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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第三章 エレシアの物語
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19話 テオリューシア王家

「お嬢様、いってらっしゃいませ。お帰りの際にはナイアース伯爵家の方へお手紙をお願いいたします。」

「えぇ、分かっているわ。」

「それとケアニス様より便りが届きました。なんでも今回は王都にいる間王城に呼ばれるかもしれないので、町中で数日は待機しておくこと、と。」

「ケアニス様も呼ばれたのでしょうか?それではソフィア様の御屋敷には...。」

「はい、行かない方が良いでしょう。幸い、長期の滞在許可はおりております。あまり焦らぬようにとのことでした。」

「では、道中顔を出すのはどうでしょう?」

「近々、第一王子の即位式典があるので北と南以外の門は閉まりますよ?なので東の森を抜けるより北の街道をいく方が良いと思いますが。」

「あぁ、そういえばそうでしたね。」


 今回の王様は男の子に恵まれず、三人の王女様と一人の王子様がいただけだったはずだ。二番目である王子様は確か今年で25歳だったはず。


「あら?まだ若いお人ではありませんでしたか?」

「王の具合も優れないので早いうちから経験を積み、王の健在なうちに反乱を押さえておける手腕を身に付けるのでしょう。」


 流石カプラーネ。すぐにでも返事が返ってくる。


「では結局ソフィア様の御屋敷にはしばらく寄れないのですね...。」

「お嬢様、それが普通です。王都でしっかりと各領地の様子を知ってきて下さい。」


 王子様といい、私といい、貴族は面倒だなぁ。






「お嬢様、王城より謁見のお達しが。」

「あら?昨日に王都に来たのですが...。随分早いですわね?」

「王子の都合ですので。昨晩休めただけでもよいものでは?」

「それもそうね。では、すぐに参りますと伝えてちょうだい。」

「承りました。」


 カプラーネの言われた通りに準備しておいて正解だったな。さて、多分扇は置いていった方がいいよね。ソフィアおばあちゃんの弟子なのは知られてるんだから、まるで王城で襲われるって警戒してる様な感じだし。即位する王子様の()()をつなぐ意味もあるんだし、信用してませんって言うのはダメだよね。


「ペンダントはしていこうかな。パッと見なら魔道具だってわかんないよね。」


 まぁ、バレても淑女の嗜み(最低限の護身)なら、怒られない怒られない。




 セメリアス家の別邸から、すぐの所に王城はある。セメリアス家は少ない侯爵の中でも一番の規模だからだろう。それに公爵だとお城の正面の南に陣取るからというのもあるだろう。セメリアス家は東の守りだからね。


「エレシア・セメリアス様、中へ。」


 おっと、謁見の間についちゃった。王族の前だし緊張するなぁ。

 そっと足を進めていき、玉座と入り口の中程まで進みお辞儀する。


「良い、顔をあげるのだ。」


 許しが出てから顔を上げて、えっと、そう名乗りを上げる。別に「やーやー、我こそ...」ってやつじゃない。


「セメリアス侯爵領より参りました。エレシア・セメリアスと申します。以後よろしくお願いします。」

「うむ、大義である。」


 わー、ホントに若い。玉座の隣の椅子に座っている王子様だけど十分に凄そう。うん。しばらく反乱とか起きそうにはないかな。心配事が一つ減ったね。そのあと王子自身やこの国の事とか少し話してみてもしっかりした人だと感じられたし。

 でも、私が退室する寸前で爆弾発言をしてきた。


「今宵はよく星が見えるらしい。窓から見下ろして見るといい。」

「...失礼いたしました。」


 あー、ソウデスネ。






「お嬢様、良いのですか?ソフィア様の御屋敷に参らなくても。あんなに楽しみになさっていらしたのに。」

「少々気になることがあるのですよ。それと今日は急な来客があるかもしれません。しっかりとしてくださいな。」


 それだけで年配の使用人の人たちは姿勢を正した。あー、伝わったみたいで何よりです。多分おんなじような事が過去に会ったんだろう。

 原因は単純。朝の王子様の去り際の言葉だ。『今宵はよく星が見えるらしい。窓から見下ろして見るといい。』普通星は見下ろせない。ましてや窓からだなんて。つまり今宵は星が~って言うのはただの時間帯のこと。窓からって言うのはひっそりと、と取れる。バレないように見下ろすって、警戒しろって意味だけど多分違う。それだと星より、毒の花だとか焚き火だとかを使うだろうから。

 つまり、『今宵はよく星が見えるらしい。窓から見下ろして見るといい。』って言うのは、『星が見える時間帯に、ひっそりと下に注目しろ』って意味だ。だから多分二階の目立たない窓から見下ろしたら...。


「やぁ、エレシア嬢。裏口を開けてくれ。」


 にこやかに笑いかける黒い外套を羽織りフードを目深にかぶった―――王子がいた。

 はぁ、前言撤回だ。この王子様、しっかり者というよりは子供だぁ!

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