11話 悪魔の正体
「じゃあ、魔法ってその悪魔ってのに代償を払って魔力を手繰ってもらうのか?詠唱はその合図みたいな。」
「そっ、本来ならね。でも、アル君は何故か悪魔の補助が一切無いみたいだから、魔力を手繰って魔法を使ったり、魔力操作で単純な現象を起こす魔法以前の物を使うのも、全部自力でやんなきゃいけないの。その分反応は早いみたいだけど、まず魔法は使えないかな。」
「あの、アラストールの契約者の火を出したり、燃えなかったり、火を纏うのは魔法以前の物だね。人間でも出来るのさ。悪魔の補助の代わりに魔方陣を使ってね。」
「じゃあ、詠唱して魔法陣が出たのが魔法ってこと?あの、空から落ちてきたやつ。」
「そうだよ。そういえばあの後どうなったんだろうね?あの魔法使い。」
絶賛魔法の授業中だ。朝起きてすぐなんだけど...。俺が魔法を使えない魔法使いな事に疑問を抱いたエレシアが「アル君って魔力を直接操れるし、魔法使いだよね?アル君の悪魔ってどんななの?」と聞いたのが発端だ。勿論だが本当の事は言えない。言ったら、それこそ前世では何か有ったと感ずかれてしまうだろう。何せこの話だと前世の怨霊みたいなの(自分)が悪魔になって転生した魂に追っかけやってるという事になる。それこそそいつの前世を疑う。俺だってそう思う。
「それよりさ、結局のところ悪魔ってなんなの?生き物で合ってるの?」
極力「火狂い」の名前を会話に混ぜたくない俺は多少強引にでも話題を変える。だってこの二人以上に勘が良いので、俺の些細な変化とかで復讐の事がばれそうだ。自己防衛も兼ねた復讐なので辞めるわけにはいかないが、あんまり他人を巻き込みたくない。せいぜい巻き込んだとしても、部下を全員焼かれて自らも小さくない火傷を負った少年位だろう。あれから会ったこともないが。
「そんな事っていってもなんかするかもよ?強そうだったし、なんか頭おかしそうだったし。」
「じゃあ、俺の魔力の件はここにいないどこぞの変人よりどうでも良いの?」
「拗ねた!?」
「拗ねてねぇし。」
「だってどうでも良いなんて言ってないじゃん。」
「俺の正体よか、気になったんでしょうよ?」
「だって、あの魔法使いは危なそうだったから怖いけど、アル君が何であっても私の弟弟子で友達なのはかわりないし。」
「っ!?お前いきなりそういうこと言う!?」
「あらあら、仲良しねぇ。」
「えっ?何々?私、何か変なこといった?」
こいつは正直だし、天然だから時々こうなる。たまにしか会わないし時々にしかやらないから未だに慣れない。もしかして狙ってやってないか?と希に思う。特に前世では火傷から化け物扱いされて、今世では言葉が通じることのなかった俺には、正直かなり嬉しい。効果は抜群とかいうやつだ。
「で?結局のところ悪魔ってのはなんなの!」
「アル君照れてる?なんか早口だよ?」
「エレシアちゃん。その辺にしといたげて。」
「?。分かったよ。ソフィアおばあちゃん。」
「それで悪魔だったね。まぁ、そのまま悪い魔力ってことだよ。だから生き物とは少し違う。」
「魔力なのか?いや、そもそも悪いってどんなの?」
「魔力ってのは自分の魂の一部だってのは知ってるだろう?魂のなかでも自分の感情や意思を最も受ける所が魔力になるのさ。」
「ここからは私が説明する!魔力を使いすぎると魔力欠乏になるけど、あれは魔力が減ったんじゃなくてマナに意思を伝え過ぎて意思の無くなった魔力が増えるからなの。で、休んでるとまた魔力に意思が復活していくの。人も知恵熱だしたら一回寝るでしょ?魔力もおんなじなの。」
「まぁ、その魔力って人の魂からきてるしな。さしずめ人間充電池ってとこかな?じゃあ悪い魔力って?」
「えっ?えーと、ね。」
姉弟子風を吹かせ切ったエレシアの視線を受け、にこやかにばあちゃんに代わる。つい、苦笑が漏れてしまう。あっ、拗ねた。後で3時のおやつ少し分けとこう。
「悪い魔力っていうのは悪意や悪感情の魔力の塊の事だよ。まぁ、意思を持った魔力だね。魂の欠片の集合体さ。」
「ん?つまり実態は無いの?」
「魔法で実態を作ってる悪魔もいたと聞くよ。何しろ自分が魔力なんだ。さぞ簡単にマナに干渉出来るだろうよ。」
「磁石人間が砂鉄集める見たいに?」
「まぁ、そんな感じ...なのかね?」
やっぱり俺の例え話は不評だ。なんでだろう?「空気が空気抵抗で周りの空気を風にする」よりは行けると思ったんだが。
「だから契約者は自分の魂にもう一つ、純粋な魔力の塊を繋げてるようなものなんだよ。アル君は無いみたいだけどねぇ。」
「そもそも俺が魔法使いとは限んないよ?」
俺のは俺自身だろうから、一つに戻ったというところだろう。俺の復讐心がそんな感じに悪魔になるとか少し強すぎだと思う。まぁ、復讐心だけとは限んないわけだけど。恐怖とか苛立ち焼かれなんかも広く言えば悪感情だろう。
「でも、アル君は魔力すいすい使うよね?私を仲間外れにする特訓は上手くいかないみたいだけど。」
「いいえ、上手くいってるよ?あんなに複雑化したものをたいした速度で...。」
「ちょっ、ばあちゃんストップ!内緒っていったじゃん?」
「む~。仲間外れ反対!」
結局「アーツ」の練習はばれ、俺が形を作るだけなら出来ていることもばれた。ただ、ばあちゃんにはそれ以上は分からないしエレシアも形を見た訳ではないから、まだセーフだ。ピルケアルの件は隠し通せたのでよしとしよう。
次回、「アーツという魔術」
お楽しみに!




