く安心する。これからもよろしくな。」
「そういえば名前聞いてなかったね。私はエレシア・セメリアス。シアで良いよ。よろしくね!」
「俺はアルだ。こっちこそよろしくな、エレシア。」
次回から第二章です。
第二章は少しほのぼのしますが、楽しみにしてくれてると良いなぁ(願望)