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滅炎の復讐者  作者: 古口 宗
第二章 アルの物語
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10話 少女の今

「ねぇ、カプラーネ。男の子の秘密の特訓というとなんでしょうね?」


 そういうとカプラーネは飲んでいたお茶を吹き出してしまった。


「あぁ、申し訳ありません。すぐさま布を...。」

「テーブルの上ですし布はこちらにあります。逃がしませんよ?」


 そうやって笑う私の顔は多分悪い笑顔だと思う。でも、もう20歳なのにこんなに可愛い反応をするカプラーネをからかうなという方が無理だ。普段は冷静で優しいお姉さんなカプラーネが耳まで赤い顔を必死に隠しつつ、私に捕まれた手を放せずにオロオロするのはなんかもうたまらない。抱き締めたい。

 いつの間にか背中を覆うようになっている綺麗な青髪を揺らしカプラーネは私に訪ねる。良いなあ、私まだ肩を超えたとこなのに。


「そ、その。それはお嬢様と親しい殿方なのでしょうか?」

「そうね。多分親しい人ですわよ。」


 律儀に相談にのってくれるカプラーネに続きを話す。


「でしたら、その、あまり気にかけずケアニス様からお話になるのを待つのがよろしいかと...。」

「ケアニス様ではございませんわよ?」

「なっ!?ではその方は何方です?」


 いきなり勢い付くカプラーネに少し驚き、私はのけぞってしまった。淑女にあるまじき行為だがカプラーネはそれ所ではないらしい。


「一体何処の誰の話なの?シア!」

「ちょっと、カーネ。口調口調!二人きりの時も口調直そうって決めたの昨晩でしょ!しかも、カーネが勝手に!」

「それよりその人は誰なの?教えて!シア!」

「えっと、アル君だけど...。」

「えっ?あの、ソフィアさん所の訓練馬鹿の?」

「く、訓練馬鹿...。まぁ、うん。そうだけど。」

「なら、シアを口説く心配は無さそうね。」

「えっ!?く、口説くって...。なんでそんな話に。」

「あれ?シア、今誰の顔を思い出したの?ねぇ、ケから始まる子爵様?ちょっとお姉さんに話して?」

「ちょっとカーネ!近いから近いから!も~、助けて~。」


 攻守逆転、見事なサヨナラ負けになっちゃったし...。






「も、申し訳ございません。お嬢様。その、ついにお嬢様にも恋の季節がと思うと取り乱してしまいまして...。」

「そんなにしょげているカーネを叱れないでしょ。ねぇ、顔上げてよ。カーネってば。」

「はい、お嬢様。」


 素で話した後は大体こうなるのだが今回は私に詰め寄った形だし余計に気まずいのだろう。私の専属メイドさんたちには全部バレてるのに頑張って隠してる健気なカプラーネも可愛いが、いつまでもしょげているのは見たくない。何せ頼りになるお姉さんなのがカプラーネなのだから、しゃんとしていて欲しいのだ。。


「では、こうしましょう。今日はカプラーネはずっとこれをつけて仕事です。領主館内だけなので良いですわよね?」

「あ、あのお嬢様。これは?」

「アル君に作ってもらった作品です。力作です!色と大きさもカプラーネに会わせていますから大丈夫です!」


 そうして私が取り出したのはカプラーネの青髪と同じ綺麗な青の――――猫耳カチューシャだ。


「やはりメイドと言えば猫耳ですわね。」

「あのお嬢様。まず、メイドとは...?それにそれはかなり恥ずかしいのですが...。」

「可愛いので大丈夫です。」

「いえ、その似合う似合わないでは無く...いえ、分かりました。着けます。」


 照れるカプラーネを見て満足しながら私は彼女と共に部屋を出る、その時に振り返り言う。


「あぁ、そうそう。昨晩の提案が嫌だったのでささやかな抵抗として、貴女のお茶に少しアルコールが入っていましたの。なので取り乱したからと言って貴女が気に病む必要はありませんよ?ちなみにそのカチューシャは私以外取れませんわ。」


そのまま歩き出した私の後を遅れてカプラーネが走る。でもね、カーネ。今日は午後にある人を招いて御茶会があるの覚えてる?


「...お嬢様!?それは、っ!」

「カ、カプラーネ?その頭飾りは何なのだ?」

「ケ、ケアニス様!?こ、これは、その!」

「あー、なんだ。可愛いとは、思うぞ?うん。それは間違いないが...。外ではやらない方が良いと思う。半獣人はやはりいい顔はされないだろうし...。それに猫は愛玩動物であって、その耳を着けるのは...。そういう意図ではないのならあまり...ないんだよね?カーネ?」

「ご、誤解です!ケアニス様~。」


 歩き出した私は、後の声を楽しみつつ我が家の書庫にてカプラーネを待つことにした。ちなみにカプラーネの陥落は早く30分位で外してもらいにきた。ケアニス様と一緒に。その後ダブルでお説教を食らったのはいうまでも無いだろう。

 ちなみに後日、多分初めてであろう、からかわれた姿を目撃されたカプラーネに「いつもは頑張って冷静に努めている、実は甘えたがりの女の子である。」との噂が出回り、カプラーネが1日部屋に引きこもってしまい私はケアニス様に更に怒られてしまうのだがそれはまた、別の話。

次回、「悪魔の正体」

お楽しみに!

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