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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第一章 新しい世界 新しい人生
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6話 鎮圧と撃退

「これは一体なんですの!?」


 私が叫んだのは、そこにガラス質の広場があったからだ。いや、広場になっていたというべきかな?地面はキラキラと光り、チラチラと炎が揺れている。少し気分を悪くしながら振り向くとソフィアおばあちゃんが顔をしかめていた。


「これは、高温が辺りを襲った後だろうよ。壺なんかを焼くと表面がこうなるだろう?問題は何故この場所はこうなっているかだね。」

「っ!まださっきの魔法を唱えた契約者がいるということですの!?」

「そういうことだね。まぁ、私は間に合わなかった様だが、私の魔術が間に合ったのは朗報かね。」


 突如暗くなった空を見上げると、ポツポツと雨が降り始めた。辺りに揺らめいていた火が消えていく。


「エレシアちゃんはこの辺りにまだ残っていた人が居ないか調べておくれ。もしかしたら治療魔術が間に合うかも知れないよ。」

「わ、わかりましたわ。あの、ソフィア様は?」

「多分忙しくなるからね。」


 ソフィアおばあちゃんが振り向いた先には一人の男の人が立っている。


「...逃げられたかと、思ったら、新しい人が、来たじゃあ、ないか。全く皆で私の邪魔をする。ここは、一体、何があるのかな?人を呼び寄せる、何かが、あるのかな?」

「多分、その何かはあんたじゃないかい?」

「...あぁ、そうか。皆も、炎を、見に来たのか。」

「どうやらあんたが犯人で間違い無いようだね。」


 珍しくソフィアおばあちゃんが怒っている。お喋りが何よりの楽しみなおばあちゃんが人の話を無視するなんてよっぽどだ。泥棒とすら話してたのに。


「うーん、アラストール、今度から、翻訳するなら、私の意識に、直接してくれないか?音が、二重に、なってしまって、聞き取り、づらいんだ。」

「あんた、王国の人じゃないみたいだね。捕まえさせて貰おうか。」


 ソフィアおばあちゃんが、魔方陣を羽の一枚一枚に彫り込んだ扇を広げつつを私の背中を押す。私はあまり男の人を刺激しないようにその場を離れた。だって観るからに危ない人だし。後ろで魔術の発光が起こるのを感じつつ、私は走り出した。






「誰だ!?こんなところで、何をしている!?」

「ケアニス様?ケアニス様、何故こんなところに?」


 声が聞こえて私は焼け残っている、民家だったであろう建物に入る。


「ケアニス様!?酷いケガではありませんか!!すぐに治療を!」

「いや、私より彼を頼む。目を覚まさないんだ。」

「彼?どちらに?いえ、それよりもケアニス様のケガを...。」

「では移動しながら頼みたい。彼は此方に寝かせている。」


 建物のなかでも無事な部屋のベッドに寝ていたのは、


「あっ。マフラー少年ではないですか。」

「マフラー少年?この首に巻いてあるものはマフラーと言うのか。いや、そんなことよりケガを、治せないか?」

「酷い火傷ではありますがもう治りきっているので危険ではないですし、治療はできませんわ。一部新しい火傷や、擦り傷などは治すことは出来ますが。それは緊急では無いですからケアニス様が優先ですね。」


 治療を進める間に聞いた話を纏めるとこうだ。

 1、王都に火が広がったのを王都に来ていた水魔術の扱いに秀でたナイアース家が鎮圧に乗り出す。

 2、鎮圧が遅れていたここにケアニス様自ら乗り出す。

 3、消えない炎を操る契約者に出会う。近づいた兵士は燃やされ、遠距離の攻撃も届く前に燃え尽き、魔法さえ焼き付くしたようだ。燃える水ってちょっと見てみたいかもしれない。

 4、ケアニス様も火をつけられた所でマフラー少年が来る。水纏いで延命していたのでただ一人無事だったらしい。

 5、マフラー少年も炎に包まれたと思ったら、腕の一振りで炎を消すと契約者と互角にタイマンした。

 6、相手の魔法をマフラー少年が弱めつつ、ケアニス様ごと飛び退く。魔力欠乏の様になり、気を失った少年をケアニス様がここまで連れて逃げる

 7、急に雨が降り始めて警戒していると、随分軽い足音がして声をかけると私だった。

 で、今に至るということらしい。


「それではこの周囲にはもう生存者は...。」

「あぁ、いないだろう。残念だが...。所で何故エレシア嬢はこんなところに...」


 その時、マフラー少年が声を上げた。


『炎..る。..てくれよ..か。』

「...?この少年はやはり異国の者なのだろうか。テオリューシア王国の言葉ではないようだが。」

「...そうですわね。火の夢に魘されているのではないでしょうか 。」

「そうだ!火事!あの男を止めなければ!」

「あぁ、多分それなら大丈夫でしょう。きっと今頃...」


 ソフィアおばあちゃんのお仕置きが吹き荒れていると思うから。






 強い風が飛んでくる炎を運ぶ。空中にて、燃え上がった炎は風が消えると共に消え去った。


「やっぱり燃え移らない様だね。いくら魔力を燃やせても空気は魔力がないからね。マナを燃やせるのなら別だが。」

「ふむ。これは、私も、勉強が、必要だな。帰ろう、アラストール。とりあえずは、隠れ家で、良いだろう?」

「帰らせると思ったかい?」


 扇を振るうと鋭い音と共に極端な低圧を持った空気の刃、カマイタチとでも言うべき物が男へ飛ぶ。直後に放たれた火球が炎の壁を作り、それが強い炎で燃え上がる。その火を地面の表面ごと切り離し、空中に散らしたとき男の姿は消えていた。


「行動をきめると早いねぇ。若者だからかねぇ?さて、私も動かなくっちゃあね。」


 炎が消え、雨のやんだ青空を眺めてソフィアはエレシアの足跡を追った。

次回は、「騒乱の後で」

お楽しみに!

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